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秘匿葬送記録  作者: 月影 朔


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終章:観測者へ

 この「秘匿葬送記録」を、あなたはどう読むだろうか。


 これは単なる創作か。

それとも、あなたがまだ知らないだけで、この世界のどこかに今も人知れず絶望と戦い続けている者たちが遺した、悲痛な報告書か。


 確かめる術は、ない。


 少し、窓の外を見てみてほしい。


 今いる場所の空模様はどうだろうか。

昨夜、雨は降らなかっただろうか。

近くを流れる川の水は濁ってはいないか。

もし海が近いなら、波の音はいつもと同じように聞こえるだろうか。




 次に、家の中に耳を澄ませてほしい。


キッチンや洗面所の蛇口は固く締まっているか。

壁の向こう側、排水溝の奥深くから、何かいつもと違う音が聞こえたりはしないか。



 雨、川、海、そしてあなたの足元を流れる水道管。

それら全てが、あの高野山から溢れ出した呪いの「水脈」と、どこかで繋がっているのだとしたら。



 『雨濡』は、もはや古い巻物の中にだけ存在する過去の怪異ではない。


 高野山の書庫から解き放たれたそれは、かつてのように自然の「水脈」を伝うだけではないのだ。

平成、令和の記録が示したように、それは我々が作り上げた新たな「水路」をも、その通り道とする。


 電話線、光ファイバーのケーブル、そしてあなたが今この文章を読んでいる、その画面。


 それら全てが、あの水底へと繋がる新しい「窓」なのだ。


 次にあなたが雨の日の電話の向こうに、あるいは動画サイトのノイズの奥に、あの「ざあ……」という深く湿った音を聞いた時。



 それが、本当にただの雑音であると、言い切れるだろうか。

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