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【完結】魔石精製師とときどき魔王 ~家族を失った伯爵令嬢の数奇な人生~  作者: きゆり
第3章《試験》編

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第86話 尾行

「ルーサ、怖い顔してどうかした?」


 皆から注目されていた。魔石感知で集中していたため、どうやら表情が硬くなっていたようだ。慌てて取り繕う。


「あ、ううん、なんでもない。明日の採取が緊張するなぁ、と思って」


 皆が頷き合い、そして食事をしながら明日の準備の話などをお互い話した。そしてライとリース、アランとメル、私、と「また八日後に」とお互い健闘を祈りつつ別れたのだった。



「ルーちゃん、気配はなくなった?」


 皆と別れてから再び魔石感知を行ってみると、どうやら私たちを見張っていたのだろうと思われる気配は私たち同様に三方向へと別れていったようだ。私の傍にはやはりいつもの気配がある。


『さっき別れた奴らの誰かを同じようにつけていたようだな』


「だよね……」


 ライたちと一緒に行動したときに気配が集まり、そして別れると同様に気配も別れる。となると、私同様、あのとき一緒にいた誰かをつけていたとしか思えない。なんで? 私だけでなく他の人たちにも……。


「そういえば……ロンさんから気を付けろと言われたのは『魔石精製師の女の子を探している人』がいる、って……それって『魔石精製師の女の子』であって、『私』ではなかったってこと? 魔石精製師の女の子全てを見張っていたってことなの? メルやリースも見張られている……?」


『何者かは知らんが、おそらくそうなんだろうな。ルーサが、というより魔石精製師の女を探っていた……』

「なんのために?」

『知るか』

「えぇぇ」


 まあ、ルギニアスが知る訳ないわよね。それは分かってるんだけど、なんだかスッキリしない。

 魔石精製師の女の子を見張っている意味……一体なんなのかしら……。



 そんなことを考えながら、いつものごとくあれこれ買い物をして明日の準備をする。明日はフェスラーデの森よ。何度か行ってはいるけれど、精々森の入り口付近しか探索したことはない。今回は期間も長いことだし、もう少し奥まで探索出来たらと思ってるのよね。


 家へと戻ると真っ先にリラーナが「どうだった!?」と聞いてくれた。ダラスさんは淡々としてたけど、アハハ。

 試験の内容や友達が出来たこと、もう一人の魔石精製師キリアさんの話や港町エルシュの話なども、色々と話して来たことを告げると、リラーナは興味津々でさらには予想通り、飛行艇の話に食い付いて来た。

 目を輝かせ、話を聞いていたリラーナ。やはりどうしてもガルヴィオに行ってみたい、という願望はお互いさらに高まった。なんとか行ける方法を探したいものだわ。


 ダラスさんはキリアさんのことを教えてくれた。キリアさんはダラスさんよりもかなり年下で、まだまだ若いのに自己流で修行し魔石精製師となった凄い人らしい。

 弟子も多く取り、まだまだ粗削りではあるが良い魔石を精製している、と褒めていた。いつかその人の魔石も見てみたいわね。



 その日は夕食の間ずっと話に盛り上がり、すっかり寝るのが遅くなりそうになったが、ダラスさんに叱られて就寝した。



 ◇◇



「今年の魔石精製師の試験を受けに来た女性は三名か……」


 執務室で魔導省からの報告書類を受け取り、目を通す。その部屋の主であろう男は深く椅子に凭れ掛かり溜め息を吐いた。


「『サラルーサ』という名の少女が現れたら報告するように伝えてはいたが、長年それらしき少女は現れなかった」


 男は目の前に立つ年老いた女性に話しかける。


「しかし今年の受験者……恐らくその三名のうち、一番可能性があるのはこの『ルーサ』という少女だろうな」


「左様でございますね。年齢的にその少女が恐らく『サラルーサ・ローグ』でございましょう。私が神託のときに見掛けた姿は銀髪。髪色が違うということでしたが、それくらいならばいくらでも変えることは出来ましょう」


「……あれから七年か……結界もさらに弱まってきている。一体どうすべきなのだ……」


「以前のような早まったことをなさらぬよう」


 老女は男を窘めるように言った。


「あ、あぁ、分かっている。しかし……その少女と分かっていて、ただ見張っているだけしか出来ないというのは何とももどかしい」


 苦悩するような表情の男に、老女はゆっくりと目を閉じ呟いた。


「先日、神託が下りました」


「!! 女神アシェリアンからか! それはどのような!?」


 男はガタッと音を立て、身を乗り出した。


「『あるべき姿へ戻る時が来た』と」


「あるべき姿? それはどういうことだ?」


 男は怪訝な顔をする。


「そこまではなんとも。私は女神アシェリアンのお言葉を伝えるだけでございます」


 再び椅子に深く腰掛けた男は額に手をやり、天を仰ぎ見た。


「女神はなにを伝えようとしているのだ。このままなにもせずただ待つだけでは結界が弱まり、いつしか再び魔物が攻め入って来る。そのとき我々はどうしたら良いのだ……」


「…………」


 老女はそれに答えることはなかった。

 執務室は静まり返り、男の大きな溜め息が響き渡った。



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