リターン・ザ・カメ
『この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』9巻の予約販売が開始されております!
今回も、それぞれの書き下ろしSS気合を入れて書いておりますので、興味のある方は是非v
◆書籍書き下ろしSS:『その雑草ホーリーにつき』
◆電子書籍書き下ろしSS:『クロス伯爵家の家令は見守りたい』
◆TOブックスオンラインストア特典SS:『いつか貴女に騎士の誓いを』
◆応援書店特典SS:『アンテナショップは「ぷるっちょ」と共に』
「……ご無沙汰しております、シーヴァ―・ヴァンドーム公爵令息。で?こちらには何の用でいらっしゃったのでしょうか?」
私を抱きしめながら、警戒心バリバリにシーヴァ―様を睨みつけているクライヴ兄様に対し、シーヴァ―様はと言うと、非常に朗らか(というか妖艶)な微笑みを浮かべていた。
「はっはっは!いやぁ~、この子が我が家に不法投棄されたから、元居た場所に戻しにきたんだよ。ね?ウラシマ」
ふ、不法投棄って……。
シーヴァー様のお言葉を分かっているのかいないのか、ニュッと首を伸ばしたウラシマは、私と目が合うなり嬉しそうにヒレと尻尾を振った(可愛いv)あっ!バタついているウラシマを、シーヴァー様が「ほら、行っといで」と、優しく地面へと下ろした(クライヴ兄様は「行っといでじゃねぇ!」って小さく呟いておりますが)。
「いや、不法投棄じゃなくて、元居た場所に送り届けただけだし。……というかソレ、なんで貴方の母君が憑りついていないんですか?」
ク、クライヴ兄様!口調が乱れております!不敬です!しかも、奥方様をまるで悪霊のように!……というかウラシマ、なにげに移動するの早くない!?もう私の膝の上によじ登っているんですけど……って、あっ!クライヴ兄様がウラシマを指で弾いて噴水に落とした!
「ウ、ウラシマ!?」
派手に水飛沫を上げながら沈んでいくウラシマの姿に慌てる私に対し、クライヴ兄様はシレッと「エレノアよ。カメは水の中にいるのが一番なんだ」とのたまった。
いやいやクライヴ兄様。カメと一概に仰っておりますが、ウラシマはウミガメなので、淡水ではなく海水でなくてはなりません!更に細かく言いますと、カメの仲間には陸で暮らして水と無縁な種もおりましてですね「カメあるあるはどうでもいい!」兄様!せめて最後まで聞きましょうよ!!
「ああ。母上は今現在、ヴァンドーム公爵領の防衛戦に参加しているんだ。それが落ち着いたら、また憑りつきに来るんじゃないかな?」
シーヴァー様、貴方様まで「憑りつく」って……!奥方様、なにげに実の息子にまで悪霊扱いされておりませんか!?
……ん?ヴァンドーム公爵領の防衛戦……?なんか、凄く気になる言葉が聞こえたんだけど……って、ああっ!ウラシマが水中からダイブして、クライヴ兄様の上着の裾に噛みついたー!!
「あっ!てめっ、こらっ!離しやがれ!!」
クライヴ兄様、慌ててウラシマを引き離そうとしているんだけど、ウラシマ、『よくもやったな!』とばかりにガッチリ噛みついていて、剥がす事が出来ないでいる。……ウラシマ、貴方ひょっとして、片親がカミツキガメだったりする……?
「さて、エレノア嬢。夜会以来ですね。お会い出来て光栄です、私の聖女様」
クライヴ兄様がウラシマとの攻防に集中している隙に、なんとシーヴァー様が、至近距離まで近付いていた!
「ふぁっ!?」
思わず間の抜けた声を上げ、わたついていると、シーヴァ―様が優しく私の手を取る。
『うわぁぁぁっ!なんて透明感のある美貌!!青みがかったエメラルドグリーンの瞳が潤んでいて、まるで煌めく南国の海のよう!!指が長い!まさに白魚のような手!でもしっかり男の手だ!!』
パニック状態のまま、条件反射で心の実況中継をしている間にも、その形の良い唇が私の手の甲に落とされ……る直前。
「おい!!なにしてやがる、てめぇ!!」
目にも留まらぬ速さで、私の身体がクライヴ兄様によってひったくられ、寸でのところで手の甲への口付けは回避されたのだった。
「ク、クライヴ兄様!!」
「ったく!ヴァンドームの連中は、揃いも揃って油断も隙もねぇ!!」
真っ赤になった私を腕の中に抱き締めながら、クライヴ兄様は猛獣のごとき殺気を込め、シーヴァー様を睨み付ける。
……あれ?クライヴ兄様、上着は……って、ウラシマが上着でグルグル巻きにされて転がってる。クライヴ兄様、結局ウラシマを剥がせなかったから上着脱いだんですね。
「ふふ。流石はあのグラント・オルセン将軍のご子息。反射速度が素晴らしい」
対するシーヴァー様はというと、相も変わらぬ麗しい微笑を浮かべながら、「降参です」とばかりに両手を軽く上げている。その悪びれない態度に、クライヴ兄様のこめかみにビキビキと青筋が立った。
クライヴ兄様、どうかお鎮まりを!何度も言いますが、三大公爵家の直系に対し、不敬なんてもんじゃないですよ!?
