聞いてませんけど!?
『この世界の顔面偏差値が高くて目が痛い』8巻発売中です!
ご購入くださった方々、そして感想をくださった方々、本当に有難う御座いました!
特典SSは以下のとおりとなっております。本編では語られない裏エピソードとなっておりますので、興味のある方は是非、購入をご検討くださいませ!
◆書籍書き下ろしSS:『●●の精爆誕!』
◆電子書籍書き下ろしSS:『紅の宝玉は最愛の胸に抱かれ眠る』
◆TOブックスオンラインストア特典SS:『白ウサギは優しい世界でまどろむ』
◆シーモア特典SS:『ダンジョン妖精は過去に思いを馳せる』
※ジュニア文庫1巻も予約販売中ですので、宜しくお願い致します!
非常に濃いお話し合いから一日経過した翌朝。今現在、私は王立学院の制服に身を包み、王宮内にある転移門が設置された部屋の中におります。
そう、国内の不穏分子や貴族達の粛清にもめどが立った結果、期間限定の籠の鳥も解除され、遂に今日から学院に復学するのであります!
クロエ様方や、仲良くなったクラスメート達にも会えるのが、今からとても楽しみ……なんだけど。私の不在を察したユリウスに、悲しい瞳で声も無くポロポロ泣かれたのは、ギャン泣きされるよりも地味に堪えました。
ユリウス、お姉ちゃん学院が終わったら寄り道せず、速攻帰るからね!
「さあ、エレノア。こちらの魔法陣に乗って」
「は、はいっ!」
私は緊張で強張った表情を浮かべたまま、アシュル様の傍へと向かった。
『……う~ん。私が『聖女』になって以降初めての学院だから、嬉しいと同時に不安感が……』
「エレノア、緊張している?」
「大丈夫だ!昨日学院長である大叔父上が全学院生に向けて、『バッシュ公爵令嬢には、あくまで学院の一員として接するように』ってお触れを出しているから!いきなり跪かれたり祈られたり号泣されたりする事は無い筈だ!……多分」
「セドリック、リアム……。うん、有難う!」
でも、「絶対」じゃなく、「多分」なんだね。
「エレノア、そもそも『聖女』が、貴族とはいえ一般人の近くでウロウロしている事自体が異常なんだ。周りの連中の言動がおかしくても、それはどうしようもない事なんだから、いちいち動揺すんじゃねぇぞ?」
「そうだね。こんな状況下でも学院に通えるのは、彼らの協力あっての事だ。だからたとえ涙ながらに祈られても、微笑んで頷くぐらいの寛容な態度を見せる事が、彼らに報いる事だと思うよ?」
「ク、クライヴ兄様。オリヴァー兄様……」
セドリック達の励ましと違い、兄様方は私が『聖女』になった事で起こる(であろう)現象に対しての心構えを説いてくださった(というかクライヴ兄様、ウロウロって、まるで珍獣のような表現やめてください!)。
――うん、確かにそうだよね!
帝国と冷戦状態になっているうえ、今まで色々と裏で画策してきたであろう、『転移』に特化した魔眼を有する第三皇子セオドア(と推測される)が私を狙っている今現在。最大級のトラブルメーカーと化した私が学院に通えるのも、皆様の温かいご厚意ゆえなのだから。
それに『聖女』は誇張でもなんでもなく、真に女神様の御使で、未確認生物並みにレアな存在。それが『同級生』だったり『後輩』だったり『先輩』だったりするなんて、普通だったら有り得ない事態だからね。しかも、当たり前のようにそこらをウロウロしているんだから、確かに皆、挙動不審になるってもんでしょう。
それに私も『聖女』として表舞台に立つと腹を括ったんだから、泣かれようが拝まれようが、笑って受け止める覚悟は出来ている。……でも覚悟をしていたとしても、鷹揚にふるまえるかどうかは別である。多分だけど、最初のうちは皆様と動揺合戦する事になるんだろうな。
でもね、ゴリラもオカピも、昔は未確認生物だと思われていたんだけど、今は地球上で共に生きるありふれた(?)仲間になっているんだから、いずれは私もそんなありふれた(?)存在に……。
「いや、なれねぇと思うぞ?」
「共に生きられても、ありふれた存在にはならないよね。というか、ゴリラとオカピってなに?」
「儚い夢を見ていないで、現実を見ろ、馬鹿者が!」
だーっ!!ディーさんにフィン様、そしてマテオ!私の心を読んだ絶妙な合いの手、今は要りませんから!!因みに、ゴリラは前世における最大の類人猿で、オカピは生きた化石です!!
