第百四十六話 記念撮影
「それじゃあ元気でね、リスティさん」
シャルロットの言葉にリスティは大きく頷く。
そして、書きかけだった手紙の最後を書き終えてシャルロットはリスティに渡す。
それを受け取ってリスティは言った。
「はい、シャルロット様。エルリット君には、必ず皆さんの伝言を添えて渡しますから」
「お願いね、リスティさん」
「ええ!」
団欒の最中にミュアも手紙を書いていたので、それをリスティに渡した。
「あの、私の手紙も坊ちゃまに。坊ちゃまがいないと寂しいですって、ミュアが言っていたと伝えて下さい」
「分かったわ、ミュアさん!」
「ありがとうございます。リスティさんとお話が出来て良かったです。とても楽しかったですわ」
リスティは、ミュアやテーブルの上を眺めながら微笑む。
「私もよミュアさん。エルリット君の小さな頃の魔写真も見れたしね」
テーブルの上には、シャルロットが出してくれた一家のアルバムが載っている。
そこには這い這いをしているエルリットの写真や、子どものくせに難しい本をまるで読んでいるかのように眺めている写真がある。
ミュアがその中の一枚を見て笑った。
「これが私の一番のお気に入りなんです!」
その魔写真の中で、エルリットはべったりとミュアの胸に頬を寄せてぐふふといった感じで笑っている。
「可愛いでしょう、エルリット坊ちゃま! 昔からほんとに無邪気で」
ガルオンがリスティに囁く。
「どこが無邪気なんじゃ? 邪気しか感じないのだが」
「あは、あはは……やめなさいガルオン。可愛いじゃない」
シャルロットがリスティに言う。
「そうだわ! せっかくだから最後にみんなで写真を撮らない? リスティさんがここに来た記念にね」
「おお、それはいいな。せっかく遠いところから来てくれたんだし」
アレンも賛成の声を上げた。
ミュアも嬉しそうに言う。
「大賛成です!」
シャルロットの言葉を聞いて、さっそくミュアは魔写真の撮影機を用意する。
そして、部屋の中で皆で並んだ。
準備が出来るとアレンが合図を出した。
「それじゃあ撮るぞ! はい笑って~」
シャルロットとアレン、そしてリスティとミュア、それからガルオンもちゃっかり入っている。
タイミング良くアレンが魔力を撮影機に飛ばすと、カシャリと二回音がして撮影は終わった。
ミュアがアレンに尋ねた。
「あら、旦那様。二枚お撮りになったんですか?」
「ああ、都にいるエルリットにも渡してやりたいからな」
「そうですね! 流石旦那様」
アレンは魔力で焼き付けられた写真が撮影機から出てくると、その一枚をリスティに手渡した。
「よく映ってるな。これも頼むよリスティさん」
「ええ! ありがとうございます。エルリット君きっと喜ぶわ!」
皆ニッコリと笑っている魔写真の中で、ガルオンがキョロキョロとしているのが映っている。
リスティがガルオンに囁く。
「ちょっと何してるのよ、みっともない」
「はは、面目ない。どうも写真というのは慣れなくてな」
ジト目でガルオンを眺めながら、リスティは写真を大切にしまい改めて皆に別れを告げる。
「それじゃあ私は、そろそろ行きますね」
シャルロットは頷いた。
「ええ、道中気を付けて」
それを聞いてミュアが微笑んだ。
「大丈夫ですよ奥様。なんていっても炎の槍の勇者様がご同行なさるんですもの」
ミュアの言葉にシャルロットとアレンは顔を見合わせて笑った。
「そうね!」
「そりゃそうだ。間違えて親父を襲うような奴がいたら、俺はそいつに同情するよ。じゃあなリスティさん、元気で」
「ええ、皆さんも」
そんな二人に頭を下げて、リスティはミュアと一緒にガレスの部屋へと歩き出した。
ミュアが部屋をノックすると、マントを羽織りすっかり旅支度になったガレスがトレードマークの槍を持って部屋を出てくる。
「どうじゃ。心置きなく話はできたか?」
リスティはそんなガレスに礼を言った。
「はいガレス様! 楽しかったですわ。お時間を下さって感謝します。それでは都に参りましょう」
「うむ、そうするとしよう」
その言葉にガレスは大きく頷いた。
いつもご覧頂きましてありがとうございます!
新作の『神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、実は最強スキルの持主でした~』もよろしければお読みくださいませ。
画面下に新作のページの飛べるリンクを貼っておきますので、そこから作品のページに行けるようになっています。
こちらも皆様に楽しんで頂ければとても嬉しいです。
ぜひよろしくお願いします!




