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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第四章

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再侵入

 やがて、雪斗達は迷宮の入口へと到着する。既にリュシールが手続きを行っており、彼女の一声で迷宮への道が開く手はずだった。

 ユキトは一度仲間達を見やる。間近にある迷宮に対し、少なからず緊張しているのが窺える。


「……真っ直ぐ、下へと進むのか?」


 確認するように信人が問い掛ける。ユキトはそれに頷き、


「もっとも、それはきちんと状況を確認してからだ。何が起こっているかわからないため、結界を行使して安全を確保した場所でも、入念に調査する」

「一日二日では終わらないと考えておいて」


 そうリュシールは口を開く。


「むしろ、長期間必要になる……と、思うわ。それに、急ぐ必要性も薄い……迷宮の主が何かしらしでかす可能性もあるけど、邪竜も消え去り障害もほとんどないからね。ゆっくりやりましょう」

「そうですね」


 翠芭が同意の言葉を述べる。他の仲間も各々頷いた時、


「では、入るとしましょうか――お願いするわ」


 リュシールの言葉により、迷宮への入口が開く。雪斗はクラスメイト達の表情を確認。全員が緊張はしながらも覚悟を決めていたのがわかり、ゆっくりと歩き始める。


「探索は……どのくらい行う?」

「まずは上層部分……結界が構築されている場所に問題がないかを確認するところから始めましょう。先ほど迷宮を管理する人から聞いたのだけれど、昨日から今日に掛けて迷宮内から魔力が発せられたそうなの」

「魔力を?」

「現在を迷宮を支配する存在……それが何かしら行動を起こした、と。ただ攻撃的なものではなく、私達にどれほど影響を与えるのかは不明ね」

「こちらの動きを察知して、何か仕掛けた可能性もあるのか?」

「そうね。邪竜の気配は迷宮の中にいても判別はつくでしょう。消滅したのを判断してから、何かしら策を講じた……私達が来ることを予見しての行動でしょうね」


 ――邪竜は迷宮の外に出ることができたわけだが、それよりも前の迷宮の主――つまり、外に出ることのできない存在であっても、外の気配を察知することはできた。これは様々な事象により証明されている。魔紅玉が設置され迷宮が復活した直後、待ち構えていたように敵を配置していた迷宮の主もいたので間違いない。


 迷宮を司る存在であれば、外部の状況を探ることなど容易、ということ――こちらの動向が予測できていれば、相応の敵がお出迎えしてもおかしくはない。

 雪斗達は迷宮へと入り込む。冷たい空気が雪斗達の肌を撫でた後、ゆっくりと入口が閉まった。


「……魔物は、いないわね」


 リュシールは言いながら調査準備を始める。イーフィスもそれを手伝う形で、さらに貴臣が参加する。

 その中で雪斗は先へ続く道をじっと見据えた。ひとまず気配はない。


「何か違いはあるの?」


 翠芭が尋ねてくる。アレイスとの決戦と違いはあるのか、という疑問のようだが、


「いや、少なくともこの入口付近に変化はないな。敵の気配もない」

「構築した結界についても、ひとまず影響はないみたい」


 と、リュシールが語り始めた。


「少なくともこの第一層で目立った変化はないみたいね」

「下層は違うのか?」

「慌てないで、ユキト。慎重に調査をすると言ったのはそっちでしょう?」

「……そうだな」

「とりあえず、終わるまでは暇ってことか?」


 その問い掛けは信人から成されたもの。そこで雪斗は、


「だからといって油断だけはしないでくれよ。常に警戒は怠らないように……霊具に宿っていた記憶で、その辺りは理解できているだろ?」

「ああ、確かに……しかし改めて思うんだが、不思議な気分だ。ここへ来たのは初めてなのに、頭の中では幾度も訪れたような感覚がある」

「鮮明に思い出しているのか?」


 雪斗の疑問に対し、信人は肩をすくめた。


「いや、あくまで感覚的なもの……技術とか、そういうのを教えてはくれたけど、迷宮攻略の詳細については教授してもらえなかったな」

「悲惨な記憶も多いからな……ひょっとすると、その辺りのことについては記憶を継承しないように調整したのかもしれないな」

「――この迷宮が恐ろしいものであることを認識させるなら」


 と、今度は千彰は口を開いた。


「むしろ情報を授けた方がよさそうにも思えるけど」

「確かにそうだが、だからといってトラウマになりそうな記憶をそのまま継承したら、霊具の使用者が怖じ気づいてしまう可能性はあるだろ?」

「そこまで、恐ろしい場所だと……まあなんとなくわかっていたけど」

「この第一層については、迷宮は牙をむいていない。だからまあ、迷宮がどれほど恐ろしいかを認識するには足らないと思うが」


 雪斗はそう前置きをしながら、仲間達へ続ける。


「ここが過酷な場所であるのは間違いない……現在の迷宮の主がどれほど好戦的なのかで、その厄介さも変わってしまうが……その辺りは判然としない面もある。だから、絶対に油断はしないでくれ」

「そこは大丈夫だけど……」

「ならいいさ……ふむ、慎重に慎重を重ねるのであれば、今日は下手すると調査だけで終了し攻略は明日以降、でもよさそうだが」

「ひとまず結界がきちんと維持されているかだけは確認したいわね」


 そう述べたのは、ナディだった。


「安全圏を確保しているかどうか……それがわかれば、迷宮攻略の速度は大幅に上がる」

「そうだな。逆を言えば、迷宮の主が結界を壊せるのであれば……相当まずいことになるな」

「邪竜ですらそれは実行できなかった。邪竜自身が懸念していた相手とはいえ、さすがにその法則だけは残っていると思いたいけれど――」

「ひとまず、結界については問題無さそうよ」


 作業をするリュシールが雪斗へ話し掛けてきた。


「この場所から魔力を探ると……どうやら前回潜った際の結界が維持されている。破壊されない限りこの迷宮では半永久的に発動できるから……壊すことができなかったと考える方が自然ね」

「迷宮の主が壊せるのか確かめたのかどうかは疑問だが……ひとまず、この第一層から戦いが始まることにはならなそうだな。他にわかったことはあるか?」

「そこは現在調査中よ。いくつか情報を得ることはできたけど……もう少し待ってもらえる?」

「ああ、いくらでも待つよ。他の面々も待機で頼む」


 雪斗は指示の後、腕を組み壁にもたれかかり――作業が終わるのを待つこととなった。


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