期間限定『籠の鳥』
『この世界の顔面偏差値が高くて目が痛い』8巻予約発売中です。
特典SSは以下のとおりとなっております。本編では語られない裏エピソードとなっておりますので、興味のある方は是非!
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◆シーモア特典SS:『ダンジョン妖精は過去に思いを馳せる』
※ジュニア文庫1巻も予約販売中ですので、宜しくお願い致します!
「……国王陛下。発言をお許しください」
「うむ。許そう」
国王陛下のお言葉の数々……特に『帝国との全面戦争』の言葉にショックを受けていた私の耳に、オリヴァー兄様の声が聞こえてくる。
「これからエレノアを『籠の鳥』にすると仰いましたが……」
その言葉に私はハッと、オリヴァー兄様の方を振り向いた。
――オリヴァー兄様!?ひょっとして、国王陛下に抗議をするおつもりですか!?
た、確かに、バッシュ公爵家に缶詰め状態だったのが解禁された途端、今度は王宮に缶詰め状態っていうのは正直勘弁してほしいところですが、今は『邪神復活!』『帝国とあわや大戦!?』という状況なのですから、いくら私の為とはいえ我儘を言っている場合では……。
「それは一週間程度で終わりますでしょうか?」
――……はい……?一週間……?
「いや、流石に一週間は厳しいだろう。少なくとも二週間は覚悟してもらいたいところだ」
――……二週間……?え?こ、国王陛下……??
「御免ね、エレノア。暫く王立学院に通えないけど、課題を提出すれば出席した事になるみたいだから大丈夫だからね。あ、セドリックとリアム殿下も、特別措置として課題をこなせば出席した事になるそうだよ?実技の方も、ベイシア・マロウが請け負うらしいから頑張って!」
「げっ!!マロウが!?」
「こ、公爵様!それって、学院で授業を受けるよりも厳しいんですけど!?」
――ア、アイザック父様?それに、リアムにセドリック?
『籠の鳥』期間が二週間とか、王立学院の出席日数とか、なんか皆の言っている事が理解出来ないんですが!?というか私、今の今まで王立学院の事忘れていました!
「アイゼイア、それに皆、説明不足よ?ほら見なさい、エレノアちゃんがポカンとしちゃっているから!」
アリアさんがそう言った途端、全員がハッとしたような表情を浮かべた。
「あれ?オリヴァー。君がエレノアに言っていたんじゃないの?」
「公爵様こそ……というか、僕らがそれを聞いたのって、昼食会が始まる前ですよ?」
「いやいや、僕の方も、国王陛下方やメル達と打ち合わせが終わったばっかりだったからさ。君に言えば自動的にエレノアに話がいくかと思っていたんだよ。御免ね」
「そうでしたか。このような重要な事案は、エレノアの父君である公爵様が直接説明されるだろうと思い込んでおりました。僕の方こそ、申し訳ありませんでした」
アイザック父様とオリヴァー兄様が互いに謝り合っている。うん、思い込みって報連相の最大の敵だよね。……じゃなくて!誰か私にちゃんとした説明をお願いします!
「ああ、御免ねエレノア。君が『籠の鳥』になるっていう話だけど、それは『アルバ王国内の膿を取り除くまでの間』という、期間限定なものなんだよ」
「アルバ王国内の……膿?」
「うん、そう。まあ、ようは帝国が我が国に干渉する『道』を、虱潰しに潰していく期間……ってところかな?」
「は、はぁ……??」
アイザック父様の説明に首を傾げている私に、オリヴァー兄様が話しかけた。
「エレノア、フィンレー殿下が『空間転移』をする為の条件って、なんだか分かる?」
フィン様の空間転移……?えっと、それって……。
「行った事がある場所……?」
「そうだよ。『無から有』を生み出す事が出来ないのと同じく、フィンレー殿下がいかに『空間転移』の達人であったとしても、全く見ず知らずの場所に『道』を作る事は出来ないんだよ」
それから、オリヴァー兄様が説明してくれた話によれば、主要な場所……つまり、この王都や辺境の国境付近、そして上位貴族達の領地には、帝国からの『道』を作らせないよう、アリアさんの『光』の魔力を練り込んだ特殊な防御結界を張り巡らせていたんだそうだ。
更に、普段あまり目の届かないような下位貴族の領地や地方都市などは、アリアさんの『巡礼の旅』に魔導師団員が同行し、より強固な防御結界を展開しているんだとか。
その防御結界って、『魔眼』の力を使って『道』を作ろうとしたり、悪意を持って魔力を使う人間がいたりすると、自動的に結界に反応して魔導師団に伝わるようになっているんだって。……これって、自動セキュリティーシステム?所謂セ●ムですかね?
