授業……と言う名の攻防
『この世界の顔面偏差値が高くて目が痛い』8巻発売中です!
ご購入くださった方々、そして感想をくださった方々、本当に有難う御座いました!
特典SSは以下のとおりとなっております。本編では語られない裏エピソードとなっておりますので、興味のある方は是非、購入をご検討くださいませ!
◆書籍書き下ろしSS:『●●の精爆誕!』
◆電子書籍書き下ろしSS:『紅の宝玉は最愛の胸に抱かれ眠る』
◆TOブックスオンラインストア特典SS:『白ウサギは優しい世界でまどろむ』
◆シーモア特典SS:『ダンジョン妖精は過去に思いを馳せる』
※ジュニア文庫1巻も予約販売中ですので、宜しくお願い致します!
「……へぇ……。で、その後、アーウィン殿と攻撃魔法の実演……と言う名の実戦に発展したんだ?」
「……互いに水系統の魔力保持者だからな。魔法攻撃ではどうにも決着がつかなくて、最終的に肉弾戦に突入した」
「成る程。その結果が、クライヴのその姿って訳か。……で?しっかりぶちのめした?」
お昼時のカフェテリア内の、もはや私と婚約者達(+マテオ)との指定席となっているいつものテーブルで、私を膝の上に乗せ、優雅に食後のデザートを給餌しているのは、我が麗しの筆頭婚約者様であるオリヴァー兄様である(ふわふわしっとりガトーショコラ、うまし!)。
皆、チラチラこちらを見ているけど、学院長様のお達しを守って、本当に見守るだけで近寄ってはこない。……でも皆、私の一挙一動を見逃すまいとしているのが分かる。因みに本日、私が頼んだAランチ(フワフワオムレツとミネストローネセット、ミニデザートと紅茶付き)は、一瞬で売り切れになったそうだ。
「……オリヴァー。相手は三大公爵家嫡男だぞ。簡単に沈められるかよ!まあ、互いに数発入れたから、あっちも無傷って訳にはいかなかったろうよ」
私の後方に立ち、オリヴァー兄様と会話しているクライヴ兄様だが……。服装の乱れこそないものの、右頬と右手の甲にガーゼ、左手首に包帯……と、肌の露出している場所が割と酷い事になっている。
実はあの後、「質問は一人一回」を無視したクライヴ兄様とアーウィン様との間で、貴族言葉での嫌味合戦が繰り広げられたのである。
「流石は海から誕生したとされるヴァンドーム公爵家の直系……。まさか御母君までもが海の化身であったとは……。ならば御父君と同じく、陸の花より海の真珠を娶るべきではありませんか?(意訳:「カメが母と認めたって事は、あんたらやっぱり卵生だったんだな。だったら人の婚約者に色目使ってねぇで、とっとと海洋生物嫁にしろや!!」)」
「見たままの姿をその通りに捉らえるなどと……浅はかとしか言いようがないな。ああ、そういえば君はあの英雄の子であったな。成る程……血は争えない……という事か(意訳:「ざけんな!卵から孵るわけねーだろ!?しかも、なんで海洋生物娶らなきゃならねぇんだ!頭沸いてんのか!?ああ、脳筋か!?脳筋だったな!流石はあの英雄の息子。血は争えんな!」)」
……というように。
けれども、普段から腹芸を得意としていない(であろう)お二人は、早々に貴族言葉での応酬を放棄。「てめぇ!表に出ろ!!」「望むところだ!」となり、アーウィン様の初日の授業は、クライヴ兄様をアシスタントとした、演習場での『攻撃魔法の実演』と相成った訳なんです。まあ、クライヴ兄様も言っていたけど、実際は『実演』と言う名のガチバトルだったんだけどね。
その『攻撃魔法の実演』だけど……。真面目に凄かった。
なにが凄かったって、実演前に演習場で、アーウィン様が上着とベストとシャツを脱ぎ捨て、上半身を露出したところですよ!!
いきなり飛び出した魅惑の胸筋と腹筋、ついでに何故かチラ見えしている鼠径部に、まず私の鼻腔内毛細血管が決壊した(無念!)
ってか!その流し目!なにげにアピールしています!?していますよね!!?
