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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第六章

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生き残り

 魔物討伐を終えた後、ユキト達は一度組織へと戻って情報を整理。カイにも報告を行いこの日は全員帰宅することとなった。

 そしてユキトは自室に入るとカイから連絡があった――内容は、イズミが作成する試作品について。


『試作品ができたらしい』

「早いな……それは誰の霊具だ?」

『僕のらしい。さすがに聖剣を模倣するのは無理だったと言っていたけど』

「あれを再現できたらこの世界で神になれるな」


 ユキトの冗談っぽい言葉にカイは笑いつつ、


『他にもメイの霊具を作成しているらしい……試作品についてはできたら順次送ってくれるそうだし、早いうちに訓練できると思う』

「あくまで試作品だから無理はしないように……と、それでカイ。今日出現した魔物についてだが――」

『ユキトから話を聞く限り、そちらの見解通り敵が活動をした余波、ということで正解だと思うよ。この町の周辺には僕らが転移した影響と、何より霊脈が存在していることから、集団を形成するほど生まれたと考えていいだろう』

「今回の群れは全て倒せたし、魔物達は自ら動く気配がなかったため、人に見られることはなかったが……今後はそう都合よくいかないよな」


 イズミの家近くにいた魔物についてもあるため――思った以上にあらゆる場所で魔物を倒せる準備を整える必要性があるとユキトは感じた。


『うん、霊具の試作品もできて、着実に僕らは強くなっている……スイハ達のこともそうだ。訓練の結果から考えると、戦力としては十分すぎるくらいだ』

「でも、魔物が出現する様子から考えても、まだまだ戦力は足りない」

『そうだね。やはりここは、記憶を戻して仲間を増やすしかない。というわけで、早速だけど来週にリュウヘイの記憶を戻すべく動きたい。あ、それともう一人』

「もう一人?」

「メイからの推薦でね。アユミとシオリの二人も戻そうと」

「……メイがいなければ難しいそうだけど」

「うん、その辺りはメイが主導すると」

「彼女の方も、知り合いがいた方が楽できるってことかな」

『だろうね』


 そこからユキトはカイから段取りを聞かされる。あくまで記憶を戻すことができるのはユキトだけなので、上手く立ち回る必要が出てくる。


『今のメイは道を歩いていても魔法を使えば目立たないようにできるし、どういうシチュエーションでもおそらくは大丈夫だ』

「あんまり人目の多いところで記憶を戻すのは避けたいけどな……休日ではなく平日で、いいのか?」

『ああ。複数人の記憶を戻すには下校時とかに狙った方がいいからね』


 それもそうか、とユキトは納得して話は終了した。そして自室で一息ついている間に、


「ディル、何か気付いたこととかあるか?」

『んー、特にないね。今回の魔物については……ただ』

「ただ?」

『敵の作戦で、町には魔物が出現した。霊脈が影響を受けて他の場所に魔物が生まれた……これで終わったと考えていいのかな?』

「調査は継続しているけど、他に変化は……いや、もしあるとしたら、魔物の生き残りがいる可能性もある」

『生き残り?』

「もしそれがどこかにいるとしたら……まあこれは仮定の話だ。現時点でそういった様子はない。警戒はするけど、ひとまず俺達は訓練を続け、どんな状況になっても対応できるように準備をしておこう」


 その言葉にディルは『そうだね』と同意しつつ――ようやく長い一日が終わりを告げたのだった。



 * * *



 繁華街の中に、一匹の猫が歩いている。野良で首輪もないその猫を、町にいる人々は無視して通り過ぎていく。いや、実際いないものとして扱っているかもしれない。

 猫は町の片隅で人通りを観察していたが――やがて路地の奥へと進んでいった。それなりに商業施設のある大通りから離れれば、常連が通うような安い飲食店なども存在する。猫はそういった通りの端を我が物顔で歩んでいく。そして、そんな姿を咎める人間は誰もいない。


 やがて辿り着いたのは、町の一角にある公園。小さなもので公園を囲むようにして存在する木々と、端に小さな神社がある。猫はその神社へと歩み――やがて、社の裏手に到達した。

 その時、猫の瞳が輝いた――それは比喩ではない。文字通り目が光った。もし人間が見ていれば、あまりに異様であり絶句したことだろう。


 猫が一つ鳴き声を上げる。直後、猫は苦しそうに顔を上げて、口を大きく開けた。

 ゴボリ――形容するならそんな音だろうか。水のようなものが漏れて地面へと落ちる。何度も猫は液体を吐き出して――やがて憑き物が落ち方のようにキョトンとした顔を見せる。


 それと同時、猫は真正面に存在しているものに気付く。それを視界に入れた瞬間、全身の毛を逆立てながら全力で逃げた。それは明らかに異様で、猫が見たことのないような存在。

 いや、それは――本来ならば、地球上に存在することはなかったもの。


 猫の吐き出した液体が、ズルズルと地面を這いずる。見た目、単なる液体でしかないそれが動き出すこと自体が異様であり、液体は、神社の裏手にいる存在に触れると、たちまちに飲み込まれた。

 ゴボリ――水音がした。それと共にこの世界の大半が感じることのできない魔力が、わずかに漏れた。


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