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第百二十二話 マシャリアの本気

「大筋の話は、王影騎士団の者から聞いた。エルリット、まず最初にお前に尋ねておきたいことがある」


 マシャリアのその問いに俺は首を傾げた。


「尋ねたいことって何ですか? マシャリアさん」


「ああ、タイアスのことだ。エルーク殿下は、ご自身に描かれた魔法陣がタイアスによるものだと本当に言ったのか?」


(そうか……そりゃそうだよな)


 エルークに描かれた魔法陣。

 それがタイアスが描いたものだとしたら……

 同じ魔法陣を描かれて、死んでいったエリーゼの護衛騎士たち。

 彼らの中には、幼い頃からマシャリアが剣を教えていた者もいたってギルバートさんが言っていた。

 そして、タイアスは同じ四大勇者として戦った仲間だ。

 もしそれが本当であれば、マシャリアが一番思いが複雑だろう。


(こんな状況だ、隠してもしょうがないな)


「ええ、マシャリアさん。殿下は『奴等は手強い……タイアスに気を付けろ、この術はタイアスに』と言っていました」


 一瞬殺気のような闘気がマシャリアから立ちのぼる。

 そして、美しい女騎士はくるりと背を向けた。


「そうか……分かった」


 ミレティ先生が俺に言った。


「ガレスとタイアス、そしてジークはいずれこの国を背負って立つ人材。そう思って、私もマシャリアも手塩にかけて育てた弟子たちなのですが……ジークに続いてタイアスまで。まさか、こんなことになるとは」


 先生の言葉に、背を向けたままマシャリアは答えた。


「我らには師としてつけるべきけじめがある。そうだろう? ミレティ」


「そうですね、マシャリア。弟子をこの手にかけるのは、ジークで最後だと思っていたのですが」


 怒りを抑えてようやく冷静になれたからだろう。

 マシャリアはこちらを振り返った。


「ミレティ、あの男はもう弟子ではない。この国を滅ぼそうとする敵だ」


 まるで自分に言い聞かせるようにそう言うと、腰から提げた剣を抜く。

 俺はそんな彼女を姿を眺めながら、首を横に振った。


「まだ分かりませんよ。俺は研究所の中でタイアスさんの日記を読みましたからね。俺には不思議に思えるんだ、タイアスさんの研究の目的と今のタイアスさんの行動はまるで正反対に思える」


 実際に、エルーク殿下も自分の意思とは関係なく俺と戦っていたからな。

 ミレティ先生が俺に尋ねる。


「エルリット、それは魔族がタイアスを操っているということですか? あの施設を見る限り、タイアスほど魔族に詳しい者もいないでしょう。彼ほどの男が易々とそんな真似を許すでしょうか?」


「魔族かどうかは分かりませんが、何者かがタイアスさんを操っている可能性は十分にあるかと」


 マシャリアは剣をしまうと俺に言う。


「四大勇者ともあろうものが何者かに操られるなど、その時点でもはやそう名乗る資格はない」


「ええ、正論ですね」


 確かにマシャリアの言ってることは正論である。

 国を守る一番の要の四大勇者が敵に操られました、では話にならない。


「フユ~、二人とも分かってないです。タイアスは薔薇の女王様が好きなんです、恋は盲目と言うです。マシャリアがいつもガレスの事考えてるのと同じです」


「フユちゃん、何だか大人みたいです!」


 大人の話に参加したそうに、さっきからこちらを見つめていたエリーゼとフユ。

 フユは俺の肩の上で偉そうに胸を張る。


(こいつ、そういうことだけはしっかり覚えてやがるな)


 俺とエルークが話しているのを聞いていたのだろう。

 恋は盲目とか、どうせ白狼達に教わったのだろうが子供に何を教えてるんだ。

 それが回りまわってその主を直撃している。


「な! わ、私はいつもガレスのことなど考えてはいない!!」


 俺たちはそれを聞いてジト目でマシャリアを見る。

 ミレティ先生が頷きながら言った。


「今のはフユが正しいですね」


「ええ、確かに」


「そうですわね」


「エリーゼもそう思います、一杯付箋が貼ってありました!」


「フユ~、真実は隠せないです」


 俺は肩をすくめると、ミレティ先生とマシャリアに言った。


「まあ色々考えてもしかたないですよ。とにかく俺が御前試合で勝てばいいんですから」


 まずはそこからだ。

 マシャリアはまだ頬を赤く染めながら、腕を組むと頷いた。


「そういう事だ、エルリット。お前の四大勇者としての初めての任務だ。が、ガレスも来ることだし、しっかりとこなしてもらうぞ」


 自分でそう言って、またじい様のことを思い出したのか少し動揺するマシャリア。


(じい様のことを考えてる時は、やたらと可愛い顔するよなマシャリアさんは)


 普段は凛々しく美しい女騎士だけにそのギャップは大きい。

 一体あのジジイのどこに惚れたんだか。

 そんなことを俺が考えていると、ミレティ先生が俺に言う。


「そうですわ、エルリット。せっかくですからマシャリアとも戦ってみますか? いざという時は共に戦うことになるでしょうし、お互いの本当の力を知っておくのも悪くないと思いますわよ」


「ええ、元々マシャリアさんには今日から公爵家に来て剣を教えてもらう約束だったし。場所は王宮に変わったけど、御前試合に向けて俺も修行しておきたいですからね」


(本気のマシャリアさんがどれぐらい強いのか、正直少し興味あるよな。ミレティ先生が、四大勇者最強っていうぐらいだからな)


 それを聞いてマシャリアは頷いた。


「確かにな。だが、本気で戦ってもいいのか? ミレティも知っているだろう、私が本気になったらあまり手加減は出来ないぞ」

いつもお読み頂きましてありがとうございます!

もしよろしければ、新作の『無職の最強スキルを持つ転生者!』もご覧くださいませ。

画面の下に、新作へのリンクを貼っておきましたのでそこから作品ページに飛べるようになっています!

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