理由なき不安と焦燥
『この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』9巻発売しました!
ここまで本当にあっという間でした!!
通販その他の情報は、活動報告をご覧になってくださいませ!
※書籍9巻の特典です※
◆書籍書き下ろしSS:『その雑草ホーリーにつき』
◆電子書籍書き下ろしSS:『クロス伯爵家の家令は見守りたい』
◆TOブックスオンラインストア特典SS:『いつか貴女に騎士の誓いを』
◆応援書店特典SS:『アンテナショップは「ぷるっちょ」と共に』
「幸せは~歩いてこない、だーから歩いてゆくんだね~」
「きゃっ、きゃっ!」
「一日一歩、三日で三歩、さーんぽ進んで二歩さっがる~」
「あ、うー!」
今現在、私は授乳後のユリウスが良い子でねんねしてくれるよう、添い寝をしながら子守唄を歌ってあげている最中なのであります。
……が、何故かユリウス。寝っ転がりながら、すっかりご機嫌に全身でリズム(?)を取っております。うん、眠る気ゼロだね。選曲誤ったか。
「ああ……。本当に、エレノアお嬢様のお口から紡ぎだされる天使の歌声の数々は、歌詞も含めてなんと素晴らしいのでしょうか……!!普段、何気なく歌われている鼻歌さえも、『至上の調べ』の一言に尽きます!!」
「ええ!ウィルさんの仰る通りですわ!!なんと言いましょうか……。平民である私でも、すぐに歌詞の情景が目の裏に浮かぶ庶民的なものから、私の理解が及ばないほど、高尚かつ前衛的なものまで。エレノアお嬢様は本当に多才な上に博識でいらっしゃいますわ!!」
「あ、有難う、ウィル。ミアさん」
感動で目をキラキラさせているウィルとミアさんの賛辞に冷や汗を流す。ミアさんの言っている『前衛的』な歌って、多分アニソンの事だろうな。
「うん、本当だね。いつも思うんだけど、エレノアの歌う曲って本当に独創的だよね。しかも軽快なのに、非常に哲学的だ」
私の発想を元に作成された、『人をダメにするクッション』に身を沈めながら、ユリウスのおくるみをセッセと作っていたパト姉様が、ウィル達同様、感心しきりといった様子で私の歌を褒めてくれる。
因みにこのクッション、帝国との全面対決に向け、新たなる魔法陣構築や国内の重要地点の結界強化に明け暮れていたメル父様と宮廷魔導師団が、息抜き&気晴らしの末に完成させた、スライム素材を使って作ったビーズクッションもどきである。その名も『ダラクッション』!(『堕落』と『ダラダラ』をかけました)
試作品の何個かをアシュル様方にあげた時。商品の名前を聞いたリアムが「お前さぁ……。もうちょっと、こう……ネーミングセンスをさぁ……」って、ブツブツ言っていたけど気にしない。だって、この名前を聞いたメル父様が、満面の笑みで「採用!」ってサムズアップしてくれたんだもん!
余談ですがこれ。宮廷魔導師団が特許を持ったらしくて、帝国との戦争が終結したら、大々的に売り出す予定なんだそうだ。既に王宮関係者から予約購入の申し込みが殺到しているとの事です。皆、癒されたいんだね。
「有難う御座います!この歌、行き詰まった時とかに歌うとやる気になるんですよ!」
そう。この歌、受験勉強の時とかによく歌っては、己を鼓舞していたのだ。特に『千里の道も一歩から』ってところが、無謀な挑戦(某名門大学合格)に心が折れそうになるたび、やる気を奮い立たせる起爆剤になっていたっけ。
水●寺姐さん、有難う。おかげで大学受かりました!
