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「魔神、きみが……?」


 恭兵はディクフルによる転生の際、魔神の討伐を条件に出されていた。そしてそのとき、魔神と自身の関係や、それがどういった存在かというのも聞いている。


 それと同時、転生者達に魔神を倒した際の報酬も約束していた。それは魔神を倒した者の願いを、神の力をもって可能な限り叶えるというもの。


 恭兵としては常人離れした身体能力と魔法力、そして聖天使からの加護を授かった時点で事足りていたのだ。


 後は適当に悪魔を殺しつつ、拠点を構えて好きに生きる。そう計画していた。にも関わらず、意図せず最終討伐対象である魔神と出会えた。


 それは恭兵にとって幸運でしかなく、笑を零して幸運を噛み締める。


「はは、成程成程。僕は随分と幸運だ、こんなところでラスボスに出会えるなんてね。いいよ、生き返ったならもう一回殺すだけだ。もう一回殺して、その首持ち帰らせてもらうよ!」


 楽しそうに叫びつつ、彼は大鎌を構えて龍に突撃する。一度はその肉体を殺すに至った敵の接近に、龍は臆することも慌てることもしない。ただ頭を掻きながら呆れた声を漏らす。


『いや悪いけどさ、俺殺されるために出てきた訳じゃないんだわ。俺が出てきたのはな……』


 お前を殺すためだよ。その言葉は恭兵の懐から聞こえてきた。その接近を彼は一切感知出来ず、無防備に自分の胴を晒す形となった。


 懐に潜り込んだ龍は右拳に魔力を込め、対応されるよりも先に彼の腹へと叩き込み、込めた魔力を爆発させる。


 殴打により体をくの字に曲げられた恭兵を激痛が襲う。最初は打撃による痛み、そして一拍開いて体が爆発する痛み(・・・・・・・・)


「ごほっ……! ごっ!? お"ゔぇ……!!」


 バケツ一杯分に届きそうな、夥しい量の血が恭兵の口から吐き出される。そして、それ以上の血が彼の後ろに広がっていた。


『兜で顔隠れてっけど、多分困惑してんだろ。何が起きたんだって。別に大したことじゃなくてな、拳に魔力を集中して、殴ると同時に対象に流して爆発させる。俺がいた時代じゃ訓練すれば誰でも出来る技だよ』


 後方に血と肉と骨と内臓を撒き散らした恭兵は、不運にも心臓が無事だったがために辛うじて息をしていた。


 そしてそんな彼の頭を、龍は笑いながら掴んで持ち上げる。


『いやいや残念だったね、心臓が無事なせいまだ生きてんだもん。失血死するかもとか思ったけど、死んでなくてなによりなにより』


 息も絶え絶えな恭兵の頭を掴んだまま立ち上がると、彼は思い切り、ボールを投げるように振りかぶった。そして……


 ヒュ──パァァァァァン!!


 渾身の力を込めて掴んだ彼を民家の壁に叩きつける。その衝撃で、厚い肉一枚で繋がれていた下半身は千切れ散り、肉片を撒き散らす。


「っぁ……! ぁ……!」


 恭兵は微弱に心臓を動かしながら、痛みに呻く。


 死ぬ手前までダメージを負った彼は、自害することも反撃することも出来ない程に弱っている。


 そのため今は龍のなすがまま、いたぶられるまま、ただ殺されるのを待つしかない。


『あーあ、お前人間やめてんのな。普通とっくに死んでんぞ。まぁ魔法で死因を限定化して死ににくい体作って、死んでも恩恵で蘇生するってのは理にかなってるし、普通なら勝てんだろう。普通は』


 頭を掴んだまま、遊ぶように振り回す。絶え絶えな呼吸の彼を数度振り回すと、飽きたとばかりに地面に叩きつけた。


 頭から叩きつけられ、脳と首を破壊された恭兵は、ようやく死んで蘇生する。


 蘇生した彼はゆっくりとした動作で立ち上がり、怨嗟の声で龍に叫ぶ。


「殺す! 殺してやる! 報酬なんか関係ない! きみはここで、僕の全力を以て消し去ってやる! サクリエラ、聖魂接続のシンクロ率を上げろ! たとえ人間に戻れなくても、僕はここでこいつを消滅させる!」