しかも、「「「きゃー!!♡♡♡」」」と黄色い歓声というか悲鳴を上げながら、シャーロット様、エマ様、クロエ様が卒倒というカオスが発生!!ああっ!い、いつの間にか集まっていたご令嬢方がアーウィン様の色気に被弾し、バタバタと倒れていってるー!!アルバ女子でも、この色気には耐えられなかったかー!!?
「なにしやがる!この『歩く強制猥褻』がー!!」
……と、セドリック達に慌てて介抱されている私をしり目に、クライヴ兄様大激怒!……しかし。
「だから、その蔑称やめんか!!……これは、私と君が本気でやり合ったら確実に服がズタボロになるだろうから、苦肉の策だ!……おや?そうか。君の身体は衆目に晒す程度ではなかったか。それは済まなかった、配慮に欠けていたよ」
と、アーウィン様が「プークスクス」と、クライヴ兄様を挑発。
「……あぁ……!?」
見事、アーウィン様の挑発に乗っかったクライヴ兄様、勢いよく上着、タイ、シャツを脱ぎ去った!!
これまた、アーウィン様に負けず劣らずの見事な上半身に、鼻息荒く復活していたシャーロット様方やご令嬢方が再び撃沈!ご令嬢方の婚約者や恋人、大激怒!私の鼻腔内毛細も再び決壊!!……とまあ、しょっぱなから不幸な事故が発生したわけです。うん、良いものを見ました。
……って、オ、オリヴァー兄様!?麗しい黒曜石の瞳から光が消えております!!だから、あれは事故だったんですってば!不可抗力です!!え?喜んでいる時点で既に有罪?そんなー!!でも、ごめんなさい!!
まあ、それは横に置いておいて……。クライヴ兄様とアーウィン様による『攻撃魔法の実演』は、真面目に凄かった!
アーウィン様は元々、強力な『水』の魔力を有するヴァンドーム家の直系って事に加えて、水の大精霊たる奥方様の血を継いでいる。それゆえ操る水が、まるで生き物のように微細な動きを繰り広げ、的確にクライヴ兄様の僅かな隙に容赦なく襲い掛かってくるのだ。しかもフィン様の闇の触手ばりに無数に。
『水』属性って、穏やかそうなイメージとは違い、実は最も攻撃力や破壊力に特化している属性なのだ。自然災害で最も恐ろしいのは『水害』と言われているし、その形状を『霧』や『氷』に変化させる事が出来る。しかも質量や形状を変える事で攻撃力も増す。そんな最凶な属性に膨大な魔力が加わったら……それはもう、お察しレベルの破壊力となるのである。
そしてなにが恐ろしいって、対するクライヴ兄様の方も、その強力な『水』属性の魔力保持者だって事なのである。
しかもクライヴ兄様は、あの魔力、体力共に化け物級とされているグラント父様の資質を全て受け継いでいる超サラブレッド。そのうえ、やはりグラント父様同様、『水』属性の魔力系統でも亜種とされる、『氷』の魔力属性の持ち主なのである。
縦横無尽に迫る、南国の海の色のようなアーウィン様の『水』の攻撃を氷の障壁で防ぎ、身体にぶつかる瞬間、まるでダイヤモンドダストのように凍らせ霧散させる。『水』と『氷』のぶつかり合いが、まるで壮大なスペクタクルショーのように美しく煌めく。
前に聞いた事があるんだけど、『氷』属性は、一般的な『水』を用いた魔力操作の汎用性はごく一般的でも、それを補ってあまりあるほど攻撃力が高いのだそうだ。
それゆえ『氷』の魔力操作を重点的に極めているグラント父様は、たとえ大精霊血脈であるアーウィン様が相手であっても、余裕で勝てるらしい。……というか、王家直系のお一人である『水』属性をお持ちのフェリクス王弟殿下にも負けた事がないそうなのだ。それを聞いただけでも、『氷』属性を極めた者がどれほど恐ろしいのかがよく分かる。
つまり何を言いたいかというと、このまましっかり修行して『氷』の魔力を極めていけば、クライヴ兄様もグラント父様ばりに無敵になるんじゃないかという話なんです。
そんな二人の『攻撃魔法の実演』という名を借りたガチバトルなんて、もう命を賭けた戦いと言っても過言ではなかったわけで……。クライヴ兄様は「決着がつかなかった」って言っていたけど、多分、あのまま攻撃魔法での戦いを続けたら、自分達だけでなく演習場もえらい事になっていた筈だ。
クライヴ兄様とアーウィン様もそれが分かっていたから、暗黙の了解を交わして肉弾戦に移行したんだと思われます。まあ、最終的には教授達や学院に潜んでいる王宮の『影』の皆さんが、総出でクライヴ兄様とアーウィン様を引き剥がして『攻撃魔法の実演』は終了と相成ったのでした。
因みにですが二人とも、学院を騒がせた罰として、今日一日治癒魔法で傷を癒す事を禁じられたそうです。
……でも流石はクライヴ兄様。怪我だらけなのに男ぶりが上がっている。……いや、寧ろいつもの冷たい美貌に野生的な男の魅力が滴り落ちるかのよう……って、オリヴァー兄様!顔の上半分に影が差しています!!い、いいじゃないですか!褒めているのはアーウィン様ではなく、自分の婚約者なんですよ!?え?自分の腕の中にいる間は、他の男の事を考えるのも見るのも禁止?オリヴァー兄様、なんて狭量な……!!
