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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第五章

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相棒からの提案

「ユキトは自制できるし、僕自身問題はないと思うけれど……その力が世界を変えてしまうのは事実だ。よって、慎重に動かなければならない」


 カイはさらに続ける。ユキトは内心賛同しつつ、


「ひとまず、僕らのことは可能な限り知られないようにする」

「それは同意だけど……今回の一件は、それこそ一騒動ありそうだよな」

「否定はしないよ。ただ、向こうとしても表だって動くというのは……リスクが大きいだろう」


 カイはそのように告げ、大々的な行動を否定したが――ユキトは違う見解だった。


「なあ、カイ」

「どうしたんだい?」

「向こうはたぶん、組織の構成員の一人や二人は知られてもいい。最悪俺が遭遇した人間を捨て駒にすればいいし、あるいは魔物でも発生させて混乱させることも可能だ」


 ユキトの言葉に、カイは黙し視線を合わせる。


「反面、俺達は違う……後手に回っている状況で騒動が起きれば、隠し通せなくなるかもしれない。向こうが防衛省管轄の政府組織のことまで把握しているかは不明だが、知らなくても俺達の存在は認識しているはずだ。その状況下で騒動が起きれば――」

「ありえない話ではないけれど、それは僕らに居所が露見する可能性も孕んでいるわけだろ?」

「まあ……な」

「確かにユキトの意見もあり得るけど……これについては、組織の連携して注意深く観察するしかないな」

「騒動が起こらないよう祈る……か」


 とはいえそれはいくらなんでも不可能。ユキトは小さく息をついた。


「難題ばかりだな……ま、いいや。とりあえず今日のところはこれで終わりか?」

「そうだね。イズミに会うことについては……僕から連絡させてもらうよ」

「ああ、わかった。イズミがもし霊具を作れるとなったら、こちらも対策を打てるようになるな」

「そうなると良いけどね……というわけで、今日のところは退散しようか」


 カイの言葉にユキトは頷き――仲間達が待つホールへ足を向けることとなった。






 その日は何事もなく解散し、ユキトは帰宅する。周囲の状況を探ったが異常はなし。念のため魔物や力を持つ人間と遭遇した方角へ意識を向けても、何もなかった。


「さすがに向こうも尻尾は出さないか……」

『ねえねえ』


 ふいにディルの声がユキトの頭の中に響いた。


『ちょっと出ていい?』

「構わないぞ」


 その瞬間、巫女服姿のディルが姿を現す。


「一つ提案があるんだけど」

「どうした?」

「もし今後、魔物とか人間の敵が現れた場合だけど……ユキトが率先して戦うことになるよね?」

「それは間違いないだろうな。そんな事態は避けたいところだけど」

「なら、少しくらい変装とかすべきじゃないかな、と提案するのだけど」

「変装か……魔法で見た目は問題なくできるけど、それじゃ駄目なのか?」

「単なる幻術の誤魔化しだと、相手が魔法を使ってきたら弾かれる可能性もあるよ?」


 一理ある――のだが、相手がいかに強敵であっても、今のユキトが行使する魔法を弾く力があるとは思えない。

 そしてディルがそう主張するのは、正体を露見するのがまずいと考えている――のはあるにしても、本当の理由は別にあるとユキトは悟る。それはすなわち、


「ディル、特撮モノでも見たか?」

「あ、バレた」

「おい」

「だってぇ、せっかく魔法で色々できるんだから、格好くらい変えても良くない? 今までは密かに、誰も見つからず活動してたけど、今回の場合はそうもいかない……ってケースがありそうだよね?」


 ユキトは沈黙し、ディルを見据える。


 ディルとしては戦隊モノのような顔を隠し活動するような存在をイメージしている。ああいう風にある種派手な格好をするのは――と思うところではあるが、姿がバレないようにするという意味では、何かしら格好を変えるのが良いのは確か。


「……主張は納得できる部分もあるけど、大部分はそういうものを作成してみたい、だよな?」

「うん」


 あっさりと肯定したディルにユキトはため息をつく。


「でもでも、やっといて損はないと思うよ」

「……邪竜が相手だとしたら、幻術なんて弾き飛ばす可能性はゼロじゃない。予めコスチュームみたいなものを設定しておくのも、アリと言えばアリだけどさ……ディルは、仲間達が同じようにコスチュームに身を包み、戦うようなイメージを持っているだろ」

「うん」

「あのなあ……」


 ユキトは頭をかきつつ、どう返答しようか迷ったのだが――


「……でもまあ、顔を隠すような装備を持っておくのはありか」

「お、乗っかったね?」

「使うかどうかわからないけど、用意しておいて別に損はないからな……それじゃあどういう装備にする? ディルのイメージカラーである黒を基調とする場合は……」

「なんだか悪役側みたい」

「あのなあ……」

「冗談冗談。とりあえず黒でいいんじゃない? それにユキトなら色くらいは自在に変えられるでしょ」


 ディルの言葉をきっかけに、ユキト達は議論を始めた。とにかく顔がバレないようにする――この世界はスマホを始め記憶媒体を人々が常に持ち歩いている。その中で幻術を行使すれば、素顔を撮影される可能性は――


(ゼロ、だと思うけど……絶対とは言い切れないか)


 この世界には多大な魔力を抱える人間が多数いる。その中で、ユキトの幻術を見破る人間がいてもおかしくはない。


(それに対抗するためには……物理的に見えないようにすればいい)

「ディル、魔力を用いての物質化は……全身を覆えるくらいにできるのか?」

「できるとは思うよ」

「ならまあ、後はデザインをどうするかだな」

「ユキトは何か案がある?」

「いや、何もない。適当にマンガとかから抜き出してもいいけど」

「パクりはやだなあ。オリジナルの衣装がいい」

「なぜそこまでこだわるんだ……?」


 疑問はあったが結局ユキトも話すことはやめなかった。気づけば楽しく話をしている自分がいた。

 別にそれを身にまとい戦うことをワクワクしているわけではないのだが――ユキトは自分の感情に苦笑しつつも、ディルと延々会話を続けることとなった。


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