第73話 もう一つのガチャ
なんだ!? あの武器は‥‥‥他の二人の武器も鑑定してみる――
<ゲオルギウスの剣> UR
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<キルケーの杖> SSR
魔物が倒れた時、高確率で
テイムできる。
“魔物使い”の職業を付与する。
補正 防御×150%
魔防×150%
知力×150%
器用×150%
2人が持っている武器も、とてつもないレアリティだ! URに至っては、まともに鑑定すらできない。レベルが高いからというよりも鑑定を妨害されている感じがする。
武器だけじゃない。防具もSR以上の物ばかり‥‥‥。
「ガチャだ‥‥‥」
「え?」
あんな物が世界に存在してるわけがない! やっぱりあったんだ武器防具のガチャが‥‥‥。
俺は改めてレオとフレイヤ自身を鑑定してみる。
レオ・ガルシア
勇者 Lv82
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フレイヤ・クルス
竜騎士 Lv67
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やはり鑑定ができない‥‥‥レオは俺がなったことがない“勇者”でフレイヤに至っては見たこともない“竜騎士”という職業だ。
彼らに接触すればガチャのことが、何か分かるんじゃないかな‥‥‥。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「すまないな二人とも‥‥‥煩わしいマスコミ対応は俺がなんとかしたいところだが、どうしても二人も一緒に撮影したいとしつこくてな‥‥‥」
「かまいませんよ。ファンサービスだと思えば苦にはなりませんから」
「そうそう、と言ってもメディアが撮りたいのはフレイヤだけだと思うけどね~」
確かにフレイヤの人気はズバ抜けてるからな‥‥‥。
「ところで会場にいた王欣怡は見たか?」
「中国の人? 見ましたけど、あの人そんなに強いんですか?」
「“朱雀”の王の実力は本物だ。“気功”を操る能力は世界一だろう‥‥‥彼女なら我々が持つ武器に選ばれる可能性がある」
「“気功”か‥‥私たちの魔法剣にも匹敵するみたいですけど、まともに使える人は見たことがないし‥‥」
フレイヤの言葉にカルロは肩をすくめて答える。
「何にせよ、美人であれば僕は文句ないよ! 武器使用者の選定はレオの仕事だからね。それより日本から来た魔法使い君がいたみたいだけど、彼はどうなの?」
「確か“爆炎の魔術師”の異名があるって聞いてるけど、かっこよくないですか!」
無邪気に言うフレイヤを、レオがたしなめる。
「扱える魔法が火属性中心なら、ドラゴンとの戦いは厳しいだろう。ドラゴンは魔法耐性がある上、特に火にはめっぽう強い。雷か水属性の魔法が使えないのなら、ハッキリ言って役に立たん!」
控室に入り、武器防具を取り外し専門の黒いケースに収納する。武器などを管理するスタッフは個別にいるため、彼らに任せ帰り支度を始めた。
「ドイツのドレスデンに武器の輸送を頼んでいたが、やっと認められた」
「よくサルマンが許可したねー。中国のチームに武器が渡ること最後まで反対してたのに‥‥‥」
「俺がしつこいくらい要求してたからな、到着は明後日になるだろう」
◇◇◇◇◇◇◇◇
ドイツ・ドレスデン――
二人の男が施設内の廊下を歩いている。一人は眼鏡を掛けた神経質そうな男で、もう一人は背の高い痩せた男だ。
「まったくレオの奴は、いつも独断で行動する。私もサルマン氏も反対しているというのに、聞く耳を持たん」
「中国の王の件ですか、主任も苦労が絶えませんね」
扉の前で暗証番号を入力し、指紋認証で扉のロックを解除する。
中に入ると真っ暗な部屋の手前から順にライトが付いていった。全てのライトが付いた時、中にある何百という武器と防具が姿を現す。
「コレだな‥‥‥すぐにジュネーブに送る。準備してくれ」
「分かりました」
後ろに控えていた男は部屋の中にあった台車で指定された武器と防具を外に運び出そうとする。
「それにしても、これだけの武器や防具をどこから持ってきたんですかね?」
「君はここに来て日が浅いから知らないか‥‥‥私も詳しく知ってるわけじゃないが、元々は個人の持ち物だったらしい」
「個人の? この数をですか!?」
「色々あって今は我々が管理しているが、ここにある武器は大量破壊兵器に匹敵するほど危険な物だ。個人が所有していたことで大問題になっただろう」
「元々の所有者は、どうなったんですか?」
「それは聞かない方がいい‥‥‥」
主任と呼ばれた神経質そうな男は部屋の奥に向かい、そこにある鉄の台座に括りつけられた一振りの剣を見ていた。
「それはなんですか?」
「誰も使うことができなかった剣だ。持った瞬間に大量の魔力を吸い取られてしまうため、コレのせいで一人死んでいる。レオですら数秒持っただけで膝から崩れ落ちた」
「そんな危ない物なら廃棄した方がいいのでは‥‥‥!?」
「だが鑑定した者によれば、コレが一番強力な武器らしい‥‥‥」
男は振り返り、扉へ向かう。
「尤も使えなければ、確かにガラクタと同じだがな」




