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【コミカライズ】最強の剣神、辺境の村娘に生まれ変わる。  作者: 虎馬チキン
第2章 入学編

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27 目が覚めて

「うーん……」


 ちょっとした寝苦しさを感じながら、私は目を覚ました。

 どうやら、私はベッドに寝かせられているらしい。

 だが、動くのはキツそうだな。

 体中が重くてダルい。

 そして、痛い。

 特に腹が痛む。

 最後、アレクにぶった斬られたところだ。


 目を開けば、見慣れぬ天井が見えた。

 だが、全く見覚えがない訳じゃないな。

 どこかで見た事がある。

 どこだったか。

 屋敷の客間だったか?


「どうやら、目が覚めたようね」


 そんな、割りとどうでもいい事を考えていた時、ベッドの脇から聞き覚えのありまくる声が聞こえてきた。

 そっちに目を向けてみれば、クールな眼差しの女の姿が。


「ユーリか」

「ええ、そうよ。記憶はハッキリしてるかしら、先生(・・)?」


 お、私の事を先生と呼ぶという事は、アレク辺りから事情を聞いたな。

 まあ、それは置いといて、とりあえず質問に答えるか。


「ああ。記憶も意識もハッキリしてるぞ」

「そう。それは良かったわ。アレクに無様に倒されたという屈辱の記憶が先生の中から消えなくて」

「お前は相変わらず口が悪いな。それと、私の事はリンネさんと呼べ」

「わかったわ、リンネ」

「呼び捨てか! まあ、別にいいが」


 師匠に対する敬意が足らん。

 ぶっちゃけ、弟子どもの中で私に敬意を払ってたのはアレクだけだ。

 そのアレクでさえ、そこまで敬ってはくれなかったしな。

 ……マジで、もう一度教育してやろうか。


「ん? そういえば、なんでお前がここに居るんだ? 仕事はどうした? サボりか?」

「ちゃんと有休取ったわ。私が居るのは、あなたの治療の為よ。

 アレクは治療院に連れて行こうとしたけれど、さすがにボロボロの剣神が瀕死の幼女を抱えて行ったら、変な噂になりそうだもの。

 だから、私を含めた屋敷の治癒術師で対応したのよ」

「なるほど」


 想像してみる。

 いい歳した公爵様が、ボロ雑巾のようになった美少女を治療院に連れ込む姿を。

 事案だな。

 少なくとも、剣神としての権威は急降下するだろう。


「はぁ。それにしても、今日は入学式だったのだけれどね。

 娘の晴れ姿を見逃しちゃったわ。この埋め合わせはしてもらうから」

「ああ、私そんなに寝てたのか。

 というか、アリスは元気か?

 お! そういえば、お前らが私の跡を継いだって事は、あの子は正式に私の孫娘になった訳か!

 なあなあ、元気なのか!?」

「……まあ、体は元気ではあるわね。

 最近は色々悩んだり、悪い虫につかれたりして苦労してるけれど」

「なんだと!?」


 アリスに悪い虫だと!?

 許せん!

 即座に駆除してくれる!