なんてやっていたその時。
「エレノア!クライヴ!!」
「えっ!?オ、オリヴァー兄様!?」
「シーヴァー!」
「おや、早かったですねアーウィン兄上」
ちょっと息を乱しながら登場したのは、オリヴァー兄様とアーウィン様だった。
「オリヴァー兄様、どうしてここに?」
「うん。うちの『影』がね、『カメを連れた不埒者が出没した』って呼びに来たんだよ」
ち、ちょっ!『影』!!兄様になんて報告しているの!!
「……ところでエレノア。シーヴァ―殿に、何もされていないよね!?」
「え!?は、はいっ!!」
クライヴ兄様から私を受け取り、静かに問いただすオリヴァー兄様の目がガチで恐い。ええ、間一髪でしたが、なにもされておりませんよ?
「……へぇ……。何が?」
「あっ!い、いえっ!ちょっとした、そのっ!あああ、挨拶……ですかね?」
オ、オリヴァー兄様!瞳が赤くなりかけております!!どうどう、落ち着いてください!!
「……おい、シーヴァー。お前、エレノア嬢にどんな『挨拶』をしようとしやがった……?」
こちらも、アーウィン様がシーヴァ―様の肩を両手でガッシリ掴んで問いただしている。というかアーウィン様、未遂ですから、どうか落ち着いてください!
「嫌ですねぇ、兄上。貴族女性への挨拶ですよ?言わずとも分るでしょう?」
「シーヴァー、俺の目を見てしっかり説明しろ!!というかお前、なんでわざわざこっちに来やがった!?本来であれば、直に王宮へ行っている筈だろうが!!」
「ふふ……兄上。私もアルバの男の端くれですよ?愛しい女性と堂々と会える機会を、わざわざ逃すとでも?」
ああっ!アーウィン様がシーヴァー様を顎クイしながら睨み付けている!ち、ちょっ!お二人の身長差とその角度、非常にヤバい!!
「……エレノア?君、なにを喜んでるの?」
ひいっ!オ、オリヴァー兄様!ち、違います!!これは私の沼が無条件に反応しただけで、決して喜んでいるわけでは!!ですので、暗黒オーラをお鎮めください!お願いします!!そしてクライヴ兄様!その蔑んだ氷点下の眼差し、止めてください!!
「……って、あれ?」
王宮に直接……って。シーヴァ―様、ひょっとしてウラシマを届ける為に王都に来たわけじゃなかったの?
「はぁ……。まあ、いいです。アーウィン殿、どうやらシーヴァ―殿は王宮と間違って学院にやって来てしまったようです。兄として、方向音痴な弟君を責任をもって王宮に送り届けてください」
オリヴァー兄様のナチュラルな暴言を受け、アーウィン様のこめかみにビキリと青筋が立った。
「じゃあクライヴ、僕も君と一緒にこのままエレノアを送り届けるから……」
「おや、行き先が同じでしたか。では是非、道中ご一緒しましょう」
「ご一緒しません!!」「あんたらの後で行くから、とっとと先に行け!!」
兄様方ー!!息ぴったりに不敬発言をー!!
「いや。オリヴァー、そしてクライヴ。君達も彼らと一緒に来てくれないか?」
回廊の方から声がかかり、私を含めたその場の全員が一斉に振り返る。するとそこには、柱に凭れ掛かりながら腕を組み、こちらを見つめているアシュル様が立っていたのだった。
ふてくされながら噴水で泳いでいるウラシマを見た学院生達の反応。
「あれっ!?大精霊様が緑になってる!?」
観覧、ブクマ、良いねボタン、感想、そして誤字報告有難う御座いました!
次回更新も頑張ります!




