サクラサク
おっす! オレ、レイリィ。
レイリィ・セトリィアス・ミデニスティース。
そんな感じのやたらと長い名前を持ってる、元日本人の現神族だ。
地球では、やたらと不運体質だったが、自分の運気をすり減らしながら、周りの運気を高めて皆の寿命を伸ばすっていう増幅者とかいう役目を勝手に与えられた魂、だったんだ……
そんなひっでぇ人生……リセットしてぇ!! と思ってたら……
創造の女神ソールフレイヤに、勝手に神族に創り変えられて、"リセット出来る神生"が始まってた。
それも、なんだか観察対象? みたいな扱いされてんだよな。
で、色々な星を内蔵しちゃってる不思議惑星ネイドスの中の星を、母神様都合で旅してたはずが……
悪そうな神とバトって、うっかり。ボッチでやばーい星に飛ばされたんだよなー。
で、さっきまでいた場所は、2000年以上前の神界大戦のせいで、地獄絵図に変り果ててしまっていた、かつての神々の星"アースガルズ"。
そんなとこ、さっさと出てやるぜ!
と、言いつつ、ニケって人間に世話になりながら2ヶ月以上彷徨って……
やっとこ光の道っていう星間移動装置的な出口にたどり着いて、ついに脱出出来るぜ!
ってところで、また少しトラブって、ニケとはぐれちまった。
そんなこんなで、イマココ。またボッチ。
「ここは……」
辺りは、一言で表すと広大な花畑だった。
さっきまでいた場所ではない……
という事は、一目で解った。
あの荒廃しきった星に、こんな場所はない……
というよりも。
そもそも光の道を通ってきた時点で違う場所なのだ。
オレはアースガルズの出入口の風景を知ってるしな。
いや、まぁそれはいいんだが……
オレが行きたかったのは、母神様のいるアズ神族の星"エルヴァルド"か、仲間たちとはぐれた獣族の星"テイルヘイム"のどちらかだ。
母神様に会いに行く方が、多分色々わかるだろうから、エルヴァルドの方がいいだろうが……。
テイルヘイムで離れ離れになったルビィたちも気がかりだ。
はぁ。でも多分ここ、どっちでもないな……。
やっぱり前世の不運体質、治ってないんじゃないのー?!
意味不明に神族なんかにされちゃったんだけどさ!
もう不運体質のお役目は返上だよって母神様言ってたけどさ!
ホントかよ! まぁまぁな目に遭ってんぞ!?
と、心の中でツッコミまくりながら歩いていたら、めちゃくちゃデカイ桜……? かなんかの樹があった。
だだっ広い花畑の中心に、ドン! と聳え立つ感じである。
ふむ。正直桜の花は好きだぜ? 元日本人だしな。
なんならオレの三振りの愛刀のひとつ、脇差の"淡墨"ちゃんは、その名の通り、鞘の意匠は桜が主である。
ま、火神グエンさんにもらった大事な大事な刀ちゃんたちなんだけどな!
と、考えごとをしているうちに、いつの間にか桜の巨木の下についた。
見上げると、まさに荘厳という言葉が似合い過ぎる、雄大な姿だった。
枝のひとつひとつまでが、計算されつくしてあるかのように広がり、花弁1枚にいたるまでを美しくみせているかのような、上品さと華美さを創り出している。
そして、堂々たる幹は、なにやら母性すら感じてしまうほどの力強い優しさをもち、それを支える太い根は、根上りも所々にありカッコ良さまである。
これはまさに神々しいまでの芸術だな!
うーん。
ウチに欲しい……。
いや、家なんかないけどな。今は立派な家なき子である。
「……珍しい。神族ですか。この地に何用かしら。」
ん……? なんか……聞こえたような……?
キョロキョロと辺りを見渡しても誰もいないようだが……?
「ずいぶんと鈍い神族ですね……。まだ幼いのかしら。」
おおん? 幻聴にいきなりディスられてるぞ? なぜだ?
「仕方ないですね……」
やれやれといった感じの、謎の声が響いた……
と、思ったら。
「おお?!」
目の前の桜の幹辺りから、桜色の半透明な人型の何かが……ふわぁーっと出てきた。
ナニコレ珍百景……! では済まねぇ……! 採用待ったナシだろ……!!
「この姿なら、お話ししやすいかしら。」
桜色の何かは、ふよふよと浮いたまま話しかけてきた。
いやぁー。
オレもこの世界に神族として転生しちゃってから、二足歩行の動物とか、炎を吐く神狼だとか、九尾のエロ狐美女だとか、巨人だとか? 色々見てきたけど……
この手のタイプっていえば……
「妖精……?」
目覚めた神殿で見た、妖精ミエリッキとかの雰囲気に似てるな……。
「ふふ……。そうね。妖精の生みの親……ですね。」
違ったか……。ふーむ。生みの親、ねぇ。
それって、その存在を生み出した的な意味か?
