『大地』の聖女誕生
本日、『この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』8巻の予約販売が開始されました!今回も、それぞれの書き下ろしSS気合を入れて書いておりますv
詳細は活動報告に詳しく書いてありますので、興味のある方は是非!
――……一体、これはどういう状況なんでしょうか……?
私は周囲を見回し、ゴクリ……と、喉を鳴らした。
一面に広がる花畑。目の前にはツタ●カーメ●の棺のように野花人形と化して横たわるセレスティア殿下。……そして、こちらに向かって片膝突いたり跪いたりしながら、祈りを捧げている会場中の人々。……――一体全体、何がどうしてこうなった!?
『た、確かここって王宮の大ホールだったよね?野外じゃないよね?……でも、でも目の前に広がっているのは花畑なんですけど……!?』
しかも!ぺんぺんだけならまだしも、なんだってタンポポがこんなに咲き誇っちゃっているんですか!?あっ!スミレだ!!……わぁ……やっぱり野花だけど、彩りがグッと華やかになったわー!これも実は食用に出来るんだよね。昔セドリックが砂糖漬けにしてケーキの彩にしていた気がする。今度また作ってもらおう。お浸しもいいな~……。
――じゃない!!現実逃避している場合か!?
『ああっ!!よ、よく見たら、あちらこちらに穴が開いてるじゃないですか!!』
王宮は床一つ取っても希少な魔鉱石が使われているって聞いた事があったんですが!?それが何をどうしたら穴だらけになるっていうの!?……いや、ペンポポ+スミレの花畑が、『犯人はお前だ!』と、私を指し示している。
『うわぁぁぁっ!!庭園ならまだしも、アルバ王国の象徴とも言える王宮内で、破壊行為と植物テロを起こしてしまうなんて!!今度こそ、王宮の庭師さん達が暴動を起こすかもしれない!!いや、下手すれば極刑だ!?ひ、ひょっとして皆さんの今現在の行為って、そんな私の為に冥福を祈ってくれているとか!?』
「エレノア!!」
軽くパニック状態に陥っていた私の元に、先程まで国王陛下方の傍で片膝突いていたアイザック父様が駆け寄って来た。
「エレノア!!ああ、僕の最愛の天使!!怖かったね、もう大丈夫だよ。どこか痛いとこ……」
「と、父様!!御免なさい!!私……もう一生お小遣いもドレスも要りません!!全部この会場の修理費に充ててください!!」
膝を突き、泣きそうな表情を浮かべながら私を抱き締めようとしていた父様が、「は!?」と目を丸くした後、慌てた様子で私の両肩を掴む。
「ち、ちょっ!エレノア、落ち着いて!!」
「で、でも……それじゃあ到底足りませんよね!?そうだ!私、働いて返します!!今度作るフリーズドライの工場の袋詰め要員でも、エレマートの売り子でもなんでもやります!!……あの、出来れば時給はちょっと高くしてくださると嬉しいです!」
「ちょっと待ちなさい!!君が働く必要ないから!!安心しなさい、父様がちゃんと修理費を出します!!」
「で、でも!それではバッシュ公爵家の台所事情が!!」
「大丈夫だよエレノア!父様、腐っても公爵だからね!それぐらいの甲斐性はちゃんとあります!!」
「――ッ!頼もしいです!父様……!!」
「エレノア!そこまでにして!!そして公爵様!ちょっと落ち着きましょう!!」
「オリヴァー兄様!」
父様と、親子漫才のようなやり取りをしている間に、いつの間にかオリヴァー兄様が傍に来ていた!というか、クライヴ兄様とセドリックまで!!
