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【神世界転生譚】 リセットしたいとは言ったけど、こうじゃないだろ?!神になるとか聞いてない!  作者: Resetter
第三章

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120. 孵化



 

 「ねーボスーほらー! みてたー?」


 「おお、ルビィすごいじゃないかー」


 なんだか……のんびり過ごすのも久しぶりな気がするな、オレ。


 今日は、ルビィの修行風景を見ながらボーっと……もとい、卵を温めている……いや、神力を流しているのだ。



 まぁ、部屋に籠って卵に神力流してるんでもよかったけどさ。

 

 ルビィが新しい技出来たって言うし、見に行こうかなって感じで。こうして見ているってわけだな。


 

 ちなみに卵は抱っこ紐的な感じで装着しているのだ! ちょっと懐かしいなぁ、抱っこ紐。息子が小さかった頃を思い出すぜ……って、まぁ、卵は動くわけじゃないし、手足もないけどな。


 ふーむ。

 しかし……もしかしたら。地球で元気だっていう我が息子、今のオレよりでっかくなってるんじゃないか? 肉体年齢的にはありえなくはないよなぁー。


 「ルビィ様も、風の力を使えるようになったようですね」


 隣からの声に、ふと思考を戻された。

 


 「おお、ホントにちゃんと修行してるみたいだなー。偉いもんだよ」


 得意気に風を操って見せてるルビィを、まぁ……当然のようにアマネはオレの隣で見ているわけなんだよな。



 「ねー? ボスー? みてるー?」


 「おお、みてるぞー」


 今までルビィは神能を使う時、基本的に狼型に戻っていたが、今は人型でしっぽをブンブン振っているのだ。まぁ、美少女だし、これはこれで悪くはないな。


 

 そしてルビィは決め顔である。


 「ほらーいくよー? 風狼(ブロウ)


 渦を巻くつむじ風が、あっという間に起こったかと思うと……みるみるうちに。



 「あ」


 「ああ~!?」


 竜巻になって……


 ――ゴバアッ!!


 デカイ音を立てながら、修行場を何かの跡地にしてしまったのだった。



 「ルビィしっぱい……」


 そして、砂粒と小石が雨のようにパラパラと降り注ぐ中。反省のポーズなのか、がっくり肩を落として、耳をペタンとしたルビィである。たまにしゅんとするんだよなー。



 「これはまた……フウカ様に知れると……」


 そしてアマネが追い打ちをかけているのだが。まぁ、オレとしてはだ。


 「まぁ、バレる前に戻しとくわな」



 「ボースぅー……」


 ちょっと涙目で上目遣いのルビィの頭を軽く撫でて、廃墟みたいになった破壊現場に立つ。

 


 大気に意識を溶け込ませるように、神力を流していく。

 

 

 うんうん。


 まぁ、かなり見知った場所だし、今なら戻す時間も大したことない。そんなに苦労することもないな。



 というわけで、3分も戻せばいいだろうと、さくっとリセットである。ふむ。インスタントラーメンだなぁ。そういえばそういう便利な食料とか、この世界にきてから見てないなー。まぁ、食事が必要ない身体なんだが……。


 

 「ご主人様、卵への神力注入と並行してそのような……あまり無茶をされないでください……」


 ん? なんだかアマネに心配されてしまったな。まだまだ神力枯渇までは余裕あるけどな? ほんと、再会してから心配性に磨きがかかったよなぁ……。


 「ま、だいじょうぶよ、これぐらいならさー」


 「そう……なのですか? 以前なら倒れられても不思議はない神力の消費量でしたが……」


 え? そうなの?


 ふーむ。


 ってことは、ちっとは成長してきてるのかねぇ? アーズガルズでのヒドイ生活も無駄じゃなかったのかしらん。ここから旅立って以降、修行ってほど修行もしてな……あ!


 もしかして、アイカフィアーのこっつんこかなぁ……? 力を渡したとかなんとか……言ってなかったっけ?


