第三十五話:爺さんと剪定鋏
高枝切り鋏にしようかと思ったけど、持ちにくいんですよね、あれ。
ロイヤルファミリー(特に姫様二人)に名残惜しそうにされながら王城を後にしてルドミラール子爵家へ。まずフィリップ殿が出て来てエミリー嬢を抱き締めた。
「エミリー、王子様は優しかったかい?」
「えっとねー、まーごうかくてんかな」
なるほど、合格点か。というかエミリー嬢に選択権があるんじゃろうか?
「でもね、おじーちゃんのおよめさんになるからダメなの」
「……ゲン殿?」
「飴玉の他にカレーと干し柿も出したからのう」
「あれは確かにおいしかった……じゃなくて!王城で干し柿を披露したのですか? 我が領の特産品にもなり得たのに」
なんと、フィリップ殿も干し柿を狙っておったか。その割にはなんも言われんかったがのう。
「ゲン殿と領内に帰ってから相談しようかと思っていたんですよ……」
「それはまあ、すまんかったのう。まあ領の復興には相談に乗ってやるでな」
などと話をしながら翌日。ワシらはルドミラール領へと旅立つ事になった。メンバーはフィリップ殿、エミリー嬢、ギャリソンさん、クラリッサさん、ワシ。クラリッサさんは元々エミリー嬢と一緒に帰ることになっとって、そもそも王子の誕生会の準備の為に先行しておっただけなんだそうな。まあ乳母とか家庭教師なんじゃから本人と一緒に居るわな。
道中は特に特筆することも無く……いや、盗賊は二、三襲って来おったがバリアで助かったからのう。しかし、街中は騎士団が居るからええんじゃが、街道は盗賊たちがやりたい放題なんかのう?
「いや、主要な街道は騎士団が巡回しているんだ」
「そういう奴らは見とらんが?」
「それだけ我が領が見捨てられてるってことなんだ」
ふうむ? こりゃあハンスの身も危ないんじゃないかのう? 大丈夫じゃろうか?
「そうだな……帰ったら騎士団に派遣をお願いしてみよう」
「それがええじゃろうなあ。とはいえ、このままだと流通が滞るのう。盗賊を殲滅したいところじゃが……」
そしてワシらは捕まえた盗賊に聞いてみる事にしたのじゃ。今までの会話? 全てこいつらの目の前でやっとったんじゃよ。
「なあ、あんた。盗賊団の根城はどこにあるんじゃ?」
「けっ、殺されても喋る訳ねえだろ!」
「あまり手荒なことはしたくないが仕方ないのう」
異空間収納から取り出したのは剪定鋏。どうやらこの世界には刃物はあっても鋏は無いようなんじゃよ。ちなみにこの鋏は庭木を切るために買ったのであって、決して一緒についとった羽毛布団が欲しかったからではないぞい?
「な、なんだそれは?」
「これはのう、こう使うんじゃよ!」
そう言ってワシは近くにあった太い枝を切り落とした。うむ、しっかり研いでおったからスムーズに切れたのう。
「お主らの腕くらいなら簡単にちょんぎれそうじゃのう」
「ひいいいいい!?」
ワシは鋏をジャキンジャキンと動かしながらアジトの場所を聞いた。普通に切られたとか刺されたくらいなら言わんかったかもじゃが、得体の知れないもので切り離されるのは嫌じゃったらしい。素直に吐いてくれおった。
「どれ、じゃあワシが片付けて来るかのう」
「ゲン殿、お気をつけて……」
「大丈夫じゃよ。バリアもあるしのう」
言われた場所に進んでいくと声を掛けられた。
「おい、ジジイ、どこに行くつもりだ?」
「あー、この先の……アジトじゃったかのう?」
「なんで俺たちのアジトを知ってんだ! てめぇ、何者だ?」
「通りすがりのただのご隠居……いや、隠居はしとらんかったのう。ただのジジイじゃよ」
印籠もスケットさんカクシゴエイさんもおらんしのう。
「くたばれ!」
その男はワシに剣で切りつけてきた。もちろんバリアは張っとるよ。そりゃあまあ山道行くなら虫とかヘビとかおるかもしれんし、張るわなあ。
ガイン、と音がして刃物が折れた。そんなに脆かったんかのう?
「ひっ、ぱ、バケモノ……」
「まあ、待ちなされ。細かいところが分かりにくいから案内して貰えるかの?」
「ひぃー」
そのまま一直線に逃げてしもうた。あっちがアジトなのかの? ちょうどええから向かうかの。
そのまま進むと洞窟があった。中は暗そうじゃなあ。確か懐中電灯が……あったあった。工事用のヘルメットについたやつが良かったんじゃが生憎と必要なかったから買ってなかったわい。まあ、災害対策用に明るいのを買っとったからまあこれでええじゃろ。
洞窟の中はところどころ穴がわかれとってその穴の一つ一つに盗賊が五人ぐらいおって顔を出しては襲われる、を繰り返しとったんじゃが。まあ捕縛するロープとか……そういえばコードを縛る用の結束バンドがあったの? は? いや、ぼっちでもロックでもないぞ?
結束バンドを盗賊の両手の親指を繋げるように後ろ手に縛って……よし、まあ切る時は剪定鋏で切っときゃええじゃろ。




