白い竜族
フィーネの背に乗り再びの空の旅。
空の果てなんて言われるここ、空の浮島。惑星内の星々を見下ろし、外世界の星々も見える深い蒼の空間は、美しいものである。
上空からの景観は、木々の織り成す緑、島を包む白い雲、滝や泉の青……まさに絶景スポットだなぁ。
まぁ隠密なのでね、騒いだりはしないんだけど。
つっても、騒がしいやつなんて、この乗り物的な焼鳥くらいなモンで……ん? ノリモノ? まさか……
で、そのノリモノ目立つ問題は……と言うと。
フウカの静夢幻の力で、蜃気楼的な幻術結界的なものを展開してもらった感じなのだ。
ステルス神鳥爆誕というわけなのさ。まぁ、元々デカイクセに羽音はしないんだよな。喋らなければ静かではあるんだ。喋らなければ。
しかし、この騒音派手焼鳥、どうも多種族からなっているだろう竜族に、よくもまぁ単身特攻してたよなぁ……。
何がそんなにコヤツを駆り立てていたのだろうか……?
まさか……
やられた! やり返す! やられた! やり返す! って繰り返してただけか……?
まさかだが、ありえそうでこわい。
「もうすぐ着くわよ〜〜〜ん。」
やはりフィーネは、飛行速度がやたら速い。星間移動の時ほどにはスピードを出していないが、もう着くとのこと。
遥か眼下には、青々とした山と、白っぽい山など、何やら不思議な小島がある。
「ん、じゃあ、ゆっくりと降下してくれ。入口と思わしき辺りがいいな。ど真ん中だとヤバいからさ。コソッとだぞ?」
「わ〜かってるわよ〜〜ぅ! レイリィきゅんったら心配性ねぇ〜ん? そ〜んなに怖がらなくてもぉ〜ん、ワタシが守ってア・ゲ・ル♡」
あ!? バカそんなこと言っ……
どうやら既に遅かったらしい。オレの耳にはチキッという鯉口を切る音が届いてしまった。
「ヒョッ……?!」
「ご主人様をお護りし、お支えするのは私の役目にございます。異なことを仰らないでくださいませ。」
「ぶっ……ぶりざぁ〜〜どっ! 殺気がっ?! 冷たすぎよっ! この娘っ!?」
黒刃を突きつけられるフィーネ。だが、まだ全然着陸してないのよねぇ……。
「アマネ。堕ちちゃうからさ、とりあえず仕舞おうな?」
「……はい。」
少ししゅんとするアマネである。
「アマネの前であんニャこと言うニャんて、神鳥ってバカニャんニャ?」
ウィトがそんな事を言ったのだが。コイツ、高いとこ嫌いだから口悪くなってるのかな。まぁ、堕とされたくはないわな。わからんでもない。
「ふむ……。永きの生とは、大変なことなのやもしれぬぞえ。100にも満たぬこなたには、まだまだ知れぬことえの。」
フウカはそんなふうに答えていた。どうやら100歳以下ではあるらしい。実はアマネより歳下なんだなぁ……。
いやぁ、女性の歳は分かりにくいなんていうけど……神の系譜ともなれば、年齢なんて見た目に比例するわけがないかぁ。
「ボスー?」
「ん?」
「ボスはルビィがまもるよ?」
「おお、そうだな。」
ルビィは首を傾げながらそんな事を言っていたから、撫でておいた。
そして、山間に差し掛かると、確かに下方から時折キラリキラリと光が反射している感じだった。
「フィーネ。島には降りたことあるか? この辺り。」
「え〜? あるわけな〜いじゃなあ〜い。ワタシはぁ〜竜族と戦いに来てたのよぉ〜ん? 休憩しに来てたわけじゃないのよ〜ん?」
あ、はい。そうですか。そうなんでしょうね。
「ん。まぁわからんってことなら、ゆっくり降りてくれ。後は歩きで慎重に……」
「えぇ〜? ギラギラポイントはもうちょっと先よぉ〜ん? すぐ着くわぁ〜ん!」
「いや、そうじゃなくてだな……」
フィーネは張り切って山間を縫うように飛び……
「ここよぉ〜ん!」
晴れの日の湖面のような、混じり合った反射光が照らす場所の上空へとあっという間に到達し……
「降りるわねぇ〜ん!」
フワッと……ではなく、ギュンッというスピード感で降下してくれやがりました。
いや、そんなこと言ってないだろ……! 島の、山間の入口辺りって言ったろうよ!