あっ!アリアさんとアシュル様が、「聖女が未確認生物……」って言って額に手を当てている!す、済みません、思わずつい……!それだけ珍しい存在って言いたかっただけなんです!
「さあ、もうそろそろ行かないと。生徒達や教員達が首を長くして待っているだろうからね」
そう言うと、オリヴァー兄様は私達を魔法陣に誘導しながら、自分も当たり前のように魔法陣の中へと入ってきた。……あれ?なんで?
あ、ひょっとして学院まで送迎してくれるのかな?うん、そうだろう。元々凄く心配性な人だし、いくらクライヴ兄様やセドリック達がいるからって、心配は尽きないだろうし、送迎ぐらいしようとするよね。
「……エレノア、済まない。僕達の力が及ばず……!」
「色々ビックリするだろうが、負けるなよ!?というか、何されてもグラッとすんじゃねぇぞ!?」
「そこら辺は、その万年番狂いが死守するだろうけどね。というか、そうじゃなかったら絶対僕が阻止していたけど!」
「殿下方、お任せください。僕の命に代えてでも、あらゆるものからエレノアを守り抜きます」
「???」
アシュル様方とオリヴァー兄様の言葉に首を傾げ、クライヴ兄様の方にチラリと視線を向けると、クライヴ兄様は思いきり複雑そうな顔で首を横に振っていた。
ついでに、セドリックは物凄い困り顔で苦笑しているし、リアムとマテオは物凄いしかめっ面している。……え?なんで?
「……まあ、学院に行けば分かると思うわよ?さ、そろそろ行かないと遅刻しちゃうから。皆、行ってらっしゃい!」
そんなアリアさんの言葉を最後に、周囲が白い光に包まれていった。
◇◇◇◇
そうして、周囲を包んでいた白い光が晴れていくと……。そこには、学院長(純正王族。国王陛下方の叔父上様)を筆頭に、教職員一同、学院生ほぼ全員、警備騎士様方&学院で働く様々な職種の方々が一堂に整列し、貴族の最高礼&最高位へのカーテシーを行っていた(ひぃぃぃ!)。
し、しかも!騎士様方は騎士の礼だからいいけど、一般職員の方々の中には土下座している人がいるー!!やめて!私の為に土下座しないで!!
「……大叔父上……いえ、学院長。確か先日は貴方自ら、仰々しい挨拶は無しと通達された筈では?」
学院長様は顔を上げると、あわあわしている私と胡乱な眼差しを向けるリアムを見ながら微笑みを浮かべた。
「ふふ、そう言うな。『聖女』様は我々アルバ王国国民全ての敬愛の対象。最初だけでも、我々の敬意を示しておきたいのだよ。無論、これ以降はできる限り普通の学院生として接するようにするので、今だけは大目に見てもらいたい」
学院長様、今「出来る限り」って仰いましたよね!?そこは「バッチリ任せて☆」って言いましょうよ!?あっ!華麗に目を逸らした!!王家直系様ー!!
まあね、多分だけどこれって、学院長様なりのガス抜きだとは思うけど……。あ、クライヴ兄様が頷いている。やはりそうでしたか。……え?クライヴ兄様、どこを指差して……って、あっ!!皆が礼&カーテシーしたままだった!
「み、皆様方!どうか顔をお上げくださいっ!!……こっ、心のこもったご挨拶を有難う御座いました!皆様の学友として学院に戻ってこられました事、望外の喜びで御座います。今後とも共に学院で学び、高めあってまいりましょう!!」
そう言った後、私も最高位のカーテシーを皆に披露する。……そして顔を上げるとそこには、老若男女問わず、物凄く目をキラキラさせた人の山が……!!
「くっ……!」
居たたまれなさと羞恥のあまり、思わず顔を真っ赤にして俯くと、「ぐはっ!」「くっ!」「ああっ!!と、尊い……!!」「聖女様っ!!」という言葉と共に、バタバタッと人が崩れ落ちる音があちらこちらから聞こえてきた。せ、聖女の威光、恐るべし!!
「聖女の威光より、素の恥じらいの方が威力が上なんじゃねぇのか?」
「うん。エレノアの場合、『聖女』だという事の方がオマケだよね」
ん?兄様方が、なにやら小声でヒソヒソしている。セドリックとリアムも頷いているけど、何話し合っているんだろうか?
