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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第六章

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舞い込んだ情報

 交流会は時間が経過するごとに次第に熱を帯び、誰もが打ち解け邪竜という存在――その思惑を必ず打破するという機運が高まり始めた。カイなんかが色んな人と話をする中でそうした話題を出して、上手い具合に意思を統一したらしかった。


(なんというか、さすがだよな……)


 と、ユキトは内心で思う。人心掌握術――と言えば聞こえは悪いかもしれないが、今の状況で必要なのは何より結束。敵が何をしてくるのかわからない以上、自分達の足場を固めていかなければならない。

 それを踏まえると今回の交流会は大成功――そう確信していると、スイハが話し掛けてきた。


「交流会、やって良かったね」

「そうだな」


 ユキトは賛同しつつ周囲を見回す。カイを始めとする最初に召喚された仲間と、ユキトが再召喚された際に共に戦った仲間達――両者が幾度となく会話を行い、今では談笑している。

 交流会が始まる前、間違いなく双方を隔てる壁のようなものがあったはずだが、今ではもう――


「……ただ」


 と、スイハはカイを見据えながら話す。


「実力的にはどうかな……」

「大きな違いは、記憶だけ抱えているか体に経験が残っているかだな」


 ユキトの言及にスイハは視線を送る。


「それは……?」

「カイ達は一度死んで『魔紅玉』の力によって復活した……が、召喚される前の肉体になっている。記憶によって魔力の操作方法は思いだし使いこなせているけど、体そのものは全盛期とは程遠いわけだ」


 ユキトは語りながらカイやリュウヘイへ視線を送った後、スイハへと戻す。


「それに対してスイハ達は戦闘経験こそ少ないけど、体は異世界で経験を積んできた状態のまま……スイハ達と模擬戦闘をやった後にカイ達と魔物を倒したけど、その動きを見る限り、両者は互角のような気がする」

「互角……かな?」

「まあ戦闘経験とか技術の差でカイ達が一歩上、と感じるかもしれないけど……カイ達としても記憶が戻って魔物と戦う際に歯がゆい気持ちになっているのは事実だ。理想は互いに足りない部分を補いつつ、って感じだけど……まあ、連携については後々やればいい」

「あの人達と一緒に訓練ってことかあ」

「なんだか恐縮している感じだな。まあそれはこれから解決していけばいいか――」


 そうユキトが発言した時だった。会場に一人の男性が姿を現す。組織の職員らしく、彼は会場にいた春伏へと話し掛けた。

 ユキトはその姿に注目すると、春伏の表情が強ばる。何かあったらしい――と直感した時、ユキトはすぐさま春伏の下へ歩き始めた。


「ユキト?」


 スイハが声を掛けたが応じることはないまま春伏の下へ。会場に入ってきた男性が立ち去ると入れ替わる形でユキトは声を掛けた。


「どうしましたか?」

「……このような会の最中、水を差すような形で申し訳ありませんが――」

「別に構いませんよ」


 ――と、次に告げたのはカイだった。気付けば状況を察したか他の仲間達だけでなく職員達も顔を引き締めていた。


「むしろ、この場に揃っている状況……僕達からすれば幸いでしょう」

「……そうですね」

「ただメイには申し訳ないな。この後、まだ何かやるつもりだったんだろ?」

「そこは騒動を解決してからやればいいだけの話じゃない?」


 彼女の言葉にカイは小さく笑い、


「そうだね……春伏さん、それで何が?」

「……魔物が、再び山中に現れたようです。しかも今回は今までと違っても特殊な状況」


 春伏はユキト達を一瞥しながら説明を続ける。


「魔物が同じ方角へ向け動いているようです。魔物の群れというわけではなく、まるで何か指示を受けているかのような……」

「邪竜の仕業か?」


 ユキトの言葉にカイは「だろう」と同意し、


「何か実験なのかそれとも狙いがあるのか……わからないことばかりだけど当然放置するわけにはいかない」

「なら迎撃だな。とはいえ、どう動くか」

「方法はいくらでも考えられるけど、まずは魔物の規模などを調査しないと」


 そう告げた後カイは、仲間達を見回した。


「敵がさらなる魔物を用意している可能性もある。よって、組織に残って待機する人間と迎撃する人間とで分けよう。春伏さん、状況はどこまで把握しているんですか?」

「先ほど会場に入ってきた人が資料を作成しています。それを見て、どう動くかは判断した方がよさそうです」

「わかりました……ユキト、魔物の迎撃については任せていいかい?」

「ああ。カイは待機側か?」

「状況をとりまとめるには、その方が良いかと思ったんだけど」

「それで構わない。問題は俺と一緒に戦う人間を誰にするか……」

「記憶が戻っている仲間や能力的なものを考慮して検証する必要がありそうだね……時間もない。早速始めようか」


 ――ユキト達は会場を出るべく歩き始める。その際、組織の人間を含め全員の顔が変わっていた。

 それは邪竜を許さないという強い意思と、何より新たな脅威に立ち向かおうとする烈気。ユキトはこれなら大丈夫だと確信を抱きながら、会場を出ることとなった。


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