破壊力高めはやめてよね!
――ビュアアアアア!!
うおおおおぉ!
――チュドーン!!
「ぐっ……?!」
妖精の住処の荘厳な桜の木の前にいたはずが、ものすごい力で吸い上げられ……
何かに衝突して、止まったようだ……
辺りには衝撃か何かで巻き上がったのか、真っ白の煙のようなものがたちこめてしまった。
とりあえず何にも見えない。
しかしだ。なんだったの、あの急移動。
マッハでてたろ、マッハ。めちゃくちゃ速かったぞ。
いくらオレがこれしきでは死なないっても扱いが雑すぎねーか?!
今生の母がヒドイ! 落としたり引っ張ったり、やりたい放題してくる!
星間移動がそれでよく生還できるなオレは! 生身だぞ!
どーなってんだ! 人外か! そうだわ! 人外どころか神族だったわ!
丈夫な身体に生んでくれてありがとうって言わなきゃダメかぁ?!
これが神族流愛情表現ですってかぁ?! カルチャーギャップが過ぎるんだよ!!
気分的にはめっちゃ微妙だぞ!! くっそー!! 再開の暁にはあの豊満な胸に……
「ああああああああぁぁぁ!! ぼぉーすぅー!!」
「えっ?!」
「ご主人様あぁー!!」
――ガッ!! ドッ……
着地? の衝撃かなんだかで、白い煙みたいなものに覆われて、視界が定まってなかったところを……
またなにか強い衝撃で、地面? に押し倒された。
ペロペロペロペロペロペロペロペロペロ……
うわっ?! ねちゃっとする!
え……ちょっと待て! この感じ!
「ルビィか?!」
「そうだよぉー! ボスぅー! なんでおいてくのぉー!」
「す、すまん……置いてったわけじゃ……って、アマネ?!」
「……ぐずっ……はい。……ああ……ご主人様……。」
「え……いや……」
ルビィは、まぁルビィだよな。うん。わかるよ。
ペロペロペロペロペロペロペロペロペロ……
何せテイルヘイムの南大陸で離れ離れになって、もう2ヶ月以上経ってるしな。
ペロペロペロペロペロペロペロペロペロ……
待たせすぎ愛犬ペロペロモード発動は、止まらんだろうさ。
あぁ、そこだけはオレの言うことも聞かない。もはやチュー〇を前にした猫……それがルビィだ。
いや、ルビィは犬……じゃない、神狼なんだがな。
前世の愛犬だ。
ペロペロペロペロペロペロペロペロペロ……
だが、オレにしがみついて顔面舐め散らかしてるルビィの横に、今は何と……アマネまでしがみついてる。
あの"合法ロリクールビューティ鬼侍娘"アマネが、だ。
どどど、どうしたんだろ……? クールどこいった……?
ま、まさか……この2ヶ月ちょっとで、何かあったのか……?
一体……何が……
ん……? あれ?
ちょっと待て。
フウカとウィトは……どうした?
ま……まさか……!
「な、なあ、ア……アマネ。」
「……ぐずっ……はい。」
うお、あのアマネが、泣いてるよ! これは……
「あ、あのさ……フ……フウカと、ウィトは……どうしたんだ?」
「……ぐずっ……お二方は……」
お……おふたかたは……?
「……うぅぅぅ……っ……ぐずっ……」
え……ちょ……ウソだろ?
「……お二方はぁ……うぅっ……」
ああー、き……聞きたくない!
「……神狐の……郷で……修行を……」
……は?
ちょちょちょちょちょちょちょっ……
なんっっっっだそれ!!!!!!
めちゃくちゃビビってたじゃねーか!
もー。そんなにびっくりさせんなよぉー。もー。
てか……アマネってば、いつからこんな情緒豊かになったんだろ??
