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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第五章

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仲間との協力

 休日が過ぎ、学校へ登校した際、昼休みにユキトはスイハから相談を受けた。状況は伝えているため、その進捗を聞きたいのだろう――と予想したのだが、彼女から発せられた言葉は、予想を超えるものだった。


「魔法の訓練を手伝って欲しいらしいの」

「タカオミが、か……」


 ユキトは頭をかきながら思案する。場所は学校の中庭。話があるとのことでここを訪れ、周囲に人気はない。


「ノブトとかじゃなくてタカオミが言い出したというのは――」

「霊具を手にした全員……ノブトだけじゃなくて、チアキもカノも、ユキトのことを手伝う気でいる……それはもちろん、私を含め」


 胸に手を当てて主張をするスイハ。そこでユキトは小さく頷き、


「わかった……けど、俺がやっていることについてはディルを介して作業をしているから、正直なところあまり出番がない。何か手伝うことがあるとすればカイの方だけど……まず、話を通してからだな」

「受け入れてもらえるかな?」

「カイなら大丈夫だと思う……むしろ、彼のことだからスイハ達が協力すると表明するのは想定内かもしれないな」


 どこまでも思索を巡らせている彼のことだ――どこか確信に近い考えを抱きながら、ユキトはさらに告げる。


「それならカイに伝えておく……で、魔法の訓練だけど」

「うん」

「俺は正直、魔法について知識はあるけど指導できるかはわからないぞ」

「そっか……でも、魔力の制御とかについて助言はもらえない?」

「そのくらいなら……で、場所はどこで?」

「問題はそこなんだよね。タカオミは市民体育館でも借りようか、なんて提案をしたんだけど」

「そもそもそんな金、あるのか?」

「一度くらいなら、まあ……とタカオミは言っていたけど」

「体育館か。訓練ということでそういう場所を提示したのかもしれないが……バレると騒動になるからな」


 ユキトもその点については失念していた。スイハが悩むとおり、場所というのは非常に問題だった。


「うん、そこについても検討しなくちゃいけないが……すぐにでもやりたいんだろ?」

「そうだね」

「なら……市街地を離れれば結界とかで見つからないようにできるけど、問題はそこに至るまでに誰かに見つかるとまずいか」

「どうしよう?」

「なら、そうだな……カラオケボックスとかでいいか。監視カメラがあるけど、幻術とかで誤魔化せるだろうし、そんなに変な動きをするわけじゃないからな」

「え、そんな場所でいいの?」

「別に動き回る必要性はないからさ……」


 ということで、段取りをいくつか決めてスイハがタカオミ達に伝える形にする。クラスメイトであるため別にユキト本人から伝えてもいいのだが、


「私がまとめ役をするから」

「まあ、それならそれでいいけど……」


 話し合いが終わり、スイハは立ち去る。そこでユキトは小さく息をついた。


「全員が全員、思うように動いている感じだな」


 もしカイやスイハ――異世界へ赴き記憶を残す人物が一堂に会したなら、それはきっと多大な戦力になるはずだった。


「今更俺が止めるという話でもないし……で、俺の役割は――」


 空を見上げる。まだ雲をつかむような状況ではあったが、仲間達と連携すれば大丈夫という安心感はあった。


「とりあえず、探すしかないな」

『魔物を生み出した人を?』


 ディルの声が聞こえた。ユキトは首肯し、


「正直、見つかる可能性は薄いと思うけど……」

『魔力を活性化させている人を見つけ出せばいいんだから、近くにいれば気づきそうなものだけど』

「容易に見つかるならそれはそれでいいさ……魔法の訓練は明日か明後日くらいになるだろうし、今日のところは調査に費やすかな」

『そっか』

「……調査、といってもあくまで家の中で色々やるだけだ。ディルとしてはつまらないか?」

『そもそも一度この世界へ戻ってきてから、家と学校の往復ばっかりだったじゃん。今更じゃない?』

「あー、確かにそうだな……」


 頭をかきながらユキトは建物の中へと入る。その時予鈴が鳴り、ユキトは足早に教室へと向かった。



 * * *



 ――ユキトが相談を受けた日の夕刻、とある町中に一人の男性が歩いていた。周囲に溶け込むようなコート姿で、別に誰かが気に留めるようなこともなく、日が沈みそうな町中をゆっくりと歩く。

 やがてその人物は、ある建物の前で立ち止まる。それは高級ホテルだった。


「ここか……」


 建物の中に入り、受付を済ませる。そして指定された部屋へ赴く。

 中はずいぶんと広く、男性にとっては見たこともないような場所だった。


「よう」


 そうした部屋の中、ソファに座る人物が声を掛けてきた。金髪のまるでホストみたいな風貌の人物で、年齢は二十歳を越えたくらいだろうか。

 一方の男性は黒縁の眼鏡に黒髪でその印象は地味の一言。学生ではなくサラリーマンといった風体で、とても両者に共通点があるようには見えない。


「そっちの近況はどうだ?」

「悪くはないですよ」


 丁寧な言葉ながら、どこか相手のことを警戒するような声音だった。


「そういうヒロはどうなんですか?」


 ヒロ――金髪の男性はニヤリとする。ちなみにこの名前は本名ではない。ハンドルネームのように、この部屋だけで通る名前だった。


「俺か? とりあえず、一騒動あったから警戒して最近は引きこもっているな」

「あれですか、生み出した魔物を倒したという――」

「ああ、その辺りの情報を共有するってことで、ここにいるわけだが……オズは何か聞いているか?」


 オズ――眼鏡の男性は、首を左右に振った。


「何も。むしろ詳細を聞きたくて今日は来ました」

「ああそうかい……しっかし、こんな高級ホテルのスイートルームを借り受けるとは、俺達のリーダーはどういう人物なのかねえ」

「深く詮索しない方が良いのでは?」


 オズは答えながら、自分自身興味があることを自覚する。


(謎ばかりではあるが……今回の騒動で、何かわかるのか?)


「他の人は?」

「もうすぐ来るだろ」


 ヒロの言葉の直後だった。入り口の扉が開き、新たな人物が部屋へと来訪した。


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