そういえばこの歌。セドリック経由で、瞬く間に学院中に広まったんだそうだ。なんでも、『影』の授業で心折れそうな学生達の応援歌になっているんだとか。
……そういえばクライヴ兄様が、「今現在、第二段階としてシーヴァー殿が授業に投下された」って言っていたっけ。
シーヴァー様、なんかドSっぽいから、心折れそうな人達が続出しているのかもしれない。セドリックとリアムは大丈夫かな?今度は『上を●いて歩こう』を伝授しておくとしよう。
「失礼致します、パトリック姉上。ああ、エレノア。やっぱりここにいた」
「お前、最近は食堂かここかのどっちかにいるよな」
「オリヴァー兄様!クライヴ兄様!」
学院に出勤する前の挨拶をしに、兄様方がパト姉様の部屋へとやってきた。
私がベッドから起き上がると、すかさずミアさんがユリウスを抱っこし、ウィル共々壁際の方へと下がった。あ、ユリウスの眉がコイル巻きになってる!そんなユリウスを見ながら、兄様方の目も半目になっている。どっちも相変わらずだなぁ。
実は私、遂に離宮にて疎開生活(ちょっと違う)をしているのであります。
今回は事情が事情なので、補習授業用のプリントや宿題なんかは出ていない。なので、暇な時間をユリウスの育児に全振りしているって訳なんです。
……まあ、オリヴァー兄様が公爵家当主代理の仕事をする為に、学院を休んでいる時なんかは、オリヴァー兄様の癒しアイテムとして、膝の上でまったりしていたりするんだけどね。……兄様、膝痺れないのかな?
因みにですが、只今の時間は午前十時過ぎ。セドリックとリアムは、とっくの昔に登院しております。
でも、オリヴァー兄様は学生ではないので重役出勤。そしてクライヴ兄様はというと、私の専従執事の任を一時的に解かれ、今現在はオリヴァー兄様の護衛騎士をやっております。なので当然、同じ時間に出勤(?)です。
「それじゃあ行ってくるよ」
「良い子で待ってろよ?」
「はいっ!兄様方も頑張ってくださいね!」
互いに挨拶を交わしながら、行ってらっしゃいのキスをする。ここでライトキスにはならず、しっかりディープキスになるのが兄様方のお約束です。
「ああ……エレノア。本当だったらずっと、このままこうしていたいよ」
存分に私の唇を堪能し、私の全身を真っ赤にさせたオリヴァー兄様が、私の身体をスッポリと抱き締めたまま、耳元で甘く囁く。
いつもの通りの挨拶。いつもの言葉。私も、いつもの苦笑交じりでの「いってらっしゃいませ」を言おうとして口を開いた。
「……それじゃあ、今日は学院お休みしてください」
でも、出てきた言葉は全く違うものだった。オリヴァー兄様は身体を離すと、珍しくキョトンとしながら私の顔を見つめる。
「エレノア?」
「あ、あれっ?」
言おうとしていたのとは、全く別の言葉が口を突いて出た事に戸惑う私を、オリヴァー兄様が「エレノア……。遂に情緒が……!」と言いながら、物凄く嬉しそうな顔をする。
「うん、仕方がないね。エレノアの望みだし、今日は休もうか!」
「馬鹿言うなよオリヴァー!今日はアシュル達が学院生達への激励と、今後の戦略の話し合いをする為に、学院に来る予定だろうが!」
すかさず、オリヴァー兄様にクライヴ兄様がツッコミを入れる。
「うん、そうなんだけど……。滅多にないエレノアの我儘だよ?叶えてあげたいじゃないか!」
「だったら、話し合いが終わった後で早引けすりゃあいいだろうが!とにかく、もう行くぞ!」
『――……あ!!』
突如として湧き上がってきた、理由なき不安と焦燥感。
「クライヴ兄様!行っちゃダメ!!」
突き動かされるように、オリヴァー兄様の襟首を掴んで引き摺って行こうとしたクライヴ兄様に駆け寄り、胸元に抱き着く。途端、クライヴ兄様の動きが止まった。
「エ、エレノア!?」
「嫌です!お願い、兄様行かないで!!」
グギギ……と、音が聞こえてくる程、ぎこちない動きで私を見下ろすクライヴ兄様を、今度はオリヴァー兄様が「クライヴ……。駄目だからね?」と牽制する。こんな時になんだけど、この二人って本当に良いコンビだよね。
「う~ん……。僕だって行きたくないけど、一応学院長補佐だし、王族の訪問にはきちんと対応しないと不敬だしなぁ」
「だな。俺も一応、ディラン殿下の補佐役しているし……」
「兄様方の不敬行動なんて、今更じゃないですか!!今回参加しなくても、皆『ああ、またか』って、笑って許してくれますよ!!」
私の無茶苦茶な論理に、兄様方の口元が引き攣る。……うん。考えてみたら私、なにげに兄様方の事を思いきりディスってるな。
遂に9巻発売開始です!
更新、明日もアップしますのでよろしくお願いします(ノ◕ヮ◕)ノ*:・゜✧
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