「……ッ……!エレノア……!!」
オリヴァー兄様は父様同様、私と視線を合わせるように膝を突き、そっと両肩に手を置く。その黒曜石のような双眸は、まるで水を湛えたように潤んでいた。
「オリヴァー……兄様」
晴れた夜空のようなその美しさに釘付けになっている間に、身体をきつく抱き締められ、思わず目を見開く。
「……よく、頑張った……!!君の『浄化』は見事に成功したんだよ……!!ああ、でもそんな事はどうだっていい!……君が無事で……本当に良かった……!!」
「……オリヴァー……にいさま……」
兄様の言葉を受け、チラリと野花人形になっているセレスティア殿下へと視線を向ける。そこには、『妖精の輪』も黒い茨も、どちらも無くなっていた。
――ああ、そうか。私、助ける事が出来たんだ……。
ストンと、その事実が胸に落ちてくる。その途端、どっと疲労感が押し寄せてきて、急激に身体から力が抜けてしまった。
「エレノア!!」
そんな私の身体を、今度はクライヴ兄様がしっかりと抱き締めてくれる。
「……まったく……お前って奴は……!…………いつもそうだが……今回は真面目に肝が冷えた!お前と一緒にいると、真面目に寿命が削られちまう」
「クライヴ兄様……!ご、御免なさい!」
「許さない。……帰ったら、お仕置きな?」
「……はい」
私の身体を抱き締めるクライヴ兄様の背中に手を回し、服をキュッと掴んで目を瞑る。すると、身体を包み込んでいた温かさが一瞬無くなった後すぐに、別のぬくもりに包まれた。
「エレノア……!!」
「セドリック……!」
セドリックは私の名前を呟いた後、兄様方のように言葉を発する事無く、ただ力一杯私の身体を抱き締める。くっついている彼の身体が小刻みに震えているのを感じ、目頭が熱くなっていった。
「……ごめんね、セドリック……」
フルフルと、言葉もなく頭を横に振るセドリックの身体に、あまり力の入らない手で一生懸命抱きつく。
『……ん!?』
ふと、セドリックの身体の向こう側から見えるタンポポ達と目が合う。すると『やべっ!』『逃げろ!』とばかりに、次々と綿毛になっていくではないか!
「ち、ちょっ!まっ……!!」
これ以上、王宮内に植物テロを蔓延させてなるものか!!しかし、どうすれば!?そ、そうだ!祈ろう!!綿毛、滅せよ!!
「エレノア、ストップ!!」
「やめろ!祈るな!雑草が増える!!」
祈りのポーズに入ろうとした私を、兄様方が慌てて止める。というかクライヴ兄様!雑草ではなく、野花です!そこのところはお間違え無きよう。
「エレノアちゃん……」
優しい声に見上げてみると、アリアさんが優しく微笑みながら私を見つめていた。
「アリ……大聖女様!」
「……ッ……!よく……頑張ったわね。貴女は私の……ううん、この国の誇りよ!」
くしゃりと泣きそうになった表情を必死で堪えながら、アリアさんは床に膝を突きながら、私の身体を優しく抱きしめた。思わず私の涙腺も決壊しそうになった時、目の端に白く輝く神々しいカメが映った。
「!!?……お、おくっ!!」
「エレノアちゃん、やったわね!素晴らしかったわ!!流石は私の未来の義娘だわ!!」
そう言って、つぶらな青い瞳を潤ませながら、私とアリアさんの間に身体を割り込ませ、胸にヒシッと張り付くカメ。……いや、奥方様。
あまりの衝撃に、涙が引っ込んだのは有難かったですが……奥方様、なにやら言葉の最後に聞き捨てならない台詞があったような気がするのですが!?
アリアさんもジト目だし、兄様方やセドリックからも、凄まじい殺気が噴き上がっているんですけど!?というか貴女、それ言って兄様達に撃退されないよう、わざとカメになりましたね!?
「……エレノア」
アリアさんがさり気なく剥がそうとしても剝がれないカメ様を胸に張り付けながら見上げると、アシュル様、ディーさん、フィン様、リアムが傍らにやって来ていた。
アシュル様とディーさんは、ホッとしたような苦笑交じりの微笑みを浮かべ、フィン様は……ひえぇっ!!超絶無表情のまま、背後にうねる暗黒オーラ……というか、闇の触手背負ってるー!!怒ってる……怒っていますね!?
