田中家弔電異変記録(平成23年4月11日)
【極秘】秘匿葬送記録:肆拾参ノ巻
報告書番号: 平成23-04-11-001
作成日時: 平成23年4月12日 午前3時45分
報告者: 佐賀県佐賀市 延命院 住職 塩沼 鎮雄(花押)
事案名: 田中家弔電異変記録
一、事案発生日時・場所
日時: 平成23年4月10日 午後7時00分頃(通夜開式中)より、翌11日 午後1時00分頃(火葬完了後)まで断続的に発生。
場所: 佐賀県佐賀市 佐賀市民葬斎場 華の間。
二、故人情報
氏名: 田中 茂
享年: 68歳
死因: 自殺(数年前から精神的に不安定な状態が続いており、自宅で縊死しているのが発見された)。
特記事項: 生前は寡黙な性格で、自分の内面をほとんど語らなかった。特に、過去の出来事については固く口を閉ざしており、家族も知らない秘密を抱えていたと推測される。彼の死は、家族にとっても突然のことであった。
三、事案の概要(時系列順)
平成23年4月9日 午後4時00分頃: 田中茂氏の訃報と葬儀の依頼を受ける。故人が自殺であったため、遺族の悲しみと共に、深い戸惑いと後悔の念が感じられた。斎場は重苦しい空気に包まれていた。
平成23年4月10日 午後7時00分頃(通夜開式): 佐賀市民葬斎場華の間にて、田中茂氏の通夜が始まる。読経中、故人の遺影の前に供えられた弔電の束から、微かな「紙の擦れる音」が聞こえるように感じた。それは、まるで誰かが弔電を一枚一枚確認しているかのようでもあった。参列者は互いに顔を見合わせ、不安げにざわめき始めた。私は読経を続けながらも、その音の出どころを探った。
平成23年4月10日 午後8時30分頃: 通夜振る舞いの最中、故人の長男である田中啓介氏(40代男性)が、弔電の内容を確認していた、その時だった。彼は、見慣れない差出人からの弔電を発見した。差出人の欄には「旧友・黒木」とだけ記されていたが、啓介氏や他の家族の記憶には、そのような名前の旧友は存在しないという。その弔電には、故人しか知り得ないはずの秘密めいた言葉が記されていた。
「あの約束、忘れてはいないか。闇は深まり、時は来た。」
啓介氏はそのメッセージに困惑し、私に相談してきた。私はその言葉の不穏さに、背筋が凍った。故人の自殺と何か関係があるのではないかと直感した。
平成23年4月11日 午前0時00分頃: 私は故人の傍らで夜伽を行う。静寂なはずの式場に、再び弔電の束から微かな「紙の擦れる音」が聞こえ始めた。時には、故人が何かを囁いているかのような、しかし聞き取れない「低い声」が響いた。私は恐怖を感じながらも、必死で読経を続けた。それは故人が、死してなお、伝えたい何かがあるかのようでもあった。
平成23年4月11日 午前8時00分頃(告別式開始): 告別式が始まる。読経中、斎場全体の空気が重くなり、参列者たちが何かに「見られている」ような視線を感じると訴えた。私もその視線を感じ、全身が粟立つのを感じた。
平成23年4月11日 午前9時30分頃: 告別式の最中、故人の遺影の前に飾られていた件の弔電が、突然、宙に舞い上がった。それはまるで、見えない何かが弔電を掴み、参列者たちの目の前でその内容を示しているかのようだった。弔電は数秒間空中に留まり、その間に記されていたメッセージが、はっきりと参列者たちの目に飛び込んだ。
「遅すぎたな。次はお前の番だ。」
そのメッセージは、まるで未来を予言するような不穏な言葉であり、参列者たちの間に悲鳴が上がり、斎場は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。弔電はその後、音もなく祭壇の上に落ち、メッセージが記された面に微かな焦げ跡が残されていた。私はその焦げ跡が、まるで指の痕のように見えたことに戦慄した。