「本当よねー!そんな事していたら、いずれ筆頭婚約者の座から転がり落ちちゃうわよ?」
――んん!?……あーっ!奥方様!いつの間に私の膝の上に!?あっ!オリヴァー兄様のこめかみに、でっかい青筋がっ!!
「……クライヴ。どこかの爬虫類が紛れ込んだようだ。中庭の噴水にでも捨ててきてくれる?」
「了解した」
オ、オリヴァー兄様!貴方も爬虫類呼びを!?って、クライヴ兄様が私から奥方様を剥がそうとしてるけど、奥方様がスカートから剥がれない!奥方様、いつも思うんですが、ひょっとして奥方様の甲羅って吸盤機能が付いてたりします!?
「母上、いつの間にこちらにいらっしゃったんですか!」
クライヴ兄様が、私のスカートからなんとか奥方様を剥がそうと奮闘している間に、ベネディクト君が登場した。おぉぅ……。いつもながら、アーウィン様……というより、ヴァンドーム公爵様によく似た面差しと、とても年下には見えない引き締まった体躯ですね。
ベネディクト君は私と視線が合うと、凄く嬉しそうな笑顔を浮かべた。……くっ!アーウィン様ばりの美貌が目にぶっ刺さる!
「ああ、エレノア嬢。ご機嫌麗しゅう」
「あ!ベネ……いえ、ヴァンドーム公爵令息。お、お久し振りです」
「エレノア嬢。またそのような他人行儀な……。どうか私の事はベティ……いえ、『ベネディクト』と名前でお呼びくださいませ」
おおおっ!と、年下少年のあざと可愛い小首傾け攻撃キター!!それと同時に、うちの婚約者様方からも暗黒オーラが噴き上がったー!!
「ベネディクト・ヴァンドーム。親をダシにしてエレノアに粉かけてねぇで、さっさとお前の製造元を回収しろ!」
リ、リアム!仮にも大精霊様を『製造元』ってあなた……あ!奥方様が「まったく、失礼な子達ねー!」って、プンプンしながらヒレ振ってる。可愛いんだけど、その隙を逃さずクライヴ兄様が奥方様を引き剥がすのに成功!奥方様、最後の抵抗とばかりにジタバタしている!
あ、因みにですが、アーウィン様は今日一日、私と接触禁止になったので、ちょっと離れた席からこっちを見ています。あっ!目が合った!うわっ、手を振ってる!クライヴ兄様ばりに傷だらけだけど、やっぱり男ぶりが上がって……いかん。これ以上見ていたら、今現在、私を膝抱っこしている大魔神様に後で何をされるか分からない!!
「エレノア嬢」
「え?」
豊かなバリトンボイスに顔を上げる。するとそこには。
「――ッ!!」
怜悧な美貌に甘い笑顔を浮かべたジルベスタ様が立っていたのだった。というか、なぜ皆さん気配を殺して近寄ってくるんでしょうかね!?
二つ名の面目躍如とばかりに、無事(?)エレノアの鼻腔内毛細血管を決壊させたアーウィン様と、追い打ちをかけたクライヴ兄様でした。……なんか一連のやり取り、グラント父様のグラント父様露出事件とパターンが似ている。クライヴ兄様、まさかの隠れ脳筋疑惑浮上!
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次回更新も頑張ります!




