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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第五章

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放課後の遭遇

 そこからは敵の計略について注意を払いながら、ユキトは日常を過ごす。カイが何かやっているのをユキトは見ないながらもわかっていたが、口は挟まなかった。

 その間もスイハに加え、タカオミを始めとした仲間達に訓練を施す。一度霊具を持っていた故に、訓練をこなすごとに確実に強くなっていく。メイ達に連絡をとれば、あちらもまた独自に鍛錬しているようだった。


 メイについては忙しい身であるため大丈夫なのかと思うところだったが、電話越しに応じる彼女の声は非常に明るく、ユキトは大丈夫だと納得するしかなかった。

 メイやツカサについても順調らしい――カイ達とスイハ達の決定的な違いは、霊具を持っていた期間。やはり年単位で戦い続けた事実は、体に経験が残って折らず記憶の上だけだとしても、大きな違いがあった。


 というよりむしろ、記憶があるからこその違いと断定できるかもしれない。


「これって、どう説明できるんだろうな?」


 放課後、ユキトは一人で下校しながら検証に入る。


「基本的にスイハ達は体ごと世界に戻ってきた……記憶を残した人限定だけど。それに対しカイ達はあくまで記憶だけで体に経験は残ってない……」

『これはあくまで推測だけど』


 と、ディルが頭の中で声を発する。


「記憶を戻した直後、魔力が活性化されたから、魔力の制御法そのものを知っているからじゃないかな?」

「魔力の……?」

『邪竜との戦いでユキト達は間違いなく強くなった。鍛錬を欠かさなかったし、霊具もそれに応じて強くなった……で、そうした経験の中で魔力の制御については、記憶通りにやれた。実際、ユキト達は魔力の多さから召喚されたわけだし、魔力だけは召喚される前とそんなに変わらないことを考えたら……』

「大きな差が出ているってことか」

『霊具を自在に使いこなそうとする中で、自然と魔力……自分の身の内にある魔力を制御できるようになったってことじゃない?』

「その説明なら納得はいくか……」


 ユキトは応じつつ、周囲を見回した。魔法のない世界――もしそれが壊れてしまったのなら、どうなるのか。


「魔法を編み出すのは時間が掛かるにしても、魔力というものを認識できたなら、あっという間に魔法という概念は広まりそうだな……」

『問題はどうやって魔力を生み出すかだけど』

「そこについてノウハウはまったくないから、魔法の概念が認知されてもしばらくは何もない、と思いたいけど……カイ達の事例を考えるに、そう甘くはないだろうな」

『どうして?』

「カイ達は記憶を由来に魔法を扱える。逆に言えば霊具など道具を用いる必要性がないわけだ。記憶により魔力を自在に操れるという事実は、召喚されたことにより魔法が使えるのではなく、魔法というものを認識できるから使えるという証左だ。つまり、この世界の人々全てに扱える資格がある」

『なるほど……でも誰もがそういう魔法を使えるとしたら、確かに大変だね』

「例えるなら、人々が皆強力な武器を持ったってことだろうからな……魔法が周知されれば当然法律なんかも生まれるし、危険だから管理だってされるだろうけど、露見直後は大混乱に陥るだろうな」


 だからこそ、政府組織は恐れている――もし魔物が人々の目の前に現れ、記録できるような存在になったとしたら、カイの策が有効に働くのを祈るしかなさそうだった。


『でも、敵も動かないねえ』


 ふいにディルは話題を変える。


『でかい魔物が出現してから音沙汰なし。普通に魔物を召喚してもダメってことに気付いたのかな?』

「準備中ってことだろう……俺達は索敵を続けつつ、どんな状況になってもすぐさま動けるようにしておくくらいしか――」


 返答した直後、ユキトは眉をひそめた。視線の先は空であり、立ち止まったためかディルは声を掛ける。


『ユキト? どうしたの?』

「……ディル、気配を感じないか?」


 尋ねられ、当のディルはしばらく間を開けた後、


『これは……うん、魔力が漂ってる』

「敵が動き出したか? カイと連絡をとってみるか」


 電話を掛けると彼はあっさりと出た。そこでユキトは内容を伝えると、


『新たな計略ってところかな……ユキト、魔物が出現していないか確認して欲しい』

「わかった。カイはどうする?」

『僕の方は組織の人と話し合ってから動く。スイハに連絡はできるかい?』

「ああ、大丈夫」

『なら、僕は早急に動くよ』


 通話が切れる。そこでユキトは気配のする方角へと走り始めた。


「ディル、近いのか?」

『微妙だね。少し距離はあるけどユキトの足ならすぐかな』

「幻術を使って駆け抜けるか……」


 ユキトは言葉通り魔法を使い、走り始めた。談笑する学生達をすり抜け、繁華街に出ると呼び込みをしている男性の横を通り過ぎる。

 漂う魔力は決して多くないが、距離があっても気付くということが違和感を覚えさせた。今までの単純に魔法陣を仕込むのとは異なるのは間違いない。


「ディル、どうだ?」

『んー、まだわからないけど……気配が増えているような気が……』

「ということは魔物が生まれているかもしれないと。まずいな」


 ユキトはさらに速度を上げた。するとここで明確に魔力を感じ取る。ディルの言葉通り、明らかに複数の気配がある。


「魔物が増殖したのか? それとも――」


 呟きながらユキトはひたすら駆けていく。その道中でスイハへ簡潔に連絡を進め、やがて気配のある場所へ辿り着いた。


「ここは……公園か」


 噴水があり、雑木林に囲まれている住宅地内に存在する公園だった。風が冷たい季節であるため人気はなく、気配を探っても人間はいない。

 そして肝心の魔力は――


「魔物、だな」


 目前にいたのは、四足の足で公園の道を踏みしめる魔物だった。しかもそれは複数体存在しているようで、公園内の至るところに気配を感じ取った。


「公園から出さないように立ち回らないとまずそうだな」


 剣を生み出しつつユキトは言及する。そこで魔力を発し――魔物はユキトへ向け吠え、狙いを定めた。


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