第五十六話 冒険者ランクとスキルホルダー
「ええ、ミレースさん。そもそも冒険者のランクってどんな風に分かれているんですか?」
やっぱりまずは基本からだよな。
ミレースは俺の言葉に耳をピコンと立たせて答える。
「そうですね、そこから説明しますね。まず冒険者の階級は6つに分かれています。AランクからBランクとCランクと言った具合にFランクまで分かれています」
「それを決めるのが、さっき聞いた冒険者ギルドのランク決め試験ってやつですね」
俺の言葉にミレースは頷いた。
「ええ、入会の時にテストでそのランクを決めるんです。冒険者ギルドには色んな依頼が来ますから、ランクにあったものを請け負って貰わないと危険なんです。勿論、入会後に実力がついてランクが上がる人もいます」
そりゃあそうだな。
依頼した側も解決する実力がない冒険者に来られてもこまるだろう。
「へえ、じゃあやっぱり上になるほど優れた冒険者ってことですか?」
俺がそう尋ねると、ミレースは少し頬に手を当てると首を横に振る。
「はい、でもそれだけじゃありません。冒険者ランクは単純な強さを基準にしたものなんです。強い冒険者だけでは、いいパーティを組めませんから」
「どういうことですかそれは?」
俺の問いにミレースは頷くと言った。
「さっき私が説明した冒険者ランクというのは戦闘能力を基準に決められます。優れた剣士や魔法使いであればランクは高くなります」
「ですよね。つまり、それが優れた冒険者っていうことじゃないんですか?」
ミレースは首を横に振った。
「試合のように人間同士で戦うような場合ならそれでいいとおもうんですけど。冒険者が請け負う仕事は強さだけでは解決出来ないものも多いですから。もう一つ大事な要素があるんです」
「フユ~」
フユが退屈したのか、ミレースの頭の上に登ってうさ耳を触っている。
俺はそれをスルーしながら尋ねた。
「もう一つの大切な要素っていうのは何なんですか、ミレースさん?」
気になるところだ。
うさ耳少女は耳をピコピコさせてフユを遊ばせながら俺に答えた。
「スキルホルダーと呼ばれる冒険者の存在です。彼らは仮に戦闘力が低くて冒険者ランクが高くなくても、パーティには重宝されるんです」
「スキルホルダー?」
俺の疑問にミレースは答えた。
「代表的なスキルホルダーはシーフですね。罠の存在を察知したり、鍵の開錠や敵の気配の察知、メンバーに優れたシーフが一人いるだけでそのパーティの力は飛躍的にアップしますから」
(なるほど、パーティに必要な特殊技能を持った人間ってことか)
その返事に俺は納得した。
「ああ、確かに冒険やギルドへ依頼された仕事は試合じゃないから、知識や特別なスキルが生きる状況も当然あるでしょうね」
ミレースは頷いた。
脳筋ばっかりで突っ込んで力任せに魔法や剣技で敵は倒したが、罠に引っかかって全滅とか泣くに泣けないだろう。
「他にもスキルホルダーと呼ばれる冒険者がいますけど、彼らは冒険者ランクよりも技能ランクで評価されます。同じく6段階ですね。ギルドにとっても優れたスキルホルダーは貴重な人材ですから」
それはそうだな。
強くても罠が見分けられないシーフより、弱くてもきっちり自分の仕事をこなしてくれるシーフの方がパーティには重要だ。
役割分担ってやつだな。
世の中には魔法や剣は苦手でも、別の特技がある奴もいるだろう。
その手の人間は強さよりも特技で評価するって訳だ。
幅広い人材を集めるには上手いやり方だ。
ミレースは俺の言葉に首を縦に振る。
「依頼によってパーティを組みなおす冒険者もいますし、常に同じパーティで仕事をこなす冒険者達もいますけど、優れたスキルホルダーはいつも複数のパーティから声をかけられることが多いですね」
まさにその道のプロってところだな。
厨二病をくすぐられる話である。
「つまり優れた冒険者とは冒険者ランクが高いか、スキルの能力である技能ランクが高いかのどっちかってことですね?」
「ええ、簡単に言うとそうなりますね、エルリット君」
ミレースはそこまで言って思い出したように手を叩いた。
「それから、さっき話した6つのランクのいずれにも当てはまらない特別な冒険者がいます」
特別な冒険者か、それは気になるな。
「ミレースさん、特別ってどんな冒険者なんですか?」
俺が訪ねるとミレースはゆっくりと口を開いた。
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