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5月中旬 中間考査に挑む

*注意* 

本日は2話投稿しています。話に支障はありませんが、前のお話から

読んでいただければ幸いです。


 ゴールデンウィークが終わり、しばらくすると学生生活最初の難関、中間考査がやってくる。

 この日の為に今まで勉強してきたといっても過言ではない私は、来る日に向けて日夜勉強に励んでいた。

 必ず、今回も一位をとる所存である。ふふふ。

 そんな待ち焦がれた試験を一週間後に控えた放課後、私は以前より温めていた計画を実行に移すべく立ち上がった。目的は悠斗だ。


「ねえ、悠斗。一緒に試験勉強しない?」

「は? なんで」


 悠斗の席までやってきて開口一番そういった私に、彼は意味が分からないという顔をした。

 私は一つ頷き、この素晴らしい計画について、熱意をもって悠斗に滔々と語った。お互いが切磋琢磨しあうことによって、如何に効率よく勉強ができ、成績向上が望めるのかを。

 

「……俺そんな真剣に試験に挑む気ねえし、いいや」

「え? だめ?」


 話を一応聞くだけは聞いてくれたが、悠斗は面倒くさそうに断ってきた。

 嘘だ。きっと悠斗なら分かってくれると思っていたのに。


「ええー。入試結果次席とか悔しくないの? 次こそ私を抜いてやるぜ! みたいな気にならない?」

「全くならん。あんたの頑張り方聞いてたら、張り合う気も起きないって」

「ライバルがいた方が燃えるのに」

「勝手にライバル認定しないでくれ」


 残念ながらもうしている。

 ……がっかりだ。

 絶対に断るわけがないと勝手に思っていただけに、ショックは大きかった。見るからにしょぼんとうなだれてしまった私に、さすがに悠斗も気の毒に思ってくれたのかフォローを入れてくれた。


「ああー、まあ、そうだな。一回くらいなら一緒に勉強してもいいぜ。試験範囲、一回さらうくらいはするつもりだし……」

「本当?」


 がばっと顔を上げた私に悠斗が苦笑しながらうなずいてくれる。

 悠斗やさしい。

 お姉さんがいたって言ってたけど、結構面倒見がいいんだよね。

 困っていると、さりげなく助けてくれたりする。


 勉強を付き合ってもらえるだけでも有難い。ここは親切に甘えよう。

 どこで勉強しようかと相談していると、隣から声がかかった。


「伊織ちゃん、勉強するなら俺としようよ」

 

 総ちゃんがいつの間にかそばにやってきていた。最近の総ちゃんは、音を消して近づいてくるスキルが妙に上がっている。ディアス並みで、本当に近くにくるまで気づかない。

 本気で早いとこなんとかしないと色々まずいかも。そう思いながら総ちゃんを見上げると、俺も結構頭いいよと言ってくる。

 確かに総ちゃんは、ゲームで生徒会庶務をやっていただけあって、実際頭はかなり良い。テストも5位以内くらいだったか。

 でも、総ちゃんと勉強とかしんどそうだし、はかどる気がしない。面倒ばかりかけられそうだ。

 そう思ってから、はっと閃いた。そうだ。

 

「……今回は駄目。もう悠斗と約束したから。でも、そうだね。今度の試験、総合点で悠斗に勝ったら、次の試験前は総ちゃんと一緒に勉強するよ」

「おい、俺を巻き込むな」


 悠斗が何か言っているけど無視。私の言葉に総ちゃんは敏感に反応した。


「え? 今里に?」

「そう。こう見えて悠斗、入試次席だから総ちゃんより賢いと思うよ。その悠斗に勝ったらね。約束する」


 そういうと、総ちゃんは目をキラキラ輝かせた。

 私が約束なんて言葉を口にすることが滅多にないから、嬉しいのだろう。


「わかった。じゃあ、今回は残念だけど諦める。……今里、余裕なのは今のうちだけだからな!」


 じゃあ、勉強するから帰るねと言って、さっさと教室を後にした総ちゃんを、手をふって見送る。

 しっかり悠斗をライバル視してくれたみたいだ。

 しめしめ。うまく言った。

 ふっふっふとあくどい笑いを浮かべていると、向かいにいた悠斗が般若の形相でこちらを睨みつけてきた。別に怖くない。怖いのは最近慣れてきた。


「おい、伊織。よくも俺を巻き込みやがったな」 

「何のことかな」

 

 何食わぬ顔でやり過ごす。


「勝手に勝負とか。よりにもよって、由良をぶつけてきやがって」


 憮然とした表情になる悠斗に、ごめんと心の中で謝る。


「きっと、総ちゃん必死で勉強してくると思うよ。悠斗、負けちゃうかもね」

「別にどうでもいい。由良が絡んでこようが無視すればいいだけだし、あいつに負けてもなんとも思わねえ」

「そうなんだ。うん。別に悠斗の好きにすればいいと思うけど。ただ、知っているだろうけど、総ちゃんってかなり面倒くさいよ。きっと悠斗に勝ったら、さぞかし馬鹿にして色々言ってくれるだろうね。……ちょっと想像してみなよ」


 私に言われて、少し考えた悠斗は次の瞬間「想像だけでも、腹がたって仕方ない」と言ってきた。

 そうだろう、そうだろうとも。現実はもっとすごいんだよ。


「ここは完膚なきまでに総ちゃんを叩きのめしておいて、序列というものをわからせておかないと、後々悠斗が大変だと思うな」

「……ちっ。あんた性格悪いぞ」


 分かってやっているからね。


「もとはと言えば、悠斗が手を抜いて試験受けるとか言うからじゃない? きっと罰が当たったんだよ」

「完全にあんたのせいだろ。……ああー。畜生。こうなったら仕方ない。おい、伊織。責任とって協力しろよな」

 

 がりがりと頭をかいて悠斗は唸った。勿論とうなずく。


「悠斗に勝ってもらわないと私も困ったことになるから。当然協力するよ」

「俺のみならず、自分まで餌にするか。そこまでして真剣に試験受けさせたいのかよ」


 そんなに試験って大事かね、とため息交じりにいう悠斗に申し訳ない気持ちが膨らむ。

 ……やっぱり協力してもらうのに、話さないのは良くないな。


「……それもあるけど、総ちゃんの視野を少しでも広げるきっかけになればなあと思ってさ」


 ばつが悪くなってしまった私は、少しトーンを落として真意を語った。悠斗は目を見張ってこちらをみた。


「伊織、あんた」

「悠斗には悪いと思ってる。勝手に目標にしてしまって。でも、総ちゃんって私以外見ようとしないから。こうすれば、悠斗のこと見ざるを得なくなるでしょ」


 そう言えば、苦虫をかみつぶしたような顔になる悠斗。意図が伝わったようだ。


「……それって俺、完全に生贄じゃねえか」

「……さすがにそこまでは言わないけど。執着するものが一つだけって良くないよ。少しずつ増やしていけたらいいなと思ってさ」


 まずは友人でも。

 それから少し笑っていった。


「刺殺エンド回避の為だと思えば……どうかな?」

「おい……だからそれ、本気で笑えねえんだって」


 冗談と笑い飛ばせないところに総ちゃんの怖さはある。はあっと重い溜息をついた悠斗は、諦めたようにうなずいた。

 

「わかったよ。……由良を叩き潰してやる。ついでにあんたもな」


 にやっと笑った悠斗に私も好戦的な笑みを返した。


「ふふふ、その挑戦。受けて立ちましょう」


 ――――うん、やっぱり悠斗は優しい。



 


ありがとうございました。

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