気が付いた可能性
『この世界の顔面偏差値が高くて目が痛い』8巻発売中です!
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結論から言うと、スワルチ王国は完全にアルバ王国に屈し、属国となる事を了承したんだそうだ。
そこら辺を詳しく説明すると……。
まず使節団(&罪人達)は、船でスワルチ王国に向かった。これは、フィン様がまだスワルチ王国に行った事がなかったので、転移門が作れなかったからである。
因みに大精霊である奥方様が、水力とついでに風力を操って、ウォータージェットのように海上を爆走した結果、船は半日でスワルチ王国の港まで到着したそうです。
でもってその後は、「最初が肝心!」と、グラント父様が古龍にデーヴィス王弟殿下、フィン様、ヴァンドーム公爵様と奥方様、そしてスワルチ王族御一行様&ダビデ大神官を乗せ、王宮までかっ飛ばした……らしい。
いきなり巨大なドラゴンが飛来した事で、スワルチ王国の王都民はさぞ阿鼻叫喚だった事であろう。
王宮では、既に潜伏していた『影』達により魔導通信が繋がり、ホレイシオ殿下によって、ある程度のあらましを説明済だった為、王妃様とその兄君である宰相様を筆頭に、王妃派の重鎮達が平伏して使節団を迎え入れたのだそうだ。……うん。大国の王族だけでなく、女神様の使徒たる大精霊までもがいるんだもん。そりゃあ、そうなりますよね。
ホレイシオ殿下の言葉を、全く信じようとしなかった国王や第一側妃、半信半疑だった家臣や貴族達も、顔面凶器ならぬ超大物達が、まさかの古龍に乗って登場した事によって度肝を抜かれ、相当数が腰を抜かしてしまったそうだ。
それでも、変わり果てたセラフィヌ殿下とセレスティア殿下の姿を見た国王と側妃、側妃派の重鎮達が、半狂乱となって騒ぎ立てたそうなのだが、怒った奥方様が、「やかましい!」と一喝した後、全員を球体状の水牢に封じ込めてしまったとの事。
それにより、スワルチ王国の王侯貴族は全員心が折れ、陥落。改めてホレイシオ殿下が事のあらましを説明した事により、己らの非を全面的に認めたうえで、改めてアルバ王国への謝意と恭順を示したという。
そして諸悪の根源……親バカならぬモンスターペアレントの現国王とその第一側妃ですが、彼等は古龍襲来により王宮へと詰めかけた王都民の前で、自分達が画策した全ての罪を告白させられたとの事。……つまりは公開処刑ですね。
アシュル様によれば、「一言でも虚言を口にした時点で、リュエンヌ殿の制裁が発動するって脅されていたらしいから、非常に素直に土下座したらしいよ」だそうです。まあ、最初に水牢に入れられた時点で心が折られたんだろうけどね。
当然というか、それを目の当たりにした民衆は大混乱に陥ったらしい。
うん、そりゃそうだよね。
帝国と裏で繋がっていた大神官が、己の権威を高める為に、第二王子を次期国王にしたかった国王と側妃と手を組んで、王女を『聖女』にでっち上げた。
あげく、その偽聖女である王女が、呼ばれてもいないのにアルバ王国にわざわざ行って、よりによって本物の『聖女』(まあ、私の事ですが)を偽物呼ばわりしたって言うんだから。
しかも、偽物呼ばわりした『聖女』を帝国に売り渡そうとした挙句、真の偽聖女である自国の王女が『聖女』の殺人未遂までしちゃった……なんて、普通は信じないよね。
というか、どんだけ証拠があっても信じたくないだろうし、いきなりやってきた大国が嘘八百を並べ立てて、国を乗っ取りにきたんだって思っちゃうかもしれない。
「うん、実際そうなったんだよね。だから大騒ぎになったところで、デーヴィス伯父上と僕が国王達と代わったんだ」
フィン様によれば、どうやらその謝罪会見は、王宮のバルコニーからではなく、王宮の前に舞台を設置し、かなり民衆と近い距離で行われていたらしい。
それゆえ、突然間近でアルバ王国の直系王族という最終顔面凶器を目にする事となり、結果、荒ぶっていた民衆は波が引くように口を閉じ、魂が抜けたかのように呆けた表情になってしまったんだそうだ。
そこでデーヴィス王弟殿下が、その精悍な絶世の美貌と、セクスィー極まるバリトンなイケボで、夜会で起こった騒動の数々を朗々と説明した。そしてフィン様はというと、拡声魔法の術式を使い、デーヴィス王弟殿下の演説を、広場……どころか、王都から遥か離れた場所の人にまで聞こえるように大々的に拡散したんだとか。……しかもしっかり、鎮静魔法を上乗せして。
そしてすかさず、満を持して登場したのがカメ……いえ、奥方様だったんだそうだ。
