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【完結】魔石精製師とときどき魔王 ~家族を失った伯爵令嬢の数奇な人生~  作者: きゆり
第1章《因果律》編

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第6話 大聖堂

「では、ごゆっくりとお過ごしください」


 店主が去ると、お父様はニコニコしながらまずキトキトという魚を自ら取り分けてくれた。


「いただきまーす!」


 店主の言っていた通り、テーブルに置かれたタレに付け一口。


「おぉ!」


 お父様は一口食べた途端声を上げた。


「なんだこの歯ごたえは!」

「本当ですねぇ、焼き魚とは全く違う歯ごたえ」


 私も一口食べてみたが、今まで食べたことがないような歯ごたえに驚いた。噛み応えがあるというか焼き魚と違い弾力がある。付けたタレの味も魚と合っていて美味しいわ。


「美味しい! でもこれ、なかなか嚙み切れない……」


 焼き魚を食べるより長い間もぐもぐしている気がする。


「いやぁ、面白いね、港町でしかほとんど食べられないというのが残念なところだよ」


 そう言いながらも次々に口へと運ぶお父様。負けじと私も食べるのだけど、もぐもぐが追い付かないー!

 悔しがっていると笑われる始末。



 冷めないうちに、と焼き魚や肉料理もいただき、今までにない満足感で食事を終えると、すっかりご機嫌のお父様は店主に料理の感想を話し盛り上がっていた。


 ひとしきり話が終わると店主に礼を言い、店を後にする。


「さて、美味しいものも食べられたし、明日は気合いを入れていかないとな」

「楽しみ!」

「あれが明日向かう大聖堂だよ」


 そう言いながらお父様は大きな建物を指差した。


 運河の向こう側。城壁内にある大聖堂。遠目に見える城もかなりの大きさだが、大聖堂も街の建物とは比べ物にならないほど大きい。遠目で見るだけでも厳かな雰囲気が漂っているのが分かる。ちょっぴり緊張しちゃうのは仕方ないわよね。


「明日、城門を通りあの大聖堂まで向かう」

「うん」


 横目で大聖堂を眺めつつ、宿に戻ると、その日は疲れからか早めに就寝したのだった。




 翌朝、いよいよ洗礼式と神託へ! 部屋で朝食を取り、洗礼式へと向かうための服に着替える。特に衣裳が決まっているわけではないが、大聖堂という厳かな場所へと向かうため、清楚な服が用意されていた。

 薄っすらと水色がかってはいるがほぼ白のワンピース。髪は下ろしたままカチューシャを付ける。長い銀髪がキラキラと太陽の光を浴びて輝く。お母様譲りの自慢の髪。


「さて、では向かうとしよう」


 宿を出ると馬車が用意されていた。王都内といえど、運河を渡り、城壁を越え、さらに大聖堂まで向かうにはそれなりに距離があるらしい。

 ローグ伯爵家の馬車は私たちを宿まで送り届けた後は、屋敷へと戻ってしまっていたため、お父様は宿へ馬車の手配をお願いしていた。


 馬車へと乗り込み出発する。


 宿から運河の橋まではそれほど遠くはない。大通りと同じだけの道幅がある橋はとても大きく、運河を渡りきるほどの大きさの橋は王都以外にはないそうだ。


 ガタガタと揺られながら運河を渡る間、窓から眺めるが橋の上を通るとなおさら運河の広さが分かる。本でしか見たことがないけれど、船でも通れそうなほど広いわね。

 まだまだ朝のひんやりとした空気が流れるなか、少しずつ人々が活動し出すこの景色がとても綺麗で素敵だった。


 城門までたどり着くと門兵が馬車へと近寄り、御者と話す。窓からお父様が顔を出し、名と要件を門兵に伝えた。

 事前に城門を通ることは申請しているらしいので、門兵は書類を確認するとすぐに門を開いてくれた。


「どうぞ、お通りください」

「ありがとう」


 洗礼式と神託を行いに来たことは門兵も分かっているため、私に向かってにこやかな笑顔で見送ってくれた。


 さらに進むと大聖堂が見えてくる。遠目から見たときよりも圧倒的に大きい。

 建物自体に細かい模様が入れられていて、三角になった屋根は先端になにか飾りのようなものも付いていた。


「ハハ、ルーサ、口が開きっぱなしだぞ」


 呆然と見上げたまま固まっていたら、どうやらあんぐりと口が開いていたらしい。


「だって……こんな大きい建物初めて見た」

「ハハ、そうだなぁ。領地ではこんな大きな建物はないからなぁ」

「フフ、そうですね、さあ、行きますよ?」


 お母様が背中に手を添え促した。


 巨大な扉はギギギと音を響かせながら、重たそうに開かれる。


「お待ちしておりました。サラルーサ・ローグ」


 中からは髪も髭も真っ白なおじいちゃんが現れた。白いローブを着ていて、後ろには同じローブを着た女性も立っていた。


「さあ、こちらへ」


 き、緊張する……。


 お父様とお母様の顔を見上げると、二人は少し微笑み頷いた。


 再びおじいちゃんと女性を見ると、二人の後に続く。中はひんやりとしていて静まり返っている。私たちの歩く音だけが響き、嫌でも緊張感が増す。


 礼拝堂として使われているところなのだろう、長椅子が並ぶその真ん中の道を真っ直ぐに進むと、正面には聖女の像があった。優し気な顔、どこかお母様に似ているような、そんな温かみを感じる表情。祈りを捧げるような姿の像だった。


「あれ? 女神アシェリアンの像は?」


 聖女の像はあるが、女神アシェリアンの像が見当たらない。どこにあるんだろう。


「女神アシェリアンの像はここにはありません」

「え?」


 確か、女神アシェリアンの像の前で洗礼式と神託を行うんじゃなかったっけ?

 お父様とお母様のほうをチラリと見るが、頷き微笑むだけ。どういうことかしら。


 おじいちゃんは聖女の像の前まで来ると、こちらへ向き直った。


「こちらへおいでください」


 おじいちゃんは手を広げ、足元の模様を差した。


 そこには大きな魔法陣が描かれていたのだった。


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