第十八話 息抜き
明日から18時のみの更新予定ですm(__)m
気が向いたら二回更新のときもあるかも(´・ω・`)/~~
クリフへの挑戦が決まった。
だが、決闘までは十日ある。
クリフのことを調べようにも、国境に飛ばされているクリフはまだ聖都に戻ってきていない。
そもそもある程度、奴の王剣については予測がついている。
俺ができることは自分を研ぎ澄ませることだけ。
剣でも振って、集中力を高める期間といえるだろう。
遊ぶなんてもってのほかだ。
「レイ様! 今日は旅の楽団が来ているみたいですよ!」
「我ながら意志が弱いことだ」
楽しそうに前を歩くのは私服姿のステラだ。
エステルの頼みで、定期的に民の生活を見に来ているそうだ。かつてのように。
その護衛を頼まれた。
そして断わることもできず、俺はこうしてステラと共にあちこちを散歩している。
「レイ様! レイ様? 楽しくありませんか?」
「いや、楽しいよ。聖都に来てから気ままに散歩するなんてことはなかったから……ただ、楽しんでいていいものかと思ってな」
俺の師匠は剣聖。
怪物だ。
円卓の聖騎士たちですら、あの人の前では霞む。それは確かだ。だが、俺はその弟子に過ぎない。
師匠の強さは弟子の強さではない。
特に俺は不出来な弟子だ。
魔法をろくに使えないし、王剣だって不安定。
勝つためには準備が必要となる。
もっとやれることがあるんじゃないかと、ふと考えてしまう。
クリフは人間的に全く尊敬できないし、負けるとも思ってないが、舐めて掛かれる相手ではない。
相手は円卓の聖騎士。
俺にとっては未知の領域での戦闘となるだろう。
油断はどんな強者の足元だって掬う。
負けはすなわち俺の十年が崩れ去るということだ。
そう思うと何かしたほうがいいんじゃないかと思ってしまう。
だけど。
「かつて、とある円卓の聖騎士が言っていました。勝負は一瞬。勝敗を分けるのはそれまでの積み重ねだ、と」
「良いこと言う人だな」
「そうです。だから私は鍛錬した者が勝つのですね、と答えたら首を横に振ってしまいました。なぜだと思いますか?」
「なぜだろう? 正解な気がするけれど」
「積み重ねというのは鍛錬だけではないそうです。楽しむ時に楽しみ、頑張る時に頑張る。そういう人生の積み重ねが勝負を分けるのだ、と。研ぎ澄ますだけでは人は生きていけません。少しだけ楽しむのも悪いことではないと思います」
そう言ってステラは愛嬌のある笑みを浮かべて、俺の手を取った。
さすが円卓の聖騎士というべきか。
言うことが一味違う。
「その通りだな……ちなみにそのとある円卓の聖騎士というのは?」
「内緒です」
「なるほど。じゃあいつか直接聞くとしよう。どうせ、全員倒す気でいるしな」
「強気ですね。騎士皇国が誇る円卓の聖騎士はそう簡単に勝てる相手じゃありませんよ? 大丈夫ですか?」
「平気さ。あのいけ好かない野郎もぶん殴って終わらせてやる」
「さすがですね。ですけど、クリフ卿は序列こそ低いですが、実力は確かですよ? 序列は功績によって決まりますから。ずっと聖都にいるライオネル家の者は上がりにくいんです」
「関係ないさ。強さであいつを最初の相手に選んだわけじゃない。俺が円卓の聖騎士に通じるかどうか、それを確かめるために打ってつけだったのと、防御型の人間はさっさと叩いておきたい。対策を練られると厄介だからな」
防御に秀でた者は対策に長けている。
受動的な戦術だからこそ、相手に合わせることができる。
だから最も防御に優れた者を最初に選んだ。
「なるほど、レイ様も考えているんですね」
「意外そうに言うのはやめてもらえるか?」
「なんとなく、とりあえず斬るというタイプかなと」
「間違っちゃいないが、世の中、斬れないモノもあるからな」
「レイ様と姫殿下の縁とかですか?」
「俺が勝手に縁を繋いでいるだけだけどな。もちろん、君との縁もだが」
「お上手ですね」
クスクス笑いながらステラは散歩を続ける。
かなり上機嫌だ。
そんなステラと一緒にいると、こっちまで楽しくなる。
不思議なものだ。
周りに影響を与える何かをステラは持っているんだろう。
「そう言えば、エステルのメイドは数人しかいないらしいけど、大変なのか?」
「えっと……そうですね。信頼している人間しか傍には置かない方なので」
「騎士皇国は敵が多いからな。エステルも大変だな。メイドが少ないと不便だろうに」
「そんなことありません! 姫殿下は料理や洗濯、裁縫など、何でも一人で出来ますから!」
「そうなのか? お姫様なのに変わってることで」
大陸一の箱入り娘といっても過言じゃないのに、何でも一人でできるってあたりにエステルらしいといえばエステルらしいか。
きっと色んなことを想定して練習したんだろうな。
「ん? そうなるとステラは何をしているんだ?」
「えっと……普段はやはりお疲れなので、お料理や身の回りのお世話などを。最近は姫殿下のドレスなどを選んだりしてましたね」
「そうなのか? 道理でセンスの良いドレスだと思った。エステルに良く似合う清楚なドレスだったよ」
「それは……ありがとうございます」
照れたようで、ステラは顔をそむけて歩く。
エステルが箱入りなように、その身の回りの世話をするステラも箱入りだ。
きっと褒められ慣れてないんだろう。
男と話すのだって、滅多にないはずだ。
気をつけよう。
「ほかに行くところはあるか?」
「えっと、次は南地区に行きます。とても美味しい料理店があるとか」
「じゃあそこで食事と行こうか」
「はい!」
ステラは楽し気に笑う。
それにつられて俺も笑い、楽しい気分で一日を終えられたのだった。




