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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第六章

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魔法と槍

 ユキトが生み出した魔法使いの方が先に魔力収束を果たし魔法を撃てる体勢に入っていたが――タカオミの魔力収束は瞬時に終わり、魔法使いが今まさに魔法を放とうとしている段階でも間に合った。


(霊具を持っていた恩恵か……!)


 ユキトは内心でそう断じた。刹那、とうとうタカオミと魔法使いの魔法が発動した。

 発動のタイミングは魔物と同時であり、両者の魔法は双方とも光弾――中間地点で激突した。魔力が渦を巻くほどに発生し、ユキトやスイハ達の体にも打ち付ける――結果、相殺はしたがタカオミの方が威力は上だったか魔法使いの魔物は明らかに怯んでいた。

 それは明確な隙であり、即座にタカオミは次の行動に出た。魔力を一気に高めると、今度は雷撃を放った。それは魔法使いでも対応できない速度であり――魔法使いの体に稲妻が駆け抜け、消滅した。


「……タカオミの勝ちだな」

「感想はある?」


 タカオミが問い掛けるとユキトは一考し、


「ああ、十分なくらいだ……今後、魔物が大量に発生した場合、援護要員は必要だと考えていたけど、タカオミはその役割を担えそうだな」

「既存の魔物相手なら十分、という認識でいいかな?」

「ああ、それで良い」

「なら、今は満足しておくよ」


 タカオミの言葉にユキトは一度首肯し、引き下がった。とはいえ、本人はまだまだ足りないものが多いと考えているようで、その表情は先ほどの戦いを考察し、反省している様子だった。


(スイハもだけど、向上心が高いな……)


 そんな感想をユキトが抱いていると、次にノブトが進み出た。


「今度は俺だ」

「わかった……さて、スイハのように大きな魔物を相手にするというのもいいけど――」


 ユキトは新たな魔物を生み出す。それは、槍を持った騎士風の魔物だ。


「今度は技術を持った魔物ということにしようか」

「ご丁寧に武器も同じか」


 ノブトは呟きながら手に槍を生み出した。


「それじゃあ、早速やるか……俺の相手はそれ一体か?」

「戦ってみればわかるさ」


 ユキトは一歩引き下がると同時に、魔物が動き出す。まずはノブトへ接近し、その槍を振るった。

 ノブトは自らの魔力で生んだ槍をかざし、魔物の槍を受ける。直後、即座に切り返して刺突を見舞うが、魔物はそれを避けた。


 ユキトとしても、それなりに技量のある魔物を生み出した。とはいえ単純な技術勝負という形ではない。

 魔物はノブトから一歩距離を置いた。それと共に槍を振り――その刃先から魔力を発して周囲に振りまいた。


 直後――地面に触れた魔力が一気に形を成して、狼型の魔物が生成される。


「なるほど、魔物を生み出せる能力か!」


 ノブトは相手の手の内を理解しつつも、槍を構え直して仕掛けた。当然魔物は周囲に生み出した狼をけしかけるが――ノブトの答えはシンプルなものだった。

 彼は槍を大きく振り抜く。その刃先には収束させた魔力。霊具を持っている時と比べれば決して多くないが、目の前にいる敵を一蹴するには十分すぎる魔力。


 結果、生み出された魔物はノブトの槍を受け――いとも容易く消滅した。それと共に、ユキトは彼の魔力についておおよそ理解する。


(技術については記憶に残っている。それに加えて、魔力の制御も十分……多少荒々しいけど、出力を控えめにするよりも戦いやすいだろう)


 ノブトは一気に魔物へ間合いを詰める。そして放たれた刺突。けれど、魔物はそれを槍で受け流しながらどうにか後退する。

 そして再び魔物を生み出そうという構えを見せると――ノブトは叫んだ。


「させるか!」


 機先を制するように鋭い刺突が放たれた。それは魔物の胸部を正確に射抜く――はずだったが、寸前で魔物は弾き距離を置いた。


「っと……! ずいぶん耐えるな」


 ノブトは呟きながらさらに追い込むべく足を前に出した。魔物はそれで防戦一方となるが、いざとなれば反撃しようと虎視眈々と狙っているのもまた事実。

 ノブトはここまでの攻防で技量面において目の前の魔物は相当強いと認識したはず。ならば、手を変えるかそれとも勢いに任せて押し込むのか――


「そらっ!」


 ノブトが下した決断は、押しの一手。魔物を生み出せる特性から、距離を開けると不利になるだろうという判断であるのは間違いなさそうだった。


(リスクはある……けど、その辺りも考慮した上で、槍を振るっているな)


 性格上、前のめりになりそうな雰囲気を持っているノブトではあったし、実際目前の魔物に対して果敢に攻めているわけだが――


「はあっ!」


 ノブトの槍がなおも繰り出される。ここでとうとう魔物の槍を押しのけ刃が体に入ったが、一撃では沈まなかった。

 さらなる追撃も、どうにか魔物は防ぎきる――と同時に、さらに後退してノブトから距離を置いた。


 ここに至り、ノブトの方も動きを止めた。少しでも油断すれば魔物を生成されてしまうが、ノブトはそれを考慮した上で止まることを選択した。魔物が配下を生み出す素振りを見せれば即座にその槍が放たれるに違いないし、距離的に敵が次の一手を打つ前に仕留めることができるはずであった。


(とはいえ、一気に踏み込んで対処するのもリスクはあるが……どうする?)


 ノブトは呼吸を整え、魔物を見据える。一時沈黙が生じ、スイハ達もまたノブトの戦いぶりを見据え、無言に徹する。

 魔物の方も動かない。ただノブトの動き方次第でどう応じるのかを変えるようにユキトは指示を出しているため、どちらにせよ先に動くのは彼の方だ。


(このまま一気に仕留めるべく動くか? それとも、時間を掛けるのか?)


 ユキトはノブトがどう決断するのかを眺め――そして一分が経過した時、とうとうノブトは動き出した。


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