スワルチ王国の皆様は、王家直系に勝るとも劣らぬヴァンドーム公爵様の登場にまたしても呆け、更には腕に大切そうに白いカメを抱いているというミスマッチ感に目を丸くしていたそうな。
……奥方様、またごり押ししましたね。多分だけど公爵様の目、夜会の時のように、死んだ魚のようになっていたんだろうな。
――で、夜会でもスワルチ王国の謁見の間でもやったように、奥方様はカメの姿から、大精霊の姿に変化した。
その女神様もかくやという程の絶世の美女っぷりと、カメから人間の女性の姿に変化した衝撃。そして、大精霊の面目躍如とばかりに繰り広げられた、幻想的な魔法の数々(空に様々な魚を回遊させたり、水飛沫で巨大な虹を作ったり)に、遂に民衆は自分達の国の王家のやらかしが本当であったと悟ったらしい。
その結果、「……え?うちの王族、そんなヤバい事したの!?」「あの超大国であるアルバ王国を敵にまわしたって……スワルチ王国、滅びるの!?」と、別の意味でパニック状態になったと……。まあ、そりゃそうなるよね。
その機を逃さず、デーヴィス王弟殿下が畳みかけるように、『アルバ王国は今回の騒動の首謀者達の処断を望むものの、スワルチ王国そのものを罰するつもりは無い』と宣言。
更には、『何故そこに至ったのか。……それは、スワルチ王国全ての民の命を救わんと、たった一人で罪を犯した自国の王族達を諫め、その身と命を懸け、我が国に直訴したホレイシオ殿下に感銘を受けたからである。ゆえに我らは、スワルチ王国を自治権を残したまま属国化し、ホレイシオ殿下を次期国王とする事で、矛を収める事にしたのだ』と、続けたのだそうだ。
そしてここで、ホレイシオ殿下登場。
『スワルチ王国の民達よ!私はこの国の新たなる王として、父達や弟妹が犯した罪を一生をかけて償うべく、アルバ王国と偉大なる聖女様、そして、この国に生きる全ての民達の為に生きていく事を誓う!……だからどうか、今一度私と王家を信じ、この国の更なる発展の為に共に戦っていってほしい!』
『おお、ホレイシオ殿下!!』
『それでは本当に、この国は救われたのか!?』
『ホレイシオ殿下……いえ、ホレイシオ国王陛下!!』
『国王陛下、万歳!!』
民衆達は、絶大な人気を誇るホレイシオ殿下が次期国王に就任する事。そして属国になるとはいえ、強大な力を有した大国がホレイシオ殿下の後見になる事を知り、最終的には大歓喜し、お祭り騒ぎとなったようだ。その様はまさに、地獄から天国といった感じだったそうな。
……なんという、スマートかつドラマティックな属国化!流石はアルバ王国が描いた筋書きである。
「……まあ、そういう訳で、元国王と側妃は諸々の権力の譲渡が終わり次第、大精霊であるリュエンヌ殿によって刑が執行される事となるだろう」
フィン様による、スワルチ王国でのあれこれに関する説明が終わり、再びアシュル様が口を開いた。
なんでも、一番重要な国政の引き継ぎなどは、ホレイシオ殿下の生母である王妃様と宰相様がいるので、わざわざ国王が係わらなくても全く問題ないそうです。
「あの国、賢妃と宰相でもっていた訳だ」
「国政よりも美人の側妃との色欲にかまけてたんだろ?」
「うん。流石はあの脳内お花畑な兄妹の父親だけあるよね」
クライヴ兄様、ディーさん、フィン様が好き放題言っているけど、私もちょっとそう思ってしまいました。いやまあ、色々あったからね。
因みにだけど、ダビデ大神官や今回の騒動に密かに加担していた第一側妃の陣営の多くは、既に処刑されたのだそうだ。
「まあ……。処刑といっても、あっさり死ねた訳ではないんだけどね……。なんせ、リュエンヌ殿が執行されたから」と、アシュル様がポツリと漏らした言葉に、背筋に冷たいものが走る。
『毒杯や断頭台ではなく大精霊の手に委ねられた……ってことは、ひょっとして……』
……なんか、考えてはいけないような気がするので、敢えてそこはスルーさせていただきます。
「……アシュル殿下。それで、スワルチ王国に『道』はあったのでしょうか?」
「ああ。予想通り神殿の中にね。しかも呆れた事に、女神様の像が安置されている祈りの間にあったようだよ」
『ん?「道」って……?』
飲んでいたカップをソーサーに置き、オリヴァー兄様がおもむろに口にした『道』という言葉。そしてそれに対し、アシュル様が告げた内容に首を傾げる。
「……尤も、残っていたのは僅かな残滓だけだったそうだ。フィンでなければ分からなかった程、微量だったそうだよ」
不思議そうな顔をした私に対し、オリヴァー兄様が「エレノア、『道』とは、『転移門』を使った時に出来る通り道の事だよ」と教えてくれた。
――あ、そうか!『転移門』の『道』……!!