「ん……? まさか、神族とか?」
「あら。私が質問をしているのに……」
おっと。こっちのペースでは難しいか……。
仕方ない……。
「あー……っと、オレはレイリィ。レイリィ・セトリィアス・ミデニスティース。アズ神族、創造の女神ソールフレイヤのニルヴァ、です。ちょっと色々あって、ここに来ちゃったみたいで……」
「色々?」
「あー、話せば長いんすけど。」
「説明してくださる?」
うーむ。かなりの威圧感があるなぁ……。
アズリア神族の軍神マールズなんかより全然あるな。
火神グエンさんの力が戻った後くらいの感じがあるなぁ……。
はぁ……。こりゃ逆らわない方が無難だな。多分勝てないわ。
「えっと、大体4ヶ月前くらいかな? エルヴァルドで目覚めたんすけど。母神様に、テイルヘイムを見てきて欲しいって言われて空から落とされたんすよ。」
「そうなのね。それで?」
「テイルヘイム回りながら、火神さんに会ったりもして、仲間が色々増えたんすけど……。
どーもきな臭い感じだったんで、調査してたら、ルーキスナウロスとかいう神族と戦う羽目になって……
転移の神能でアースガルズに飛ばされて……
現地で世話になった人間と、一緒に出ようとしたら、はぐれちゃって。
仕方なく光の道をテキトーに操作したら、ここに出たんすよ。」
「そうなのね。あなた、まだ生後4ヶ月なのね……。」
えぇー?! そこ?! そこなの?! オレが長いこと話したの、何だったわけ?!
「あ、いや、創られてから目覚めるまで10年だったらしいんで、どうだろ? 多分10歳だと思うんだけど……」
「そう……。10歳と4ヶ月なのね……。可愛い盛りだわね。」
えっ……いやぁー……前世が享年39歳なんすけどね……?
寝てた10年足さなくても、39歳4ヶ月なんすよね……。
ま、まぁいいや。どうせこの人? いや、人はないわ。
まぁ何だか知らんけど、どーせ何千年も生きてんだろ?
10年も40年も誤差だわな!
これで桜の精とかだとしても、どう見ても樹齢1000年は超えてまっせ! ってくらいの立派な樹だしなー。
ウチに欲しいと思ったが、こんなの植える庭ってなると、中々難しかろうなぁ。どんな金持ちやねん。オレは貧乏神だぜ。無理だな!
ふーむ。つっても、帰還を急ぐ身だ。ここに住むわけにもいかん。
ああ、そうよ。帰還よ帰還。聞くこと聞かんと。
「えっと……ここ、どこです? で、あと、あなたは?」
「ああ、そうね。ここはアルヴヘイムの……フェアランドと呼ばれている場所ね。フェアランドには、妖精や精霊、幻獣が暮らしているわね。でも、アルヴヘイムという星全体では、主にエルフたちが暮らしているわね。」
ほーん。エルフのエリアに不時着してたのか。エルフまだ見たことないなー。
んで、ここは名前の通り妖精エリアね。
なるほどなぁー。
めちゃくちゃそんな感じだわ。
神秘的で幻想的だもんなぁー。
「私は、妖精王や精霊王……あの子たちからは"マザー"と呼ばれてはいますけど、実は創世十二神――」
「あ、繋がりましたね! レイリィさん! 無事ですか?」
ふぁ?! 突然なんぞ?!
「え、母神様……? あれ、神スマホ……」
母神様に渡されてた、神の創った謎スマホ。
さっきまでうんともすんともだったのに、復活したんかこれ?!
「ああ……よかったです。今から呼びますね。」
……ん? 呼ぶ? 誰を? どこに?
と、思った時には、空にいた。
はぁ?!!!
マジかよ!! 桜は?! どこいった?!
って言ってる場合じゃねぇ……!!
めちゃくちゃ引っ張られてる感じだ!!!
ぐっ……この景色すらわかんねぇこの感じ……!
うおおおおぉ……!! ヤバい吸引力……!! だ、だいそーん!!
ぐおおおぉ……!!
た、魂まで歪みそう……!! はぁ? 誰の魂が歪んでんだ!!
オレは素直なレイリィ君だぁーーー!!!!
心の中で叫びながら、さっきまでいたんだろう星が段々豆粒みたいになっていくのを、オレは見送るのだった。
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