平成23年4月11日 午前10時30分頃(出棺): 混乱の中、棺を霊柩車へ運ぶ際、運搬担当者数名が、棺が異常に重く感じられたと証言。特に故人の胸元から、微かな「紙の燃える匂い」のようなものが漂ってくると感じたという。彼らが棺に触れようと手を伸ばした瞬間、指先がひどく熱く、まるで熱い灰に触れたような感触がしたという。
平成23年4月11日 午後1時00分頃(火葬完了後): 火葬を終え、遺骨を拾い上げた。故人の遺骨は、なぜか胸骨にあたる部分が異常に黒ずんでおり、他の部分よりも著しく脆かった。私はそれをそっと拾い上げ、納骨を済ませた。その後、私は体調を崩し、原因不明の胸の痛みと、常に誰かに見られているような視線に悩まされるようになった。特に、紙や文字を見ると、原因不明の不安と吐き気に襲われるようになった。佐賀市民葬斎場では、この一件以来、弔電の管理方法が厳重になったものの、類似の現象が散発的に報告されているという。
四、特異な点と考察
故人である田中茂氏の「自殺という突然の死」と「内に秘めた秘密」、そして弔電に現れた「知らない差出人からの不穏なメッセージ」が、今回の怪異に深く関与している。特に、故人が誰にも明かさなかった「秘密」が、弔電という形で現世に顕現し、さらには「未来を予言する」かのようなメッセージを伴った点が、この事案の最も特異な点である。
これは、故人が死を受け入れられず、あるいは彼を死に追いやった「何か」が、未だこの世に影響を及ぼしていると推測される。
通夜での「紙の擦れる音」、夜伽での「低い囁き声」、そして告別式での「弔電の浮遊とメッセージの変化」は、故人の魂が、まだこの世に留まり、自身の未練や、あるいは自身にまつわる「闇」を伝えようとしていることを強く示唆している。
特に、弔電のメッセージが「遅すぎたな。次はお前の番だ。」と変化し、焦げ跡が残されていたことは、故人が誰かから「追われている」ような状況にあったこと、そしてその「闇」が、弔電を読んだ生者にも及ぶことを示唆している。
私の体調不良、特に「胸の痛み」や「視線」、「紙や文字への恐怖」といった症状は、故人の怨念、あるいは故人を死に追いやった「闇」が、私自身の肉体、特に心臓部と精神にまで「侵食」していることを強く示唆している。
まるで故人が、自身の最期の苦しみや恐怖を、私を通して再現しようとしているかのようである。
火葬後の「黒ずんで脆い胸骨」は、故人が最期に強く胸を締め付けられたか、あるいは苦しみを抱えながら死を迎えたことの物理的な痕跡である。
これは、故人の個人的な死に留まらず、人間が抱える「秘密」や「罪」、そして「死の真相」が、死後もなお続くという、普遍的な恐怖を喚起する事例である。
五、対処・対策
私は故人の魂の安寧を願って読経を続けたが、彼の抱える「闇」はすでに私の理解と力を超えた存在となっていた。
事案後、私は一命を取り留めたものの、体調は常に優れず、胸の痛みと、常に誰かに見られているような視線に悩まされるようになった。
特に、紙や文字を見ると、原因不明の不安と吐き気に襲われるようになった。
佐賀市民葬斎場では、この一件以来、弔電の管理方法が厳重になったものの、類似の現象が散発的に報告されているという。
この事案を重く見た宗派は、故人が不審な死を遂げた場合、特に自殺など、内に秘めた「闇」があると推察される葬儀に際しては、最大限の警戒と、より専門的な浄化の儀式、そして故人の抱える因縁を断ち切るための特別な供養を推奨する通達を出した。
六、付記
本件は、「口数の少ない故人が抱え込んだ『秘密』が、死後、弔電という形で現世に顕現し、さらには未来を予言するような不穏なメッセージと共に、生者に深い恐怖を刻み込んだ」という、極めて恐ろしい事例である。
極秘記録中の最重要記録として、今後のあらゆる事例の参考に供する。
田中茂氏の抱える「闇」は、彼個人の死に留まらず、人間が抱え込む秘密が、死を越えてもなお、生きる者たちに影響を及ぼし続けることを示している。




