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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第六章

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風の力

 ノブトの決断は、短期決戦――槍をかざし、最初の攻防で見せたような鋭い動きにより魔物を追い詰める。

 一方で魔物は、魔物を生み出すこともせず槍で応じるべく構えた。その直後、双方の武器が激突し、金属音が鳴り響く。


(魔物の特性を見極めた以上、ノブトはもう敵が魔物を生み出す隙を与えることはしないだろう)


 ユキトは内心でそう呟くのを裏付けるようにノブトは槍を用いての攻勢に出た。この撃ち合いで決着をつけるという気概が、間違いなくあった。

 だからこそ、彼の槍さばきはこれまでと比べても鋭く、技術を付与した魔物を圧倒するほどのもの――霊具を手にした期間はそれほど長くはなく、今は体に残っている記憶を頼りに槍を扱っているはずだが、その精度は十二分に高かった。


(たぶん、今日までに鍛錬を繰り返していた……)


 スイハも、タカオミも――そしてノブトもまた同様だった。彼の槍が魔物を追い詰める。そして槍を大きく弾いた瞬間、ノブトは刺突を決め、魔物の喉元を見事刺し貫いた。

 それが決定打となって魔物は滅び去る。戦いはノブトが勝利し、彼は小さく息をついた。


「なんとか勝ったな」

「なんとか、というよりはずいぶんと余裕があったように見えるけど」


 ユキトの指摘に対し他ならぬノブトは苦笑した。


「いやいや、まだまだだ……比較対象が霊具を持っていた時、っていうのが大きいとは思うけど」

「魔法を使わずとも、体内で魔力を練り上げるだけでノブトに勝てる人はそういないくらいには強いと思うよ……うん、ノブトも問題ない。次は……チアキか」

「よし」


 声を発しノブトと入れ替わる形でチアキがユキトと対峙する。


「相手はどうするんだ?」

「チアキは少し特殊だからな……というわけで」


 ユキトは色々と考えた後、魔物を生み出す。それは、鷹くらいの大きさを持った魔物であった。


「じゃあこれで」

「……なんというか、あんまり強そうには見えないな」

「もっと大きい方が良かったか? でも、チアキ。そちらの霊具の能力というのは、どんなにでかい相手でも意味はないだろ」

「バレたか」


 ――彼が所持していた霊具は風を操る物だった。前衛で武器を握るタイプではなく、魔法による攻撃を行うタイプであり、巨大な魔物を相手でも接触せずに戦うことができる。


「俺が見たいのは、別の部分だ……さて、始めようか」


 ユキトが一歩後退して剣を振った矢先、鷹の魔物が動き出した。数は全部で四羽。それが訓練場を自由自在に飛び回る。


「なるほど、ね」


 チアキも何をしたいのか理解する――風を操る霊具。その記憶により現在の彼もまた風を用いるが、威力を高める場合は多少工夫が必要だった。

 一匹の鷹がチアキへ迫る。それは突如滑空するように突撃を行い、まるで大きな槍のように鋭くなる。もしくちばしが直撃したら、結界などがなければ体を貫通するかもしれない。


 チアキは魔物の動きを見極め、まずはかわした。身のこなしは風の力を用いているためか軽く、鋭い魔物の動きにも対応できている。

 ただ、チアキの攻撃は魔物に届いてはいない――と、彼は突如手をかざし鷹へと向けた。直後、風が放たれ次に突撃しようとしていた魔物の動きを鈍くする。


 ただ、それでも魔物は突撃を敢行。鋭さは相変わらずであり、容赦なくチアキへ向かっていくが――彼も黙ってはいなかった。

 彼が放つ風が、真正面に防壁のように渦を巻き形成される。風による物理的な結界と言えばいいだろうか。それは魔物の動きを大きく鈍らせるだけでなく、逆に弾き飛ばすくらいの効果を生む。


(一点に集中させれば、魔物の動きを停止させられるか……)


 もし霊具を持っていたら全身にまとわせることも可能だったはず。だが今のチアキにそこまでの能力はない。だから手をかざし、魔力を収束させて魔物の進路を阻む。ただ、もし霊具を得れば解決できる問題ではある。


(魔力の収束具合は十分……魔物の動きを止められることは確定したし、防御に関しては問題ないみたいだが……)


 ユキトが考察する間に魔物がさらなる策に打って出る。一体ずつではなく複数が別々の角度でチアキへ向け突撃を放とうとしていた。

 正面にしか生み出せないチアキは、どう対応するのか――突進が繰り出される。迫る魔物に対し、チアキは即座に決断し風を、解き放った。


 それは誰かを対象としたものではなかった。魔物に放ったわけでもなく、かといって自分自身を守るためでもない。その対象は、地面。風の塊を床にぶつけると、その風が拡散して突風が吹き荒れた。

 途端、チアキの周囲に一時的ではあるが風の防壁が生まれる。それは複数同時に突撃した魔物に対し当たって――僅かな時間ではあったが、動きを大きく鈍らせることに成功した。


 好機、と判断したチアキは即座に立っていた場所から離れる。風の能力によって移動速度も増しており、魔物は突撃を中断せざるを得なかった。

 そしてチアキは次の行動に打って出る。一度距離を置こうとした鷹の魔物に対し、右手をかざした。風が生まれ、それが刃のように変じて魔物へ注がれる――目には見えないが、ユキトは魔力で感知した。彼が放ったのは、十数本もの風の刃。それがまるで弾丸のように魔物へ殺到し、その体をズタズタに切り裂いた。


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