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女嫌いの公爵様に嫁いだら前妻の幼子と家族になりました  作者: 青空一夏


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37 五歳児カップルを見習って!

 【侍女長視点】


 アリシア様はデュボア伯爵家のご令嬢です。とても可愛くて品のあるお嬢様で、幼いながらアベラール様をお慕いしているのがわかります。なぜって、それはもうアベラール様をキラキラした眼差しで見つめていらっしゃいますし、見事な刺繍の入ったハンカチを渡していましたからね。刺繍の柄はキーリー公爵家の紋章で、通常このような刺繍をしたハンカチを男性に差し上げる、ということは“愛の告白”なのです。


 デュボア伯爵家の奥様は義母の介護が大変になってしまい、なかなか外出もままならくなったそうですが、お姑様と仲が良かったので尽くしたいという素晴らしいお考えなのだそうです。そんなお優しい性格を受け継ぎ、ルカ様の刺繍の才能と美貌まで受け継いだアリシア様を、ジャネット奥様は大変可愛がっていらっしゃいます。


 今日も、アベラール様とアリシア様は庭園でかくれんぼして遊んでいます。見つける役目はフットマンの一人。どこに隠れているのかまるわかりのお二人は、とても近い場所に身を潜めておりました。アベラール様は見つかりそうになると自ら姿を表し、アリシア様が見つからないようにかばおうとする姿が、可愛らしくも男の子らしかったです。


「こっちには、アリシアはいないよ。さっきあかいバラのとこにいったかも」

「そうなのですね。かしこまりました。赤いバラのあたり……おかしいですね、誰もいませんよ。アリシア様がみつからないなぁ」


 フットマンは笑いを噛み殺して、アベラール様の作戦に引っかかったふりをしていました。


「うちのお坊ちゃんは、さすが騎士団長のご子息ですわね。女性を守ろうとする心意気が素晴らしい。このようなお小さい頃から、なんて立派な騎士道精神をお持ちでしょうか」

 私は思わず感嘆の声を漏らす。


 かくれんぼはその後しばらく続いて、お次は魔法で遊ぶことにしたようです。アベラール様は、ジャネット奥様から見よう見まねで覚えた水魔法で、リスやウサギを、アリシア様も氷魔法で子鳥や蝶をつくっています。


 その動物たちを追いかけたりして、ひとしきり笑い合うと、今度は静かに庭園を手を繋いで歩き出しました。

「キーリーこうしゃくけのバラって、すごくきれいね」

「ありがとう。でも、アリシアのほうがずっときれいだよ」

 にこにこと笑みを浮かべるアベラール様は、お気持ちのまま正直にアリシア様に向かい合っています。


「ほんと? ありがとう。わたし、アベラールさまがだいすきよ」

「ぼくも、アリシアがだいすきだよ」

「そしたら、おおきくなったらおよめさんにしてくれる?」

「うん。ぼく、おとなになったら、おむかえにいくよ」


 なんと婚約の話にまで、発展してしまいましたわ! 五歳児、恐るべし……


 そんなお子様たちとは少し離れた噴水のあたりでは、旦那様と奥様がお散歩をしていらっしゃいました。奥様がなにかの拍子でつまづきそうになるのを、旦那様が抱き留めます。そこまでは良かったのですが、奥様はサッサッと離れ旦那様も無言。旦那様は耳まで赤いし、奥様は平静を装っていながら瞳が潤んでおられました。


 なんでしょうね? こちらはおとなで、結婚までしていらっしゃるのに、まるで進展しないのです。どう見ても相思相愛だと思いますのに、お互いどうしたらこうも告白しないでいられるのかしら?


 やれやれ……旦那様もアベラール様を見習っていただきたいわ。

 私は今日も心のなかでため息をつき、そんなことを思ったのでした。




⟡┅┅┅━─━┅┄ ┄┅━─━┅┅┅⟡

※次回、第38話では王宮で魔力測定会が開かれ、思いがけない魔力暴走が発生します。そして第39話では、ついに子竜が誕生――!

この先もますます物語は盛り上がってまいりますので、ぜひ最後までお付き合いいただけますと嬉しいです(*^。^*)

ちなみにその後は、愚王の再登場や、聖女を操る陰謀なども……。全54話で完結です!

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