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【完結】魔石精製師とときどき魔王 ~家族を失った伯爵令嬢の数奇な人生~  作者: きゆり
第2章《修行》編

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第47話 小さな約束

「おい、今こいつ喋ったよな!?」


 少年は私の顔とルギニアスを何度も交互に見ながら訴える。


「あぁ、あ、あ、え、えっと……」


 ウルバさんのときといい、なんでルギニアスは隠れてくれないのよ! あ、ウルバさんといえば魔傀儡疑惑! あれを使わせてもらおう!


「えっと、この子魔傀儡なの……」


 ルギニアスがじろりとこちらを見た気がしたけれど、お願いだから空気を読んで!


「魔傀儡?」

「そう、魔傀儡」


 フフフ、と笑顔で冷静に……魔傀儡なのよ、それ以外のなにものでもないのよ。ルギニアスは魔傀儡! 脳内で自分に言い聞かせる。


「魔傀儡ってなに?」

「えっとね、ガルヴィオで造られている魔石で動く人形!」

「へぇぇ、そんなものがあるんだな。スゲーな!」


 感心した顔になった少年はルギニアスを覗き込み、じっくりと観察をしている。あ、あんまりじっくりと見ないでぇ! ルギニアスが滅茶苦茶不機嫌になっている気がする……。


「そ、それよりもあなたのお名前は? さっきの体術凄かったわね!」


 このままだとまたルギニアスを握り締めてしまいそうなので、なんとか話題を変えてみた。少年はルギニアスから視線を外すと、私のほうへ向き直り、ニッと笑った。


「俺はディノ。剣闘士の神託を受けたおかげかな。今はまだ修行中だけど、結構な腕前だろ?お前は?」

「私はルーサ。私は魔石精製師で、魔石屋のダラスさんのところで修行中なの」

「へー、魔石精製師か、珍しいな」

「剣闘士というのは、剣術体術に優れているんだっけ? 将来は騎士団に入るの?」


 剣士の神託を受けた人は当然のように国や他の領主の元での騎士団などに所属している人が多いと聞く。剣闘士というものはそれほど聞く機会はないが、確か剣術と体術が優れていると聞くので、やはり騎士団に入るのだろうか、という素朴な疑問だった。


「フッ、よくぞ聞いてくれた! 俺はあんな堅苦しいものには入らない!」


 ベンチから立ち上がったディノは腕を組み、仁王立ち。そしてニッと自信満々な顔で声を上げた。


「え? 騎士団には入らないの?」

「あぁ! あんなものに入るより、俺は世界が見たいんだ!」

「世界?」

「あぁ! 俺は今、この王都しか知らない。でもこの国にも色々な街や砂漠や森や海があるだろう?」

「うん」

「そこには知らないもの、見たことがないものもきっといっぱいある! さらにはガルヴィオやラフィージアにも行ってみたい! ガルヴィオは獣人の国というだけでなく、物づくりが得意らしいし、どんな凄いものがあるのかと思うじゃないか! ラフィージアも天空に浮いた国だろ!? どうやって浮いてんのか見てみたくないか!?」


 目を輝かせながら興奮気味に話すディノ。呆気に取られつつも、その姿を見ていると、私もなんだかワクワクしてきちゃった。


「本当だね、そっかこの世界にはまだまだ知らないものがたくさんあるのね……私も見てみたいな……」


 この前の研究所の見学も楽しかった。それを世界中見て回るなんて、考えただけでもワクワクするわね。しかも、色んなところを旅すれば、お父様とお母様の行方も分かるかもしれない……。


「ハハ、ルーサも気になってきたか?」

「うん! ガルヴィオやラフィージアの魔石も見てみたいし!」


 もしかしたら魔石の種類が違ったり、使われ方が違ったりするかもしれないしね! リラーナと店を出す、という約束も、もっとたくさんの経験を積んでからのほうがきっと役に立つはず!


「ハハハ、お前変わってるな」

「え? なんで?」


 変わってるって失礼な。


「大抵の奴は馬鹿なことを、と鼻で笑いやがる。騎士団に入るほうが安定した給料に生活にと保障されるのに、って」


 確かにそれは一理ある。でもそれよりもディノと同じように、私もワクワクが勝ってしまった。


「でもルーサは笑わずに俺の話を聞いてくれたな!」


 そう言って私の頭をワシワシと撫でたディノ。歳が近い男の子に頭を撫でられるとか、なんだかなんだかムズムズする……。


「それならさ、お互い大人になったら一緒に旅でもしようぜ!」

「一緒に旅?」

「あぁ! 俺は必ず強くなる。俺と一緒に旅をするのはお得だと思うぞ。護衛を雇う必要がないからな! アハハ!」

「フフ、本当だね。大人になったら一緒に世界を見に行こう!」

「あぁ、約束だぞ!」


 そう言ってディノは拳を突き出した。キョトンとした私に苦笑し、ディノは私の手を取り自分の拳の前へと持ち上げた。ハッとし理解した私はディノと同じように拳を突き出し、ディノの拳と合わせた。


「「約束!」」


 そうやってお互いアハハと笑い合ったのだった。

 子供である私たちの小さな約束。大人になったときにこの約束を覚えているかは分からない。でも、きっとこの約束は守られる。そう思えた。そう、きっと……。




「あ、いけね、そろそろ帰らないと怒られる!」

「あ、私も!」


 辺りはすっかり夕暮れになり、陽が沈みかけていた。私はというとお使いの途中だったことを思い出す。

 あぁ、しまった! すっかり遅くなっちゃった。きっとダラスさんもリラーナも心配してるはず!


「きょ、今日は助けてくれて本当にありがとう!! またね!!」


「あぁ、気を付けて帰れよ!」


 そうお互い手を振りつつ別れを告げた。


 早く帰らないと、と急ぎ足で街を抜ける間、私は初めて出来たリラーナ以外の友達に嬉しくなり、ふわふわドキドキとなんだか不思議な気分になっていた。


「うふふ」


「気持ち悪い笑い方をするな」


 そんな幸せな気分だったのに、ルギニアスの容赦ない一言でスンとなったのでした……。



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