第十四話:爺さんと勧善懲悪
ちょっと力技(笑)
「ふむ、でしたら金を貸したと本人が証言すれば大丈夫なんじゃな?」
「え? ええ、まあ。本人が借りたと言うなら間違いありませんし、踏み倒そうとしているのならば罪にも問えます。しかし……」
これで言質はとったの。しかし、自白させるとなればかなりの手間が掛かりそうじゃな。ワシの目の力でどこまで出来ることやら。
「では、ちょいと貴族の屋敷を回って来るとしますかな。伯爵、すまぬがちょいと軒先を借りますぞ」
「それはどういう……」
「何、気にせんでください。ではまた」
そう言ってワシは貴族街の貴族の屋敷を片端から訪ね歩く事にしたのじゃ。やはり捜査の基本は足じゃからなあ。
一軒目。ゼンノ男爵。
「ちょっとよろしいかな?」
「あなたは? ワシは金貸しのシャイロックというものの使いじゃ。ご主人は居られるかの?」
「そのような金貸しの知り合いは居ないのですが……」
「この事は伯爵様も知っておられる」
「そうですか……主に聞いてみます」
そうして応接室で待たされてしばらくすると人の良さそうな紳士がやって来た。
「私に何か御用ですか?」
「ふむ……どうやらこちらの御仁は関係ない様じゃな。すまなんだ」
「どういう事か説明していただいても?」
一目「観た」だけで違うとわかった。なかなか便利な目じゃわい。鑑定眼、と言うやつかの。まあともかく説明はせんとなあ。
「その様な事が。でしたらアクダーマ男爵ではないでしょうか? 男爵位だと言うのに羽振りがが良いと聞きます」
「なるほどのう。それは感謝する。では……そうそう、お近づきのしるしにこちらを」
取り出したのは万年筆。仕事で三十年勤続の記念品として貰ったもんじゃ。そこまで高いものではないのじゃが。
「これは……私が普段使っている羽根ペンよりも書きやすい!」
「ペン先が劣化したらこれを付け替えてくだされ。幾つかお渡ししましょう」
「ありがとうございます!」
「なあに、情報料ですじゃ。それではお暇させていただこうかの」
そうしてゼンノ男爵家を後にした。一軒目でお目当ての家を聞き出せたのは良かったのう。ならばアクダーマ男爵とやらの所に行くかのう。
二軒目。アクダーマ男爵。
先程のゼンノ男爵の家よりも二回りくらい大きい気がするのう。
「あー、もしもし」
「なんだ、じいさん。ここは男爵様のお屋敷だぜ?」
「ワシは金貸しのシャイロックの使いのものなんじゃが」
「何だまた来やがったのか? 金なんて借りてねえって男爵様が言ってただろうが」
「素直に帰らねえなら痛い目見るぜ?」
やれやれ。これは当たりのようじゃな。見る必要も無いとおもうが、それでも無実の罪は着せられんからのう。
「大人しく読んできて貰えんのならこちらからおじゃましようかの」
「なんだと? つまみだせ!」
その合図に何人もの男たちが出てきてワシに掴みかかって来た。まあ勿論バリアで全部防げるんじゃが。
「へぶっ!?」
「おごっ!?」
何故か顔面から突っ込んどるんじゃが頭が悪いのかのう? ともかく誰も行く手を阻めんようじゃからそのまま通るぞい。
荒くれ者の悲鳴をBGMにしばらく屋敷内を散策すると一際立派な扉があった。扉なんぞに装飾するのは無駄じゃないかのう? ふむ、鍵が掛かっとるのう。それも魔法で強化しておるのか。ならば……解錠。よし、開いたの。魔法とは便利な物じゃな。
「な、何だ貴様は!」
部屋の中には二人の人物が居った。どっちもデブじゃな。丸くて歩けなさそうなのが偉そうじゃの。
「ワシか? ワシはシャイロックから頼まれてのう。借金の取り立てに来たのじゃ」
「シャイロック? 知らんなあ」
下卑た笑いを浮かべてしらを切る偉そうな方のデブ。
「それが嘘だと言うことは分かっとるよ、アクダーマ男爵。そっちの商人のワイーロも共犯の様じゃな」
「よく私の事をご存知で。共犯、とは?」
「金を返さなくても貴族の力で圧力を掛ければいい。そう進言したのがお主であろう?」
「証拠でもあるのですかな?」
「お主らが証言すれば良い話じゃよ」
そしてワシは二人を「凝視た」。なんとまあ悪事をよう働いとる。公金横領に誘拐、こっちは押し込み強盗に商家の乗っ取り、こちらも誘拐殺人か。どうしようもない悪党どもよのう。
ならば末路はこうじゃろう。男爵には伯爵から断罪される未来を、商人には部下に裏切られて誘拐殺人される様を見せてやろう。ふむ、商人は気絶したが男爵はまだ頑張っとるみたいじゃな。
「こ、こんな幻覚で参ると思うなよ。だいたいあんなぼんくらの領主にバレるものか! もう何年も誤魔化していても気付かない程だぞ!」
「ボンクラで悪かったな」
と、そこにはいつの間にやら伯爵が。フィリップ殿も御一緒の様じゃ。一体どういう事かのう?