そして、辿り着いた先は、確かに水晶のようなものがそこかしこにある、煌めく鏡の世界か宝石の園か……みたいな場所だった。
のだが……
「ナニモノダ……」
なんかいたんだよ。慎重にいきたかったのによ! 背後から声がするんだわ!
背中にかなりの圧を感じつつ、くるーりと振り返ると……
いたよ、いた。白い竜! でーんと伏せのポーズだわ! ん、なんだか綺麗だな。神々しいまであるぞ。
赤い竜族とか、禍々しい感じだったが……コイツはあんまりそんな感じじゃない……
じゃないわ! 喋っとるやんけ?!
はぁ?! グオオの民じゃないんか?! 竜族ってのは!
「え、てか、言葉通じるのか……?」
「ナニモノダ……ト、キイトル……。コタエヌナラバ、ツウジテオラヌダロ」
おいおい……皮肉ったコメントまでしてくるとは。イントネーションというか、なんか響きは変だが、めちゃくちゃペラペラやんけ、コイツ! どういうこった?!
「いや、すまん。オレはレイリィ。レイリィ・セトリィアス・ミデニスティースだ。アズ神族、創造の女神のニルヴァだな。で、まぁ他のみんなは仲間だな。」
白竜は、座ったまま首だけ動かして、こちらを見下ろしている。
「ソウカ。ナニシニキタ。」
おお?! マジで会話成立してないか、コレ!?
オレの翻訳コンニャ……スマホアプリ、使わずいけてまっせ!? とにかくチャンスだ!
「そうだな……用件としては、竜族からの被害を減らしたい……って感じかな。だから、対話が出来るならしてみてさ。竜族ってのがどんな存在なのか知りたかったってのはあるな……。まぁ、全く無理ならちょっとずつ戦力を削ごうかな……って感じだな。」
さて。ありのまま正直に答えてみたが、どう出る?
「ソウカ。」
……ん? それだけ? なんでまた伏せちゃった? いやいやいや、オレわりと物騒な感じの物言いもしたぞ? そんな反応でいいのか?!
「ソ……ソウダヨ? だからさ、代表とかいるんなら話したいんだが?」
「ワレハネル。オサナラバオクダ。」
……え? なんだこの対応は……? いや、警戒心とか無いんか? 無いことはないな、最初は警戒したから聞いてきたんだろうし。
で、なに? 寝るって? いや、本当に寝たぞ……? 前脚に頭を乗せちゃって、すっかりすやすやモードだわ。赤ちゃんかよ。
うーん。異文化ぁー!!
「ま、まぁいいや。奥ね。」
そうしてオレたちは、水晶谷の奥へ進むことにした。
まぁ、罠の可能性も捨てきれないからな、警戒だけはしないとだな。
しかしまぁ、どういう事なんだろうな? コイツだけが話せるタイプなのか、白の一族とやらは全部そうなのか……
わからんが……、他国の言語的な感覚だったら、アイツだけが話せるって感じかもなぁ……
神族との繋がりみたいなもんがあったのか?
うーん。あるとしても、今は多分最高神の手下にいるくらいの話だしな。
しかもそれが白の一族とも限らんしなぁ……。
まぁ、考えても分からんな。その長とやらに聞いてみっかね。
おねんね竜があの感じだし、いきなり襲われることもなかろうよ。
しかし、ここの景色はなんというか神秘的だなぁ。
深い谷間。壁を織り成す水晶。吸収し反射されて行く光の中を、ゆっくり歩く。
ただの観光だったらいいのにな、と少し思った。
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