 神族のシステムがいまいちわかんねーけど……思い当たるとしたらそれぐらいしかないしなぁ……。


 んー。


 まぁいいか。体感的にでしかないけど、まだまだ大丈夫そうなわけだしな。神力が強くなってるんなら、今後の戦い……は、したいわけじゃないけどさ。しかたなくだが……誠に遺憾だがっ……役に立ててやるんだからねっ!


 

 「ボースぅー!!」


 「あっ」


 内心で奥歯をギリギリしていたら、ルビィが飛び掛かってきていた。これはもう避けれんな。まぁ、避けたりはしないんだけどさ……。


 

――――

――



 今日も今日とて、オレの顔面はべちゃべちゃのねちゃねちゃである。


 リセットに感謝したらしいルビィに、これでもかとなめ散らかされたからな! その間、実に30分 (体感)


 もふみの足りない美少女姿だったが……な。どうせなら狼姿のほうがいいのだが……。まぁ、ルビィにはそんなことはわからないんだろうなー。



 「よっし、準備完了!」


 なんかもう拭くのもだるかったので。まだ昼前ではあるが、オレは早々に露天風呂を楽しみにきたのである。


 

 「言いつけてくだされば、ご用意いたしますのに……」


 風呂の準備はオレが担当だ。なぜなら、オレしか好んで入らないからな! でもアマネはそれが不満らしい。ちょっと唇を尖らせて伏し目がちになっている。


 アマネさんや。そんな顔するでないよ。そろそろ自分の顔面の破壊力がどんなもんなのか、しっかり覚えた方がいいぜ? オレに効く。


 いや、それにさ……準備しなくてもさ、毎回オレの身体はすみずみまで洗ってるよね……? だいぶ慣れたけどさぁ……まぁまぁ抵抗あるんだぞぅ?!



 というわけで、お風呂恒例の性別リセットをして、と。抱っこ紐を解いて、卵を持つ。


 なんだかちょっと発育の良さげな感じの双丘に、ピタッと収まる卵。なんとも言えない気分だなぁ。あらやだ、これって母性かしらん……?

 


 いやいや。ガワを女にしたとて、内面が変わった感じって全くないんだよな。だから違うはずなんだぜ! そう、違う! オレは男の子である!


 

 「さぁ、ご主人様。こちらへどうぞ……」


 という、全裸のアマネにやっと慣れてきたオレの心は、男で間違いないのだっ!!

 

 だって慣れるまで結構かかったんだもんよ!! オレは頑張ったよ!!


 


 そんなこんなで、アマネに隅々まで綺麗にされ。ちゃぷんと露天風呂に浸かったのだが。


 「そういえば先ほど、この卵を洗ったとき……少し神力を吸われたように感じました」



 アマネがまた、なんか言い出した。

 

 「え? そうなの?」


 「はい」


 「ふーん。コイツ、何でも吸うのかな?」


 だとしたら、中々食いしん坊だな。あんまりみんなに触らせない方がいいのかもしれん。



 「少しなので、私はあまり影響を受けておりませんが……しかし、どの程度で孵るのでしょうね?」


 「あーそれはオレも気になってたわ。長はその辺り、なんにも言ってなかったしなー」


 

 「すでに、かなり溜まっているように感じられますが……」


 アマネはジトっとした目で卵をみている。……竜族、あんまり好きじゃなさそうだな。まぁ、竜族の性質を考えたら、他種族が好感を持つわけもないんだがな。



 そんな怪訝な顔のまま、アマネはペタリと卵に手を置いた。


 「ああ、やはり私の神力も吸い込むようですね……」


 「お? だいじょうぶか? それ。あんまり無茶したら――」



 その時突然、卵が光り出した。



 「あ」

 

 「うお?! なんだこれ?!」


 ぽわっとした光かと思ったのもつかの間。閃光のような光が卵から迸り、辺りを包んだ。目がァーって言いたい。


 ――ピキピキッ

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