「レイリィさん。」
「……ん?」
「大変だったようですね。」
いつの間にか白い煙が晴れているようだが……
オレの視界は……ルビィとアマネで塞がってんのよね。
アマネさん、あの……ちょっと角が……刺さり気味かなぁって……
ペロペロペロペロペロペロペロペロペロ……
あと、ルビィさんや。いつまで舐め散らかしてんのよ……。
ふやけてきたぞ? オレ……。
ん? そう言えば、呼ばれたっけオレ。
あれ? あの声って……
「って!? 母神様?!」
「はい。あなたのソールフレイヤですよ。」
うわ……これ絶対にっこーっとしてるわ。絶対。女神笑顔炸裂してるわ。
相変わらずだなぁー。この女神。オレ的には久しぶり感覚だが……
全く……なーにが"あなたの"だわ。ファミ〇かよ。コンビ組んだ覚えねーっての……。
むしろオレがアンタのオモチャだろーよ……。
「ルビィさん、アマネさん、喜ばしいのは分かりますが、少しいいかしら。」
「ペロ……んむ?」
「……は、はい。申し訳ございません。」
とりあえず2人から解放されたオレはやっとこ立ち上がると。
あーここ、最初の神殿かぁー。
白い柱だらけのパルテノン的なやつ。こんなだったなー。部屋がやたら広くてさぁー。
「レイリィさん。ルーキスナウロスという神族に転移させられたのですよね。そしておそらく、アースガルズに。」
む……居場所、予想はしてたのか……。
まぁ、神スマホ圏外&電池切れの理由が"アースガルズ内外の神力遮断"だもんな。
普通に考えたら分かるか。
「そうっすね。ルーキスナウロスの正体、分かったんすか?」
「いえ……。思い当たりはしませんので、おそらくですが……大戦の生き残りが名を変えるなどして、身を隠しながら暗躍しているのではないかと。」
「なるほど……。あー、そうだ、アマネ。あの後どうなったの?」
「あの後、奴はすぐに逃げるように去りました。思ったより消耗した……と。しばらくは回復に努めるような発言もしておりました。その期間がどの程度かはわかりかねますが……。」
「はーん。まぁ……じゃあ、一応オレの苦労は無駄ではなかっ……あ!」
「どうしました?」
「いや、アースガルズでめちゃくちゃ世話になった人間、ニケって言うんすけど、出口ではぐれちゃって……」
「ああ、もしかして……レイリィさん、神具でも創って渡したりしましたか?」
おおん……? なぜバレた……?
まさか……この女神……
ネイドス内の大体の場所の神力探れたりするのか……?
だからテイルヘイムでのオレの行動筒抜けだった……?
まさか……
「そ、そうっすね、剣と鎧と靴……かな……」
「なるほど……。レイリィさんらしき神力のわりに、ずいぶん弱々しいものも別の場所に感じましたので、どちらなのかと少し迷いましたが、通信機が繋がりましたから。そちらで呼びました。」
その"呼び方"ってのが普通じゃないんだっての……
まぁいいや。
アルヴヘイムからの帰還方法も分かってなかったし、助かったということで。
それよりも……
「神具……やっぱりオレの神力なんすか?」
「そうですよ。あなたの力を込めるものですからね。」
はー。知らずにやってたけどなー。
この女神教えてくれんかったし! 名付けの話なんかフウカとグエンさんに教えてもらったんだしさ!
あっ! なーんかシレッと"教えたでしょー"みたいな笑顔してるんじゃないっての……
「では、そのニケさんは無事なようなので、もう一度探しておきますね。」
「え! マジっすか! ありがとうございます!」
「いいんですよ。今回はあなたにも苦労をかけましたからね。アースガルズでしたら、大変だったでしょう?」
「まぁ、アズリア神族との相互不可侵の協定がとか……まぁ色々ありましたね。」
「無事でよかったです。それで……これからどうしますか?」
「あ! じゃあとりあえず、神狐の郷に無事だって伝えに行きますよ。」
「ああ、そうですね。テイルヘイムの問題は当面は大丈夫とのことなので、こちらでゆっくり暮らしてもらってもいいのですが……」
と、言いながら微妙に寂しそうな顔をする母神様。
「あ! そうそう。隣の神殿に寄ってから行ってくださいね。そう言えば、伝言を頼まれていたんでした。」
気を取り直したふうで、そこはかとなくてへぺろ感を出す女神。
はぁ……。破壊力高いのはやめてよね!
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