「ああ、その害虫は高位の貴族だから、安易に殺したりはしないでね。問題になるわ。

 今、政治的に追い詰めているところだから、邪魔しないで」

「ぬ……! ぐぐぐ……そういう事なら我慢しておこう。

 だが! 必ずお前らが潰せよ!」

「言われるまでもないわ」


 一見わかりづらいが、そう語るユーリの目は怒りに燃えていた。

 どうやら、ユーリとしても、その害虫に関してはかなり腹に据えかねてるようだ。

 これなら、任せても大丈夫そうだな。


 と、そこでユーリが思い出したように、ベッド脇に置いてあった呼び出し用のベルを鳴らした。

 多分、私が起きたら鳴らすように言われてたのだろう。

 忘れてたのか。


 そして、そのベルが鳴ってすぐにアレクが現れた。


「師匠! 目が覚めたんですね!」

「ああ。悪いな心配かけて。それと、私の事はリンネさんと呼べ」


 駆けつけて来たアレクは、私と違って完全回復していた。

 体に傷は見当たらないし、左腕もくっついている。

 というか、その左腕で部屋の扉を開けた。

 それも勢いよく。

 ……なんだろうか。

 今になって悔しさが。


「こらっ、アレク。左腕はまだ使わないようにって言ったでしょう? 傷口が開いたらどうするの」

「うっ、ごめんユーリ」

「ヒール。まったく、気をつけなさい。

 私としては、先生よりもあなたの方がよっぽど大切なんだから」

「ユーリ……!」

「おーい。人の目の前でイチャつくなー」


 仲良き事は素晴らしいが、時と場所を考えろ。

 そういうのは、寝室のベッドの上でやれ。

 私も昔、似たような事を言われた。

 それを言った奴は、呪い殺さんばかりの嫉妬の目つきをしていたが。


「旦那様! よくぞお目覚めに!」

「ご無事なようで何よりです」

「ああ」

 

 続いて、トーマスとメアリーがやって来た。

 これで全員集合……じゃないな。


『…………』


 扉の前に、大量の執事&メイドがいる。

 全員が奇っ怪なポーズで部屋を覗き込んでいたが、すぐに我慢できなくなったのか、部屋の中に雪崩れ込んできた。

 しかも、続々と集まってくる。

 番兵どもまでやって来た。

 客間が狭く感じる!

 

「旦那様! 本当に旦那様なんですね!?」

「わ~! こんなに可愛くなっちゃって~!」

「眠り姫状態も可愛かったけど、起きたらおめめがパッチリで尚可愛い!」

「これでスッピンとは……!」

「末恐ろしい!」

「あのクソ爺と同一人物とは思えないな」

「まったく、とんだ詐欺だぜ」

「一瞬ときめいた俺の心を返せ!」

「おい、誰かこのロリコン排除しろ」

「ラジャ」

「ぬわー! 何をするー!」


 ええい! 鬱陶しい!

 なんなんだ、こいつら!?

 あ! こら、頭を撫でるな!

 水を得た魚のようにはしゃぐんじゃない!

 というか!


「おい! こいつらにも私の正体バラしたのか!?」

「リンネ様が悪いのですよ。初日にあれだけ暴れ回れば、普通にバレます。

 ここにいるのは、あなたに(しご)かれた者ばかりなのですから」


 私の反論は、メアリーに切って捨てられた。

 うぐっ!

 そう言われると、何も言えん!

 くそう!

 ノリと勢いで襲撃なんてかけるんじゃなかった!


「まあ、でも、この状況はいけませんね。

 皆さん! 怪我人をもみくちゃにするものではありません!

 ふれあいの時間は後日改めて取るので、今は早く仕事に戻りなさい!」

「かしこまりました!」

「さすがメイド長! わかっていらっしゃる!」

「うし、仕事に戻るか」

「おう!」

「頑張るぞー!」


 メアリーの一喝によって、使用人軍団は退散していった。

 た、助かった。

 

「ああ、そういえば旦那さ……ではなくリンネ様。

 使用人一同にバレたついでという訳ではございませんが、リンネ様の正体は、どの程度まで他の方々にお話しになるのですか?」

「ん? お前らだけでいいんじゃないか?」


 トーマスの質問に軽く答える。

 私はそこまで前世の事を流布するつもりはないからな。

 あと伝えるのは、せいぜいアリスとマグマくらいだろう。


「いえ、それはダメでしょう」


 そこにユーリが口を挟んだ。

 何か問題でもあるのか?


「先生……リンネは自分の影響力を甘く見すぎね。

 たしかに、むやみやたらと流布するものではないけれど、それでも必要最低限の人達には知らせておいた方がいいわ」

「具体的には?」

「そうね……とりあえず、遠征中のマグマは確定。

 あとは兄上達、王家にも話しておくべきかしら」


 あー、王家か。

 となると、シグルスとフレアの二人だな。

 ああ、いや、あいつらの息子と娘にもか。

 前に会った時はガキだったが、今頃はそれなりに成長してるだろうし。


「屋敷全体にバレたなら、アリスにも話していいんじゃないか?」

「そうね、アレク。あの子だけ仲間外れにするものではないわ」

「では、私がお嬢様をお迎えに行きましょう。そろそろ学校も終わる頃でしょうし、知らせるのなら早い方がいいでしょう」

「お願いします、メアリーさん」

「では、私は王家の皆様への取り次ぎをして参りましょう。

 事が事ですので、近い内に内密の会談が執り行われる筈です」

「お願いね、トーマス」


 なんか凄い勢いで話が纏まり、メアリーとトーマスが部屋を出て行こうとする。

 だが、メアリーが何かに気づいたように動きを止め、私の方へと振り返った。

 どうした?


