星空の下の露天風呂で
女子ーズたちのお着換え……もとい、装備配布が終わりまして。
美味しい夕食もね、なぁんか変なのがいたからか、ちょっとうるさかったけどさ。
あの焼鳥……もとい神鳥フィーネ。鳥食って"おいしぃわ~ん!" とか言ってやがった。
共食いじゃねぇのか? と思ったけど、まぁ肉食の鳥ということなんだろう。
まぁいいのさ。あんなやかましいヤツのことはさ!
今は久々に、ゆ~~~っく~~~りしてんだ。
そう、神狐の郷名物、露天風呂だ! (オレが造った)
満天の星空の下、大自然に囲まれた露天のヒノキと岩の風呂。
贅沢だぜ! 最高だ! お湯張りも掃除も全部オレだけど! その価値があるってもんよ!
それに。
もふもふたちは、あんまり風呂好きじゃないからさ。来たとしてもさっさと出て行ってしまうからさ。
静かに過ごせるってわけさ!
ルビィなんて、風呂行くか? て言うと急に寝たフリしよるからなー。水浴びは好きなクセに。滝行を水浴びとか言ってるくらいだしな。
まぁ、汚れは最悪リセット出来るしさ。無理強いはしないのだ。
それにしても、いい夜空だなぁ~。
あの赤い巨大星が火の星だろー。
あっちの白いのがエルヴァルドかな?
もう一個のでかいのが、この前迷い込んだアルヴヘイムだろうか?
オレが飛ばされてたアースガルズは、テイルヘイムより下側らしいからな。神狐の郷からは見えないっぽいな。
そのさらに下にあるというミッドガルズなんて見えるわけないよなー。
ニケは元気かなぁー。ちゃんと飯食ってるかなぁー。
まぁ、一緒に傭兵生活してたわけだし、大丈夫だとは思うけどさぁ。意外と神具で無双してたりしてなぁー。
そんなふうに、ぼーっと煌めくお天道様を見ながら考え事をしていたら。
「こうして、ご主人様とゆったりと過ごせるのは……ずいぶんと久方ぶりに感じます……」
隣からアマネの声。
まぁ、アマネはいるんだよね。別に風呂苦手じゃなさっぽいしさ。
そんなわけでオレは今、女神姿なのである。秘技、性別リセットだ。
まぁ、風呂のマナーだな。女同士だから問題ナッシングというわけだ。
決して自分の女体に興奮してるわけじゃないぞ。断じて違う。
「んー。オレとしては久々感あるけどさ。神様時間だと一瞬じゃないの?」
「……私は……ご主人様と離れてしまった時間は……永遠にも感じられました……」
そ、そうですか……。
そんなことを呟くように吐き出しつつ、きゅっとしがみついてくるアマネさんである。
で、でもな? オ、オレ、確かに今女神なんだけどさ? そんなにくっつかれると、ねぇ? ちょっとこう、やわらかさ×やわらかさみたいになって……
変な気分になってしまうぞい! ぷよぷよフィーバー消えちゃうよ!
よし、こうなったら真面目な話だ! それしかあるまい!
「あー……、アマネ。竜族だけどさ。」
「はい。」
「あのフィーネの言葉の感じじゃさ、対話は難しいっぽいよなぁ……」
「そうですね。」
「まぁ、この前倒したヤツも対話どころかって感じだったしなぁ」
「そうですね。私も対峙したのは初めてでございましたが……。アレは、何か種類の違う生物……そのように感じました」
「種類の違う生物かぁ……」
そういう言い方だと、オレもすでに神族だが……まぁ、人間の頃の意識が強くあるままだ。
神々は、何と言うか独特の価値観っぽいし、ルビィたち獣族も独自の文化で生きてる。
アースガルズの人間たちは、言葉は通じたが会話が出来ないやつらはいた。
アマネは……鬼族だけど、いつもこうして話はしてくれる。価値観は全然違うけどさ。
対話ってのは、結局のところ、擦り合わせなんだと思う。
考え方の違う者同士の、妥協点の探り合い。
アマネの言う通り、竜族に関しては難しいかもなぁ。
たとえ言葉の通じる個体がいたとしても……
他の生物は全部餌だ! ってのは、単なる生存本能で、そういう生態なんだからな。
妥協点なんかあるんだろうか?
チラリとアマネを見ると、夜空を見上げている。まぁなんと可愛らしい横顔だこと。
で、そのアマネも今や神化してる。
オレたち神族は……神力さえ補充出来れば何も食う必要がない。
てか、全ての生物の行きつく先……死は、神力化だ。冥土に行く個体もいるそうだが、大体は星に還るのだ。
神力になる。つまりは、この世界の全てが最終的にはオレたち神族の餌ということになる。
だが、食の楽しみを忘れられない元人間のオレは、わざわざ美味いものを求めてるわけだ。
……そういう業なのかね。
そんなオレに、竜族との対話だなんだという資格はないかもしれないなぁ。
竜族も結局は同じことをしてるだけだもんなぁ。
どう的にしてるかの違いなだけだ。
そして、当然だが、オレはこの郷のみんななんかを餌になんかされたくはないわけで。
はぁ~。こうして戦争がおこるんだろうなぁ……。
「……ご主人様? 何かまた考え事でございますか?」
「ん? ああ、そう。考え事。」
「……私は、ご主人様がどのような選択をされても、必ずやお傍でお支えいたします。……たとえこの身が滅びようとも、必ず……」
「いやいや、アマネ。助けてくれるのはありがたいけどさぁ……。オレより先に逝くのはナシだ。そういうの、見たくない。」
いや、本当に勘弁して欲しい。
親しい人物がひとりまたひとりと居なくなっていった前世。マジでキツかったからなぁ……。
「……で、ですが……」
「もっと、ちゃんと……生きるってこと考えてくれよな。」
「……私には……ご主人様のいない世界など……いいえ。ご主人様とずっと一緒に……ずっとお傍に……」
あ、ちょ、ヤバイまたアマネ泣きそうだ! あや……あやさなければ!
「あ、アマネ、アマネが飽きるまでそうしてたらいいからさ……な、泣かなくても、な?」
「……ほんとうですか……?」
「お、おん。」
うーん。コレ、オレ先に逝くんじゃね?
この鬼美少女、殺しにきてるぞこの顔。顔面偏差値が心臓破りすぎるわ……。
ふぁー。ゆっくり……してたはずなのに。やっぱりちょっとダメージ受けてるぜ……。
ま、しゃーないかぁー。
「なぁ、アマネ。」
「はい。」
「楽しく幸せに生きてこうぜ!」
「……楽しく……」
アマネはなんだか考え込んでしまった。楽しいという概念はまだ難しかったかな。
ま、おいおいだね。
ん。ひとまずは、竜族問題だな!
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