そしてリアムも、泣きそうな怒り顔でこっちを睨みつけていた。その瞳が『てめぇ……!後で覚えていろよ!?』と、恨み節を雄弁に語っています。……ご、御免なさいリアム。
「……よく……頑張ったね。君は母上の仰る通り、アルバ王国の誇りだ。……新たなる『聖女』よ。我ら王家直系全てを代表し、この場において君に最大限の敬意と永劫の愛を捧げる」
そう言うと、アシュル様を先頭に、ディーさん、フィン様、リアムが私に向けて片膝を折る。そして、騎士が忠誠の誓いを行うように、胸に手を当て首を垂れた。ええええぇー!!?こ、これって、公開プロポーズ!?
「……腹を括ったからには、もう大っぴらに僕らの気持ちを解禁させてもらうよ。宜しくね、エレノア。そしてオリヴァー、クライヴ、セドリック?」
顔を上げたアシュル様が、囁くようにそう告げると、非常に様になるウィンクを一発ぶちかまされ、私の顔がボフンと真っ赤になった。
「……そうきましたか……」
「転んでも、ただでは起きねぇな……」
「流石は王家直系……」
兄様方とセドリックがジト目になってアシュル様方を睨みつけているのが分かり、わたわたしていると、胸元の奥方様が、「ほらっ!貴方達もやっちゃいなさい!」と、アーウィン様方に向かってヒレをパタパタさせている。
ああっ!アーウィン様方がソワソワしている!!兄様方やアシュル様方もこめかみに青筋立ててます!!やめて!カメ……いえ、奥方様!!
あ、でも晴れやかな笑顔にでっかい青筋を立てた王弟殿下方に、「息子達の晴れ姿を邪魔すんな!」とばかりにブロックされている。……こんな時でも、アルバ男の戦いは待った無しなんですね!?
すると、ワァッ!と、会場中が震える程の歓声とどよめきが上がった。
「やはり、バッシュ公爵令嬢は姫騎士の生まれ変わりだったのか!!」
「新たなる聖女様の誕生だ!!」
「まさか、聖女様の御業をこの目で見られるとは……!!」
「ああっ!!姫騎士様!!一生付いていきます!!」
「エレノア様ー!!素晴らしかったですわー!!」
「ううっ……!!お、お嬢様……!!」
「お嬢様、マジかっけー!!!」
滂沱の涙を流す人達が続出する中、会場中が熱気と興奮に包まれていく。というか最後の台詞!!
ティル……。忍ぶ気がないんなら、いちいち天井裏に引っ込まないで、ずっと地上にいなさい!!
「皆の者。帝国による卑劣なる悪意を、バッシュ公爵令嬢がその身に宿りし聖なる力により、見事に退けた。その御業はまさに、救国の聖女たる『姫騎士』の名に相応しきもの。よって我が名、アイゼイア・アルバの名において、ここに『大地の聖女』の誕生を認める!!」
国王陛下の宣言を受け、再び会場中が割れんばかりの拍手と歓喜の声に包まれていく。王弟殿下方やワイアット宰相様、メル父様やグラント父様、ヴァンドーム公爵様やアストリアル公爵様までもが、温かい眼差しを私に向けている。
……ううう……。ま、まさかのお披露目会突入……!
しかも、『聖女候補』すっ飛ばして『聖女』認定されてしまうとは思ってもみなかったんですけど!?
……いやまあ、セレスティア殿下を救うと決めた時点で、ある程度覚悟はしていましたけどね。
【……けた……】
あまりの急展開に、心が追い付かずにわたわたしていた私の耳元に、一瞬『声』が聞こえてきた気がした。
でもそれは、父様方や陛下方の祝福する言葉に一瞬で掻き消えてしまったのだった。
あまりの惨状(?)に、現実逃避してしまったエレノアですv
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次回更新も頑張ります!