すると、好々爺然とした微笑みを浮かべていた学院長様が、スッと表情を冷徹なものへと変え、口を開いた。
「さて、今ここに学院の全ての者達が集っているゆえ、今一度説明しよう。……今現在、このアルバ王国は長年の仇敵とも言える帝国と冷戦状態になっておる」
その瞬間、その場にピンとした緊張感が広がった。
「彼らは魔族の末裔であり、『魔眼』をはじめとした、我々とは別の系統の魔力……主に、禁忌とされる精神支配系の魔力を持ち、弱った心と邪な思いを操り利用する事を得意としている。そして今、奴等は『邪神』を封印したとされる『大地』の魔力を持つバッシュ公爵令嬢を執拗に狙い、始末せんとしているのだ。帝国は先日の夜会の時のように、今後もあらゆる卑劣な方法を取ってくるであろう」
夜会での出来事……。そう、彼等は躊躇する事無く、無関係の人々や国を巻き込み、攻撃してくるのだ。
「皆、気を引き締めよ!我が国を見守り導いてくださる女神様。その御使いたる『聖女』様を御守りする事は、すなわち女神様を御守りする事と同義。その事を今一度心に刻みこみ、一丸となって帝国に立ち向かうのだ!!」
「「「「「御意!!」」」」
あああっ!い、いきなり軍隊ばりの演説がっ!!他の皆様方も、規律正しき軍隊のように良いお返事をっ!!
うう……で、でも有難う御座います皆さん。私もこの国とこの国に住まう全ての人達の為に、自分が出来る事を精一杯頑張っていきます!!
「……さて、それに差し当って、『聖女』たるバッシュ公爵令嬢の身辺強化を図る。オリヴァー・クロス伯爵令息、前に」
「はっ!」
ん?オリヴァー兄様?
「皆に紹介しよう。彼、オリヴァー・クロス伯爵令息は、本日より私の補佐役として学院に在駐する事となった。まあ、初年度の生徒達以外には、彼についての詳しい説明は不要だな」
「オリヴァー・クロスです。またこの学院に戻る事が出来るとは、望外の喜びです。これからどうぞ、宜しくお願いいたします」
って、えええーーっ!!?オ、オリヴァー兄様!?あっ!!だ、だから私の学院復帰、絶対に反対すると思っていたのに、あっさり承知したんですね!?
ニッコリと、絶世の美貌に極上の笑顔を浮かべたオリヴァー兄様に対し、女子生徒や初等学年の生徒達からは黄色い歓声が。そして、その他の男子生徒達からは「げっ!」「なんでっ!?」「嘘だろ!?」といった、悲愴な声が次々と上がった。
「更に!数名の教員が退職した空席を埋める為に、新たな教員を迎える事となった。二人とも、こちらへ来て挨拶を」
そう学院長様から言われ、前に出てきたのは……。
「アーウィン・ヴァンドームです。休職中のベイシア・マロウ先生の代役として、攻撃魔法の教師として着任しました。今後とも、どうぞよろしく」
「ジルベスタ・アストリアルだ。退職されたミラレス教授の代わりに、魔術構築の教師として皆を導く事になった。よろしく」
『はああああっ!!?』
突如として現れた、三大公爵家の嫡男(しかも、どちらも絶世の美男子)達に、その場は「きゃー!!」とか「おおおー!!」とか、歓声と驚愕の声が溢れる。と、というかこれも警備増強の一環ですかー!!?いや、そもそも、貴族の最高峰である公爵家嫡男が揃って教師って、なに考えているんですかー!!?
お二人は皆に向けて挨拶をした後、クルリと私の方を振り向いた。
夜会の時のように絢爛豪華な礼服ではなく、他の先生方のように機能重視な貴族服を着ていらっしゃいますが、その王族の方々や兄様方に負けず劣らずな美貌の所為で、全然教師っぽくない!
そんなお二人は私に対し、蕩けるような極上の笑顔を浮かべながら貴族の礼を執った。
『ふぐっ!!』
ボンッと顔が茹でダコのように真っ赤になってしまった私に対し、兄様方やセドリック、そしてリアムとマテオの背後から暗黒オーラが噴き上がった。ひぇぇっ!ふ、不可抗力です!!。
『あっ!?』
転移門でこっちに来る前のアシュル様方のお言葉って、これの事を言っていたの!?……ってちょっと待って!マロウ先生の代わりって、ひょっとしてアーウィン様が私達の担任!?
「……クライヴ、そしてセドリック。不覚を取らないようにね」
「おう、任せろ」
「兄上、お任せください」
……オリヴァー兄様。もしかして、帝国から私を守るというより、アーウィン様方から私を守る為に学院長補佐になったとか?……いや、そんなまさかね?
王家とアイザックパパン、奥方様とアストリアル公爵様にごり押しされたもよう。
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次回更新も頑張ります!




