1.30話 心境の変化?
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リアル風抜刀時
……身体痛ぇ!
と、感じて、起き上がろうとするも、上手く動けない。瞼は開けたのだが……視界はボヤけている。
目を擦りたいが、腕すら動かせない。とにかく全身が、物凄く痛い。
特に……背面が痛い。
なんでだ……??
徐々に視界が鮮明になって来ると、黒い石の天井が見えてきた。
あー、館……だな。
どうやら背中の痛みは、固い石の上に寝かされてるからっぽいな。全くもって弾力性の無い感触が、背中から伝わってくる。
んー。多分、神狐の間だ、これ。
おそらく、神力切れだな……。
うん。少しずつ、状況が理解出来てきた。
首もあんまり動かせないようで、仕方なく、目線のみで右手側を見る。
「……フウカ?」
絞る様に出した声は、カスカスで、変声期より酷い声だった。
「……む?レイ殿!目覚めたかえ!」
「ご主人様!」
左手側から、お師匠さんの声もした。
「……あー……オレ、どう……なってんの?これ……。動け……ないんだけど……」
「覚えておられませんか?神力枯渇で、倒れられたのです。」
「……やっぱそうか。」
オレの問いに対し、お師匠さんとフウカは、出来る限りの説明をしてくれた。
なんでも、獅子人との戦いの時、オレは「ムカついた」と言って、神能を全力で使ったようだ。その辺りまでは、薄ら憶えてるが……そこまでだ。
どうやら、神能を全力で使った結果……神狐の民全員(お師匠さん、ルビィ含む)は、概ね一、二時間程前の状態と場所に戻り、大猫族は、その殆どが子供か赤子に戻ったとの事。大猫の長とかいう獅子人は、胎児の状態だったらしい。マジか。
リセット……エグいなー。思ってたよりヤバい能力なのかも。
で、オレは、その獅子人の爪を受けてなのか、現地で倒れていたそうな。神力も枯渇してて、危篤だったらしい。
更には、
「あれから、一月も寝ておられたのです。」
という事みたいだ。
神狐の間の、例の石の上に一ヶ月……。そりゃ、背中も痛いわなぁ。
「目覚めたのであれば、じき起き上がれようえ。
此度の事、誠に感謝致すえ。」
「いや、普通にアイツ、ムカつく奴だったからさ……。」
「ご主人様。お護り出来ず、申し訳御座いませんでした……。」
「いやいや、お師匠さん、強かったじゃない。ちゃんと護ってくれてたしさ。ありがとうね。」
「そんな……。」
お師匠さんは、それきり俯いて黙ってしまった。
最後のは、オレが勝手にやった事なんだから、気にしなくていいのにな。
「ルビィとリンコは?」
「今はいつもの様に、修行の時間でございます。」
「無事ならいいんだ。
あ、そうだ。大猫族は、どうしたんだ?」
「子供になった者達は、自ずから住処へ帰ったぞえ。
赤子は、こなたらが面倒をみておるぞえ。」
「そうなのか……。そんなんでいいのか?」
「問題無いえ。クコの森は、恵が豊富ぞえ。それに、こなたらには、実質的に被害は無かった事になった故な。」
それは、心が広いでございますな。まぁ、当人達がいいならいいさ……。
――
翌日。
治癒を使えるくらいに回復したので、やっと起き上がる事が出来た。
神力が回復したら、身体的なリハビリが要らないとは、便利な身体である。
前世で二ヶ月入院した時は、その後のリハビリが大変だったもんなぁ……。
そういえば、火の山で倒れた時は、その原因になった時の夢見たな。
今回は、夢すら無かったけど……。何でだろ。
うーん……。
まぁ、考えても分かんないから、いいか。
そんな事より、朝食だな!
今日のメニューは何だろなー!と、神狐の間を出た所で、
「ご主人様!もう歩かれて平気なのですか!」
おそらく様子を見に来たのであろうお師匠さんと出くわした。
「おはよう!お師匠さん。もう大丈夫みたい。心配かけてごめんね。」
「いえ……そんな。」
「食堂行こうかー!てか、皆は?」
「皆様は、集まられておられるかと……。」
「お、じゃあ、早く行かないとだなー。
てか、そういえば、オレの分、あるかな……?」
うーむ。
食堂行くのも久しぶりなわけだし?用意されてない可能性が濃厚だなぁー。濃厚なのは、ラーメンスープだけにして欲しいが。ま、無かったら、何か作ろうかな。
「ご主人様……。お願いがございます。」
「ん?なに?」
振り返ると、普段からあまり表情の変わらないお師匠さんが、やたらと神妙な面持ちをしていた。
思えば、お願いなんかされた事無いな……。な、何だろう……。あんな思い詰めた感じで言わないといけないような事なのか……。
そういえば、お師匠さんって言っても、今日は何も言わなかったぞ……?こ、これ、よっぽどの事なんじゃないのか?!
オレで叶えられる事だといいけど……。大丈夫かなぁ……。
内心、戦々恐々としつつ、次の言葉を待つ。
その僅かな時間が、永遠かの様に感じてしまう。
そして、少し間を置いて……消え入る様な声で紡がれた言葉は、
「私に……名を、お授け頂けませんか……。」
という事だった。
……おおう。拍子抜けだ。
「……え?何?そんな事?!
勿論いいよ。改まって言うから、もっと凄いお願いかと思ったよー。」
何だよー。そんな事かぁー。ビビらせてくれちゃってぇ。はぁー、吃驚したぜー。
てか、実は前々から名前の候補、色々考えてたりしたんだよなぁー。漸く、その気になってくれたのね。
よーし!じゃあ、まぁ、朝食はまた明日だなー。
「じゃあさ、神狐の間、戻ろうか。
実はもう考えてあったからさ!」
「え……?あ、はい。」
――
神狐の間、石台の前。フウカに名前を付けた時の様に、鬼の少女が目の前で片膝をついている。
ずっと拒んでいた、名前を付けるという話を、何で急に受けたのか……。よく分からないが、気が変わらない内に済ませてしまおう。
そう考えて、朝食を諦め、儀式をしてしまう事にした。
「よし!では!始めます!」
「はい。」
「この者に、闇御津羽天弥媛神の名を与える!」
この少女の名前を考える時、ソールフレイヤ様が、オレにやたら長い名前を与えた理由が、ちょっと分かった気がしたんだよな。
意味や願いを込めると、長くなるわなー。
酷い女神なのかと、ちょっと思ってたけど、そうでも無いのかもな。
「おぉ、きたきた。」
目の前の可憐な少女は、宣誓と同時に淡く輝きだす。
その輝きは、白、黒、碧、翠、黄、紫……と、様々な色彩の粒となり、螺旋を描き立ち昇りながら、徐々に光度を増していく。
光度が増すに比例して、力が抜けていく感覚に全身が支配されていく――
フウカの時よりイルミネーションが派手だ。いきなりぶっ倒れなくて良かったー……。
と、思いつつも……光が少女に吸収される様にして収束する頃には、やはりオレは立っていられなかった……。
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心境の変化に到った経緯は↑こちら!




