第十六話:爺さんと紙作り
紙作りの工程は割と適当です。
さて、紙を作る上で困ったことがある。それは、細かい工程を忘れてしもうとる事じゃ。何となくやる事は覚えとるんじゃがのう。どんな木を使うのかとかそういうのを忘れとるんじゃよなあ。
まあ、それでも動き出さん事には始まらん。やっとる内に思い出すじゃろう。
さて、先ずは木の種類じゃが、これはどうしようかのう。この近辺で取れる木で出来ればええんじゃが。ドングリ系の木と松系の木、あとはリンゴとか梨とかの果物系の木が生えとるそうじゃ。工房に置いてある木がその種類じゃったわ。
杉が無いのはええ事じゃのう。なんせ奴らは春先になると小さい悪魔を飛ばしよるからのう。あれはつらい。
全部に鑑定を使ってみると、松系の木で紙に最適と書いておった。鑑定様々じゃなあ。では先ずはこの松の木を切ってナトリウム水溶液で……とりあえずはワシが掃除用に買っておいた重曹を使うかの。これを五、六時間ほど煮るんじゃが……まあ鍋はワシので竈とかも要るが野原で石を組んで火をつければ良いか。
「手伝います」
「わたしもやる!」
何故かメリッサ嬢とエミリー嬢が手伝ってくれとるんじゃが。メリッサ嬢はともかくエミリー嬢はあまり役に立っとらんが居るだけで癒されるからええかの。ん? 手伝ったからアメが欲しい? なるほどそういう事かの。
さて、五、六時間ぼーっとしておくのも芸がないからのう。何か遊べるもんは……おお、花札があるのう。そういえばこいこいとかゲームでやったもんじゃて。
「む? なんですか、それは?」
「なんかえがかいてある。かわいい!」
かわいい……のかのう? いや、花札と言うての。これはこの絵が似たやつが仲間での……
説明したら二人とも分かったようじゃ。というかエミリー嬢が理解出来たのはすごいのう。
「なら先ずは二人で遊んでみなさい。ワシは分からんところを教えるとしよう」
こいこいだと駆け引きとか多いので単なる花合わせにした。これならめくって取ってというところじゃからそこまで複雑でもないしのう。
「よし! さんこういのしかちょうつきみざけ!」
「ああっ、また負けた!」
……エミリー嬢、強くないかの? かれこれ十回以上やっとるがほぼ勝っとるぞ? かなりな運ゲーじゃから勝率が偏ることはあまりないんじゃがのう。
ワシはしばらく二人を放っておいて自分の能力を確認することにした。ステータス、と言っても表示出来ないのは知っとる。やってみたからのう。なんならポーズまでつけたが誰も見とらんかったからノープロブレムじゃ。
ステータスが見られんと言うなら自分に鑑定すればええんじゃないかと考えた訳じゃ。先ずは手鏡で映して……これは母が使っとった手鏡じゃのう。まだどこかにしまっとったんか。顔が映ったの。よし、鑑定じゃ!
「鏡。すこし古くなっているが品質的には問題ない」
そこじゃない! そこじゃあないんじゃよ。仕方ないのう。それならば直接身体を……と言っても見えんと困るからのう。手に当てて……
「じじいの手。水分量は少なめ。欠損部分はなし。割と器用」
ワシの手だけか! まあ器用なのは恐らく長らくガンプラやらを作っとったからじゃろうのう。
しかし、これではワシ自身の能力が全くわからん。この間みたいに話し掛けてくれれば聞けたかもしれんが。
などとやっておると繊維が出て来た。これを水洗いして汚れを落とす。漂白はアルコールでええじゃろ。ビールや日本酒では弱いじゃろうからいっぺん試しに買うてそのままにしとったスピリタスで漬けるとしよう。一晩置いておけばええじゃろ。
ん? メリッサ嬢は酒に興味が? なるほど、お父君がのう。なんならこのお歳暮での貰い物じゃがあまり好きでなかったウイスキーでも……む? フィリップ殿もお酒好きじゃと? ならば同じ物を渡そうかの。まあ今日はここまでじゃからまた明日。
む、フィリップ殿はあまりお酒は強くないと。ならビールにしておこうかの。缶ビールなら何本か出しといても構うまい。ゴミはワシの異空間収納にしまっておけばええからのう。
翌日、メリッサ嬢がすごい勢いで迫ってきおった。なんでも父君があのお酒をたいそう気に入ったそうな。まあ、飲兵衛ならそれもあるかもしれんのう。複製は出来るからいつでも取り出せるのは取り出せるが……そんなにホイホイ出しても仕方ないしの。
さて、紙作りの続きじゃ。撹拌して紙漉きをするんじゃが、予め工房で工作を頼んでおいたわい。網がなかったのでワシの異空間収納に入っておった網戸を分解して渡してやったわい。網戸自体に興味を持っとったみたいじゃから終わったら質問攻めになるかもしれんのう。
紙漉きはそれなりに均等にするのに技術が……ふむ、魔法でならせばええのか。そこまででもなかったのう。
さて、あとは乾燥させてから……それも魔法で水分を抜けると? いやいやいちいち便利じゃのう。両方とも生活魔法という範囲のようじゃ。なるほど、電化製品とかない代わりに魔法で家事をしとるんじゃのう。