因みにだけど、諜報員全員弾いたりすると、貴重な情報を搾り取る機会が減るという事で、『アルバ王国いち長閑で穏やかな領地』と名高いバッシュ公爵領だけ、その自動セキュリティーシステムを甘くし、上手く誘導しておいて、イーサンとその配下達が入れ食い状態よろしく帝国の間者を捕らえていたらしい。
勿論、力の強い者が入り込めばすぐに分かるらしいんだけど、第四皇子のシリルがバッシュ公爵領に入り込めたのは、デヴィンの魔眼によるものだろうとの事。
……それにしてもバッシュ公爵領の罠仕様って、まるで台所害虫をホイホイするアレみたいだな……。
「台所害虫をホイホイ……?」と、私の心を読んだオリヴァー兄様が呟く。あ、アリアさんが「そういえばそうね!」って顔でうんうん頷いている。
ここにきて、再び国王陛下が口を開いた。
「今回、あ奴らがヴァンドーム公爵領を襲撃した事により、長年監視対象だった貴族だけでなく、その配下や末端に至るまで、不穏分子を一網打尽にする事が出来た。よって、彼等の粛清と同時進行で、今まで見落としていた『道』を徹底的に潰していく。そして、アリアと共に、このアルバ王国全土に特殊な防御結界を張っていくつもりだ」
つまり、『セ●ム』ならぬ、自動セキュリティーシステムを全土に張り巡らせるって事ですよね?そして、「アリアさんが」って言っているけど、多分それを実行するのはアシュル様なんだろう。うん、確かにそれをするには一週間じゃ足りませんよね。
「でも、その期間中だけ『籠の鳥』になる……って事は、その後は私、普通の生活に戻ってもいい……という事なんですか?」
だって、帝国は『邪神』を復活させようとしているかもしれなくて、その上大陸を巻き込む戦争が起こるかもしれないのだ。しかも、私は遥かなる過去において、その『邪神』を封印した『大地』の魔力を持っている聖女……かもしれないのだ。
どう考えても、『籠の鳥』になるのに十分な理由だし、自分でも大人しくしているべきだと思う。……なのに、国王陛下方も父様方も兄様達も、誰もが優しい眼差しで私を見つめている。
「エレノアちゃん、この人が色々な事を言って驚いたでしょう?皆本当は事が決するまで、貴女には『邪神の復活』とか『大戦になるかもしれない』って事は黙っていようと思っていたみたいなの。でも私とリュエンヌ様がそれを止めたのよ。……だってエレノアちゃん、ただ黙って守られるだけなのは嫌でしょう?」
「アリアさ……大聖女様?」
私が名前呼びを言い直すと、アリアさんは「あら、残念!なんなら『アリア母様』でも良いのよ?」と言いたそうな顔で微笑んだ
「この国の男共は全員、『女性は大切に守るべきもの』って考えだけど、女性だって大切な相手や国を守りたいって思うものなのよ。それに、いくら頑張って囲って守ったって、自由を奪えば『心』は守られないわ」
「――ッ!」
アリアさんの言葉に息を呑んだ。
「だから、ある程度の危険を取り除いた後は、たとえ危険であろうとも、大好きな人達と一緒に戦う方がいいんじゃないかしらって思ったの。少なくとも、私はそうだしね!」
「そうよねー!私もアリアの言葉に賛成だわ!それに、私が受け継いだ記憶の中の『姫騎士』も、時の国王やその側近達と一緒に大暴れしていたわよ?……というか、なんなら一人で敵陣に突っ込んでたわね」
奥方様の言葉に、その場の男性達全員の視線が奥方様に集中する。
「リュエンヌ!その話は本当か!?」
「大精霊様!そこ、もうちょっと詳しく!!」
「というか、なんで今迄教えてくれなかったんですか!?」
おおっ!あの国王陛下までもが目の色変えている!やはりこの国の男性達にとって、『姫騎士』は特別な存在なんだね。
「あんたたち、落ち着きなさい!教えなかったというより、聞かれなかったから話さなかっただけよ!というか今の話、あくまで私が父から受け継いだ『記憶』であって、私が見聞きした事じゃないから!それにあの子の話は、女神様の『許し』があって初めて口にする事が出来るものなの!」