「そういえば、シオンさんはどういたしますか?

 彼も事情を知っているのであれば、ご招待する必要があると思いますが」

「あ」


 忘れてた。

 そういえば、シオンの奴、宿屋に置きっぱなしだ。

 そういや、アレクと戦う前に、メアリーにシオンへの手紙を渡したんだったな。

 危うく忘却の彼方に消し去るところだった。


「じゃあ、連れてきてくれ。あいつも一応、事情知ってるから」

「かしこまりました」


 そうして、メアリーは今度こそ去って行った。

 トーマスもいなくなり、この部屋にはアレクとユーリだけが残る。

 そして、ユーリがポツリと呟いた。


「……シオンって、あの入学試験にいた子よね。

 リンネ、あなたの正体って、どれだけの人間が知っているの?」

「ん? シオンの他には両親くらいだが。あー、いや、そういえばヨハンさんも知ってたか?」


 初めて会った時に、母がポロッとこぼしてたような気がする。

 それを聞いたユーリは頭を抱えた。


「この調子だと、不特定多数に話してそうで怖いわね」

「いや、他には話してないぞ。話した相手にも口止めはしたしな」

「口止めって……どうせ、誰にも話すなって口頭で伝えた程度でしょう?」

「よくわかったな。それに、私が前世の事を話しても殆ど誰も信じてくれなかったし、問題はないと思うぞ」

「……それを聞いて、少しだけ安心したわ」


 まあ、両親にはその内信じさせる予定だけどな。

 それが私なりの誠意というものだ。

 実の親を騙すような真似を、他でもないこの私ができる筈がない。


「そういえば師しょ……リンネさん。俺は正式に神剣を受け継いだので、グラムを使わなくなったんですけど、代わりにリンネさんが使いますか?」


 と、今度はアレクが話しかけてきた。

 ふむ。

 グラムか。

 ……あっても使いこなせる気がしないな。


「いや、いらん。今の私にはグラムでも身に余る。

 なにせ、自分の闘気にすら耐えられない体だからな。

 グラムはメアリーにでも渡しとけ」

「闘気に、耐えられない?」

「そういえば、入学試験の時に軽々しく本気を出せないとか言ってたわね。それに関係する事?」


 そういえば伝えてなかったな。

 今の私の現状。

 まあ、こいつらになら話してもいいか。


 という事で、今の私の体について話しておいた。

 まだ体が出来上がっていないせいで、全開の闘気には短時間しか体が持たない事。

 故に、魔剣を装備して擬似闘気を上乗せすれば、より体に負担がかかって、活動限界を縮めてしまう事などの話だ。

 それを聞いた二人は、


「自分の闘気で傷付くなんて聞いた事ないですね。

 でも、身の丈に合わない魔剣を使った時の症状に似てますし、あり得なくはないのか」

「道理で。治療した時に、いくらなんでも体が傷付きすぎだと思ったのよ。そういう事だったのね」


 と言って、自分なりに納得していた。

 そして、とりあえず無茶すんなと言われて怒られた。

 まあ、私とて好き好んで無茶したい訳ではない。

 無茶しなければならない事態にでも陥らない限りはやらんさ。

 そう言っても信用されなかったが。

 


 その後は、別れていた十年ちょっとの話をして盛り上がった。

 私は今世でも、波乱万丈とまではいかないが賑やかな人生を送ってきたし、

 こいつらはこいつらで、私が死んでからも退屈しない人生を送ってきている。

 話題は尽きなかった。

 特に、アリスの成長についての話は興味深い。


 ……本当なら、この屋敷に帰って来てから真っ先にやりたい事があったんだがな。

 だが、そろそろアリスも帰って来るというし、仕方ない、後日に回そう。

 その時に、纏めて報告すればいいか。


 そうして、屋敷での穏やかな時間は過ぎていった。

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死亡確定な貴族のボウズ。 シオンのライバルくん?
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