なんでも、『転移門』のような高度な魔法を使った場合、必ずそこに痕跡が残されるのだそうだ。そして一度『転移門』を使って『道』を作ると、そこを通じて容易く行き来が出来るようになるんだとか。
今回、スワルチ王国に帝国がどうやって秘密裏に入り込んだかの調査を行い、『転移門』で『道』を作ったと、ほぼ断定されたのだそうだ。
『……って!今更だけど、他国……というか帝国がもし、アルバ王国内で『道』を作ったりしたら……!?』
認めたくないけど、あの国は長い年月『異世界人召喚』を行なう事が出来る程の強大な魔術大国なのだ。改めて考えてみたら、物凄くヤバイのでは!?
「……エレノア。帝国はこの国に『転移門』を設置する事が出来ないんだよ」
「え!?それって、魔導師団を使って、国全体に結界を張っているんですか?」
私の言葉に、オリヴァー兄様が首を横に振る。
「いや。それをやろうとしたら、僕の父上クラスの魔導師が、最低十人以上必要になるよ。そうじゃなくてこの国には、『女神様の誓約』があるから……ね」
「あ……!」
そうだった!
この国で『転移門』を作る事を許可する事ができるのは、生まれた瞬間『女神様の誓約』という、私利私欲を禁ずる『血の誓約』が刻まれるとされる、王族の血を継ぐ直系の者達だけ。
しかも厳密に言えば、その直系の中から『国王』に選ばれた者ただ一人……って、以前オリヴァー兄様から教えてもらっていたんだった。
『確か、国王陛下が許可したうえできちんとした『誓約』を結べば容易く設置出来るけど、勝手に構築しようとすると、目的地に繋がらないどころか弾かれてしまうんだったよね』
で、弾かれないようにしようとしたら、物凄い魔力と複雑な術式を組み合わせなくてはならない。しかも悪意がある者ほど、成功する確率は低下するらしい。……そうなると、改めてケイレブって規格外の大魔導師だったんだなぁ……。
因みにフィン様は『転移門』作りまくり、使いまくりしているけど、全く悪意も下心も無いからセーフなんだそうで、オリヴァー兄様が「納得出来ない!」って、物凄くぶつくさ言っていたっけ。
……そうか。だから『魔族』の血を継ぎ、強力な『魔眼』を有する帝国の皇族や、デヴィンみたく、それに準ずる者達の誰もが、『転移門』を使ってアルバ王国に侵入出来なかったのか。
第二皇子も、自分が乗り込むんじゃなく、へーちゃんの精神を乗っ取って侵入してきた訳だし……。うん、そりゃあ悪意しかない帝国が『転移門』作れるわけが……。
『……あれ?ちょっと……待って!?』
いたじゃないか。オリヴァー兄様の防御結界をすり抜け、フィン様のように軽々と『転移』して、あのシリル皇子とフローレンス様を連れ、逃げおおせた男が。
『ひょっとして……!?』
バトゥーラ修道院にいきなり現れ、対峙したグラント父様が攻撃した一瞬後、姿を消したという襲撃者。
そして今回、スワルチ王国に『転移門』を作り、フィン様でしか気が付けない程綺麗に痕跡を消した帝国の使者……。
確信は無い。けれどもひょっとして……これらを成した人物は同一人物ではないか?と、フッとそう思ってしまったのだ。
帝国はこの国に『転移門』を設置する事が出来ない。それは『女神様の誓約』があるから。なのに……どうして……?
弾かれたように顔を上げると、まるで今気付いた事を肯定するかのように、その場の全員が厳しい表情を浮かべながら私を見つめていた。
「――ッ……!」
まるで、見えない目に見られているかのような錯覚に、ゾクリと背筋に震えが走った。
属国化については、筋書き通りにサクサク進んだもよう。
次回は波乱の学院登校再開です。
観覧、ブクマ、良いねボタン、感想、そして誤字報告有難う御座いました!
次回更新も頑張ります!




