2.9話 ニケさん開き直る
前回のお話:ニケさん全裸
夜の帳も下がりきった、漆黒に包まれたアーサの街。
その一角にあるとある宿屋の、灯りすら消された暗い部屋。
その部屋のベッドの上で、二人の(見た目は)少女が向き合っている。
片方は褐色の肌で黒髪、片方は透き通るような神々しいまでの白い肌に、亜麻色の髪。
その構図はさながらオセロの駒か、囲碁の石といったところか。
そして、今まさに、黒側が攻勢に出たのだった。
「……アタシって、そんなに魅力無いかな……?」
はぁ……。
ニケさんったら、とんでもねー事を言い出してくれちゃったよ。
この手の質問って、どんな返し方しても、中々に事故るんだよなぁ……。
まぁ、正直な感じで答えるしか無いかねぇ……。
「……そんな事は無いぞ?ニケは可愛いとは思うぞ。
でもさ、オレとしてはだ。
そうだなぁ……。ニケが娼婦なら抱いたっていい。娼婦ってそういう商売だからな。もちろん金も払うさ。
もしくは、ニケが、オレの事が好きで好きでしょーがない!愛してるー!ってなら抱いたっていい。好きな相手に抱かれるのは、嬉しいだろうしな。
でも、そのどちらでも無い、ただのお礼ってなら、オレには、ありがとうって言ってくれたら十分なのよ。」
てか、何で急にこんな事言い出してんだよ。
……ん?
まさか、またこの世界の常識というヤツか?
カルチャーギャップか?!
「ありがとう……か。それは……もちろん思ってるよ。だからなのに……。」
「おお、じゃあ、それでいいよ。てことで、服返してくれ。」
「アタシも……一応、こんなでも女なんだよ?」
「知ってるよ。」
「もう嫁いでたっていい歳なのに……」
「ん?ニケって、いくつなの?」
「もう15だよ。」
なにィ?!意外といってるな?!だいぶ栄養失調じゃないか?あんまり成長出来てないじゃないか!!
って、それもだが!
15で結婚って……そういう世界観なのか……。
まぁ、バカスカ人が死んでたし、ニケの成長具合見ても、納得は出来るけど。
日本だってかつては、そんな時代もあったらしいからなぁ。
「ニケって、わりとお姉さんだったんだなぁ」
「え?レイっていくつなの?」
んー……難しい質問だなぁ。
39で死んで、肉体的には10歳ってところなんだろうが……
目覚めてから3ヶ月ちょっと。
まぁまだ半年経ってないな。
うーん。
「まぁ、そうだなー。身体的には10歳って感じだ!」
「えっ?!こんななのに?!」
――ポヨン!
おお、まぁ、Bくらいはあるよな、多分。
なんか、そのうちロリ巨乳とかにならないか心配ではある。
正直、自分にそんなもんがあってもな……って感じだからなぁ。
ってか、ニケさんったら遠慮なくポヨンポヨンとしやがりますなぁ。
「まぁ、歳の割に成長は良いかもな。」
「そっか……でも、レイは神様なんだし、変では無いのかな……?」
ニケさんよ。
首を傾げるなら、その手を離してからにしておくれよ。
「じゃ、まぁ、そういう事で、そろそろ離そうか、その手。」
「あ!ご、ごめん!つ、つい……」
「ん。明日から情報収集しないとだかんな。それなりに大変かもだし。しっかり休もうぜ?」
「う、う……ん。あ、で、でも!」
「でも?」
「その気になったら、遠慮……しないでね?
アタシも……ほら、いつまでも処女だと……ね?恥ずかしいし!」
何を言ってるんだ、コイツは……。
「恥ずかしい訳あるか。一生に一度しか無いものなんだぞ。大事にして然るべきだろ。」
まぁ、今のオレなら、戻す事は可能だけどな。
若返らす事も出来るしなぁ。
ただ、時間が経ち過ぎてると……記憶を消すのは大分マズいと思うからな。
もしそんな事するにしても、あくまでも、肉体的にって感じになるだろうな。やる予定は無いが。
「そ……そうか……そんな風に、レイは思うんだ?」
「そりゃ、まぁな。」
「……だったら、やっぱり、レイに抱いて欲しい。」
「な?なんでだよ?!てか、大体だなぁ、今日会ったばっかりで、決めるの早くないか?!」
と、言いつつ。
オレも会った初日に惚れてしまった事があったな。
所謂一目惚れってヤツだ。
結局、上手くはいかなかったが……な。
「だって……レイってさ、ちょっと変だけど、なんか、優しいから……。イメージしてた神族と、全然違うし……」
……神族って、他種族からのイメージ悪過ぎないか?
マジで何してやがるの?オレ、特別良い奴ってワケじゃ無いと思うがな?
「ふむ。まぁ、オレが変なのは、そうなのかも知れんけど。……仲間達にも言われたしな。
そうそう。仲間達と離れ離れになっててだ。
オレだけイイコトしてたらマズイだろ?もし合流した時にバレたら、怒られちゃうと思うわけよ。」
おお?これは良いセリフなのでは?
魅力や好意のせいではなく、境遇のせい。
めっちゃ無難だろ!
「……そっか。それは確かに……そうかも。」
よし!きた!効いたようだぜ!
「……分かった。」
「お。」
遂に納得したかー!年頃の女の子は難しいぜ……!
まぁ、何事も無くて良かった良かった。
「……アタシも、仲間探し、ちゃんと手伝う。」
「おお、そっか。それは助かるな。」
「だから、連れてって。ずっと。」
……ん?ずっと?とは?
「アタシも、レイの仲間になる。」
「はい?!」
「どうせ、アタシには帰る場所も行く宛ても無かったし。レイと居る方が楽しそうだし。」
「いやぁー?!危ないんじゃないかなぁ?楽しくは無いかもよー?」
「いいよ。そんなの。レイが助けてくれなかったら、アタシはあの時死んでたんだから。」
ニケは、話しながら何かを確信したように、ハッキリした口調になっていった。
「そうだよ。アタシの生命は、アタシの全ては、もうレイのものだよ。だから、死ぬまでついてくし、レイの好きにしてくれていいんだよ。」
うわぁ……。お、重ぉ……。
ど、どうしてこうなった……?!
オレは、少年が死にそうと思って助けただけだったのに!
はぁ……。
そういえばオレ、少年を助けて死んだんだっけ……。
少年は鬼門なのか……?!
いや、少女だったとしても、あの状況なら関係ないか。
「ニケ。ニケの人生は、ニケのものだぞ。オレは別に、何かを期待して助けたってワケじゃないぞ。
そりゃ、ここまで案内してもらったけどさ。
だから、好きに生きればいいんだよ。」
ニケは、ニコッと笑った。
「そっか!好きに生きるよ!だから、レイにずっとついてくね!」
……もう手遅れのようだった。
「あ、それと。」
「え。まだ何か……」
「抱いてくれないなら、せめて抱っこして寝て。それくらいいいでしょ。」
「……はいはい。」
はぁ……。
女の子のご機嫌取りは、疲れるな……。
寝よ。
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