 龍にいたぶられた恭兵は、その屈辱に震えていた。普段人をいたぶる側の彼にとって、自分がいたぶられる立場、弱者の立場に置かれるのは我慢ならなかった。


 そして怒りに我を忘れつつある彼は、感情のままにサクリエラとのシンクロ率を上げようとする。


 自分の魂と天使を融合させる魔法、聖魂接続。これにより恭兵は、本来人間では扱うことの出来ない聖属性の魔力を使うことができ、身体能力が大幅に強化される。


 そして本来シンクロ率五十パーセントで行うこの魔法、そのシンクロ率を上げるほどにその体は天使へと近き、比例して上昇値が増していく。


『かぁっこいいー! いいねいいね、そうでなくちゃ! 悪魔を殺すなら天使だろ、人間もどきのまま()ってんじゃねぇよ!』


 嘲笑うように煽る龍。恭兵がシンクロ率を上げれば確かに強くなる、けれども龍にとってはそちらの方が都合がいい。


 早く、早くと内心焦りながら恭兵はシンクロ率が百パーセントになるのを待つ。


「六十、七十……もっとだ、もっと上がれ! 僕に、あいつを殺せるだけの力を寄越せェェェェェェ!!」


 咆哮とともにシンクロ率は上昇していく。そしてそれに伴い、恭兵の体に変化が出始めた。


 八十を超えると背中に羽が生え、九十を超えて頭の上に光の輪が現れる。


 そして、そのシンクロ率はついに百パーセントへと到達した。


 純白の翼を二枚広げ、頭上には光の輪。鎧にも変化があり、ヘルムが蛇を模した物へと変わっている。


『おぉ凄い凄い、それなら確かに魔王程度なら倒せそうだな』


 軽薄な賞賛を送る。恭兵は聞こえてないのか否か、気にすることも無く翼をはためかせて飛び、十メートル程で制止する。


「殺す殺す殺す殺す殺すッ!! この一撃をもって、きみを必ず殺してみせる!」


 大鎌にありったけの魔力を込めながら振り上げる。込められた魔力は巨大な刃と化し、三日月を思わせる程に肥大する。


 それだけの巨大な聖属性の魔力で切ったならば、魔王すらも倒せるだろう。そんな力を今、恭兵は振り下ろそうとしているのだ。


 だがそんな力を振るえば、眼下の街は消し飛び、国に多大な被害を生むのは明白。


 しかし彼はそれを気にするつもりはさらさらない。ただ目の前の魔神を消し去りたい、その想いだけを胸に、今光の鎌を振り下ろす。


「消しとべーーーー!!」


 神が下す天罰を思わせる巨大で強力な一撃。魔王を殺し、街を消し、国を半壊させかねない力が振り下ろされて尚、龍は恐れず、怯えず、笑っていた。


『残念だったな転生者、人もどきから天使に成った、成ってしまった。その時点で、お前は(・・・)俺に負けてんだよ(・・・・・・・・)


 突然、龍の右腕が闇に包まれる。否、闇そのものへと変化する。腕の形をしたその黒い(もや)は、対天使用切り札の一つ。龍の時代に贄の天使と契約していた転生者を殺した魔法。


『【聖滅の魔腕(アルバ・メギストス)】』


 右腕を変異させた龍は跳躍し、迫る光刃を右手で殴りつけた。すると光刃は、氷細工が砕けるように霧散した。


「はぁ……?」


 呆気にとられ、間抜けな声を漏らす恭兵。そんな彼の眼前まで迫り、龍は吐き捨てる。


『お前さんじゃあ、俺には届かんよ』


 聖滅の魔腕が恭兵の胸に触れたその瞬間、大量に魔属性の魔力が恭兵に注がれ、聖属性の魔力で構成された彼の体を消滅させる。


 悪魔が聖属性の魔力で消滅するように、天使もまた魔属性によって消滅する。つまり純粋な天使に近づけば近づくほど、悪魔に対して強くなると同時に弱くもなってしまう。


 龍はそれを利用して、前回贄の聖天使と契約していた転生者を消滅させたのだ。故に龍は今回もその方法で恭兵を消滅すべく、彼を挑発し天使とのシンクロ率を高めさせた。


『くくっ、馬鹿だねぇ人間てのは。あのまま長期戦に持ち込めば俺にも勝てたのになぁ。まぁいい、あんま時間もねぇし、さっさと燈と合流してこいつを預けるか』

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