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第十八話:爺さんと再び王都へ

ちょっと説明多くなったなあ。

「これは……食感が爽快ですな!」


 ワシのせんべいをつまみながら領主様……いや、チャールズと呼んでくれと言われておったなあ、が上機嫌でウイスキーを傾ける。ワシも嗜み程度でそこまでの飲兵衛ではないからそのまま譲っても構わんが。かと言ってこの様な現代技術の酒はイタズラに与えるものでは無い。


 大麦らしき穀物はあるのでそれを発酵させて蒸留させれば出来ると言っておいた。やる気に満ち溢れておったなあ。ついでじゃしブランデーも。むう、普段飲まんからブランデーは買っとらんかった様じゃな。まあ医者からも止められとったが。


 今? 今はそんなに身体の調子は悪くないみたいじゃ。なんか健康になった気がするんじゃ。気持ちよく酒を飲んだのは何十年ぶりじゃろうか。


「おじーちゃん、このパリパリしたのもおいしいね!」


 エミリー嬢もニコニコしながら食べておる。


「これも売れそうな気がするが……どうだろう、伯爵の所と私の所でこれを売り出しても構わないだろうか?」

「まあ、そんな難しいもんでもないからの。エミリーちゃんが食べたくなるじゃろうし構わんよ」

「やったー! おじーちゃん、だいすき!」


 正直孫みたいな娘に言われるのは新鮮じゃと思うわい。もちろんメリッサ嬢の様な年頃の娘さんに言われるのも嬉しいがの。もちろん、色恋の話ではないぞ? 気持ちとしてはペットを愛でるみたいな感じじゃの。いや、ペットなんぞ飼った事はないんじゃが。


 パーティの料理はそれはそれは見事なもんじゃった。しかし少々味が足りんのう。よし、確か味塩コショウが……あったわい。これをふりかけて……


「ゲン殿、それは?」

「これか? 塩コショウじゃよ。掛けるかね?」

「塩こ……こっこっこっ!?」


 どうしたのかの? 鳥にでもなったか? コケコッコーってなくんじゃろうか? しかし、こっちは西洋に似とるからクッカドゥードゥルードゥーとでもなくのかの? そもそもニワトリはこの世界に存在しとるんじゃろうか。それならTKG(たまごかけごはん)も……いや米がなかったの。


「あの、このコショウだけというのは……」

「いや、生憎じゃが塩コショウしか使っとらんかったからのう。手に入らんわい」

「そんな……勿体ない……」

「まあまあ、使うのにそういうのは関係なかろうが。ほれ、かけると味が引き締まるぞ」


 ガックリしているフィリップ殿。チャールズ殿もガクッとしとるのう。そう言われてみれば塩もコショウも異世界での稼ぎ頭じゃな。肉の保存には重宝するものなあ。


「おじーちゃん、わたしもかけていい?」

「うーん、エミリーちゃんはやめておいた方がよかろう。辛いぞ?」

「えー、からいのやだー」


 小さい子どもにはちょっと早いからの。メリッサ嬢は物欲しそうにしておったので掛けさせてやった。ものすごいはしゃぎっぷりじゃったのう。


 晩餐も終わって翌日。とうとうこの街を去る事になった。チャールズ殿一家が勢揃いで……そういえば奥方が居られん様じゃが。


「妻はちょっと実家に帰っていてね」

「そうでしたか。聞いてはまずかったじゃろうか?」

「とんでもない! 出産でこちらでは手が回らないからと帰っているのです。良ければ産まれて育ったらまた来て貰えませんか?」

「そうさのう。その時まで生きとれば寄らせてもらいますわい」


 健康にはなったものの寿命は如何ともし難いじゃろうから希望は持たんようにしとる。せめてエミリー嬢が成人するまで見守ってやりたいとも思うが。


 領主一家勢揃いでのお見送り。ワシらはそのままフィリップ殿の馬車で王都を目指す。


「私たちは王都で商人交渉をしないといけないのです。我が領に来てもらいたいと」


 なんでもフィリップ殿の領地は国の端の方。と言っても隣接する他国はなくて山に囲まれているそうじゃが。広大な山脈があってそこを隔てれば別の国もあるそうじゃがその山脈にはドラゴンが住み着いとるとかで不可侵なんだそうじゃ。


 ドラゴン! ファンタジーの定番とも言えるモンスターじゃの。ゴブリン、スライム、ドラゴン。あとはスライムだけか。昨今ではドラゴンが完全にやられ役のものが多いと聞くが、ドラゴンはやはり強くてなんぼ。元が強いからこそあっさりやられることで主人公の強さを引き立たせるとかなんとか……


「しかし、そういう事なら尚更特産品が必要ではないですかな? 商人も利のないところに出張っては来んじゃろう?」


 商人だってボランティアでは無いのだ。何か旨みがなければ手を出さないだろう。ましてやこの世界、どうやら遠出にもそれなりの危険が存在するらしい。親切心では動かんのじゃないかの。


「もう一つは……エミリーの輿入れです」

「ほほう? まだ年端もいかない娘を差し出すと?」

「第三王子がエミリーと同い歳なのです。顔合わせだけでもさせてみようかと……こちらもエミリーが嫌がればそれまでですが。もっとも子爵程度ではどうにもならないかもしれません」


 当のエミリー嬢はすやすや眠っている。まあ子爵はそこまで高い身分でもなかろうしな。

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