な、成程……。まあそもそも、奥方様大精霊だしね。ヴァンドーム公爵様に一目惚れして嫁になっただけであって、そもそも人間と交流した事なかったんだから、確かに話す機会なんてなかったよね。というか、『姫騎士』関連の話って、女神様の制限があったんだ。
私の視線に、いち早く我に返ったオリヴァー兄様が、自分の醜態(?)を誤魔化すように、コホンと一つ咳払いをする。
「まあ、そういう訳でね。大聖女様の進言もあって、僕らは君を『守る』だけでなく、君と『共に戦う』事に決めたんだ。……とは言っても、やっぱり目に見える脅威だけは取り除きたかったから、その間だけは『籠の鳥』になってもらうって事になったんだよね」
な、成程……。期間限定だったのはその為だったんですか。
「エレノア嬢。帝国との全面戦争になっても、我々は最後まで自国のみならず、他国や帝国の抑圧されている哀れな民達が犠牲になるのを防ぐ為に死力を尽くすつもりだ。だが、戦うと決めたからには君にも覚悟を決めてもらう。君の大切な人達を守る為にも、我々と共に戦ってほしい!」
「――ッ、はいっ!!」
国王陛下のお言葉に、私は力一杯頷いた。
確かに、帝国が本気になってアルバ王国に牙を剥いている今、覚悟は必要だ。「誰も傷付かない世界」なんて、幻想に近い事も知っている。現に、今迄帝国に関わって亡くなった人達や傷付いた人達も沢山いるのだから。
『……でも……』
以前だったら私をバッシュ公爵家で籠の鳥にしていた時のように、迷う事無く囲って守っていただろう人達が、私の心を守る為に、その気持ちを押し殺してくれた。そして、共に戦う事を選んでくれた。その事実が、こんなにも嬉しい。
「一緒に戦う事を選択する条件が、国中の害虫駆除って……。まあ、アルバ男相手なら、そこら辺が妥協点よね。でも、一番抵抗すると思っていたオリヴァー君が、割とアッサリ了承してくれて助かったわ」
「そうよねー!囲い込みが大好きそうな万年番狂いにしては、頑張ったわよねー!」
あっ!「うんうん」と頷いているアリアさんと、シレッと兄様の二つ名を取り出す奥方様を、微笑みながら見つめるオリヴァー兄様のこめかみにでっかい青筋が!
「うむ!では、うちの息子達も、エレノア嬢を守る為に張り付かせねばな!そうだ!なんなら、『籠の鳥』になっている間の慰めとして、エレノア嬢の傍に侍らすというのはどうだろうか?」
「あらっ!それ良いわねー!エレノアちゃん、胸筋だろうが腹筋だろうが、好きなだけ堪能してちょうだい!うちの子達も大喜びよ!」
「おおっ!それならば、うちの息子も喜んで贈呈しよう!エレノア嬢、うちの息子はああ見えて、ヴァンドームの子供らに負けず劣らずの良い身体をしている。きっとご満足頂けることだろう!」
公爵様方ー!!そして奥方様っ!!は、侍らすだの満足するだの胸筋だのって……!爽やかイケオジスマイルと天女の微笑を浮かべながら、なにを仰ってるんですかー!!?
ああっ!アシュル様方の背後から暗黒オーラがっ!!オリヴァー兄様と、ついでにクライヴ兄様とセドリックの青筋と暗黒オーラも半端ない事にー!!
その場の剣呑な空気にわたわたしていたその時、国王陛下の傍に音もなく一人の『影』が現れ、何かを耳打ちした。途端、国王陛下の眉根が寄る。
「アイザック、身内と関係者を連れ、ただちに細君の滞在している離宮へ行け。……どうやら彼女が産気づいたようだ」
「――ッ!分かりました!!」
――マリア母様が!?
国王陛下のお言葉を受け、父様方と兄様方、そして私が勢いよく席を立った。
アルバ男達の意識改革も、着実に進んでいっているもよう。
そして次回、エレノアの前世の知識がスパークする!(かも?)
観覧、ブクマ、良いねボタン、感想、そして誤字報告有難う御座いました!
次回更新も頑張ります!




