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弱体化

 気を失っていた仁が目を覚ますと、そこには見慣れた天井が広がっていた。


 場所はサタの湯の自室。重い疲労とダメージで首だけしか動かない仁が横を向くと、そこには当然の様な顔でサタンが正座してる。


「俺は、勝ったのか……? それとも助けられたのか……?」

「助けられた、というのが適切ですかね。その人物を、仁様は覚えていますか?」


 仁はぼぅっとする頭であの時のことを思い返す。恭兵に致命傷を負わされ死を確信したその時、極寒の海に沈む感覚と共に誰かと交代したことを思い出した。


「あぁ、そうだ……。あのとき、俺の中の誰かが外に出た……。いや違うな、体の主導権が変わったんだ……」

「仁様の中にある魔神の魂、そこに記録された前魔神の夜月龍様が仁様の体を使い、対峙した天使及び転生者を倒して燈達と合流したものと思います。燈からの話を聞く限り、そのような流れかと」


 そうか……。と短く答えると、仁は内心燈に迷惑かけたと反省する。


「なぁ、サタン……。突拍子もないこと、聞いてもいいか?」

「なんですか仁様?」

「あのな、気のせいだと願いたいんだが。俺、女になってねぇか……? そのうえ十歳未満の子供(ガキ)に」


 目が覚めた時から違和感があった。比喩ではなく、文字通り体が軽くなったような感覚。


 生まれた時から付いていたものが無くなり、声が聞き慣れない愛らしく美しいものに変わっていることから、先のような質問を投げかけたのだ。


「誤魔化す理由もありませんしはっきり言いましょう。現状仁様はロリになってます、それはもうロリッロリです。黒狼から黒い子猫に変わったぐらいには可愛くなってます」


 ボサボサだが艶のある長い黒髪。鋭さが幾分和らぎ、厳つさではなく愛らしさを発する瞳。高い身長鍛えられた筋肉、それら全てを失い、代わりに得た柔らかさ、脆さを前面に押し出した少女の肉体。鈴の音のような、可憐で聞き心地の良い声。


 サタンはそれらを言葉の限り褒め讃え、仁はそれを辟易した顔で聞いていた。


「賛美の言葉はいらねぇから、何でこうなったかと、元に戻る方法を教えろ」

「率直に申し上げますと、原因は魔力不足です。悪魔の体は全て魔力で構成されていますので、総量が一定ラインを下回りますと魔力を補給しやすい形に体が自然と変化するんです」


 原因を聞き、現状と照らし合わせた結果、仁は魔力の補給方法を予想し心底嫌そうな顔をする。


「なぁサタン。魔力不足が原因なら、小さくなったってのは納得いく。けど女になったってことは、その補給方法は……」

「セックスですね」

「お前もうちょっとオブラートに包むことを覚えろよ」


 願わくば予想が外れて欲しかった、そう思うもののこの小さな体で何が出来るわけでもなく。疲労とダメージの回復のためにも、魔力の補給自体は急ぐ必要があるのだろう。


 それを頭では理解していても、女性の、更には子供の体で性交せねばならないとなれば簡単には飲み込めない抵抗感が生まれるというもの。


 更には一人分では足らないとなったとき、多数の男性に抱かれる必要も出てくるかもしれない。


 そんな想像が過去のトラウマを甦らせる。幼少の頃、実の両親に仕込まれ男娼として働かされていた、そのときのことを。


 まともに抵抗できない小さな体で、大人に性処理の道具として扱われるあの屈辱と恐怖、それらを仁は二度と味わいたくない。味わいたくない、が……


「っ……。はぁ……仕方、ねぇよな……。サタン、悪いが相手を見繕ってくれ……」


 今にも泣き出してしまうんじゃないかと思わせるような悲痛な表情、震えた声。自身の感情に蓋をしてまで頼む仁に、サタンは怒りを殺しながら問いかける。


「仁様、なぜ他の方法をお聞きにならないのですか?」

「この体になったってことは、解決方法としてはそれが最適解なんだろ? 他の方法が無くもないが効率が悪い、違うか?」

「本当にそれだけが理由ですか?」


 サタンは言葉を削ぎながら問いかける。仁の過去を知っている彼女としては、必ず他の方法を探るだろうと考えていた。


 だが予想は外れ、嫌々ながらも性交による補給を受け入れた。それがにわかに信じられないため、思わず聞き返してしまう。


「手っ取り早く元に戻りたい、それだけだ」


 素っ気ない仁の返答に、サタンは握った拳に力を込める。


 それだけのはずがない、分かっていても下手に食い下がれば自分の嘘が露呈する可能性がある。そう考えたサタンはそれ以上聞かず、彼の頼みを聞き入れた。


「そういうことにしておきましょう。相手は私が務めますが、構いませんね?」

「は……? いや待て、お前さん女だろ」

「ですので魔法で生やします。これでも燈達が魔力不足に陥った際は、私が竿役となって供給していたのですよ?」


 誇らしげに言うサタンに、仁は顔を顰めながら声を絞り出す。


「そうか、なら頼む……。初めてなんだから、優しくしてくれよ……?」


 緊張と恐怖に蓋をするように冗談を言ってのける仁。それを受けサタンは、彼に被さり浴衣に手をかけながら囁く。


「勿論です。期待してください、忘れられない時間にしてあげますので」


 サタンに見えないよう、力の入らない手で布団を握りしめる。


 弱体化した魔神は、想い人を取り戻したいがためにその屈辱を受け入れた……。

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