第55話 入団試験
入団試験まで後3日、中国に来て倒した魔物は二千体を超えていた。獣の魔物と言っても、その種類は様々で猿や狼、熊や猪が巨大になり狂暴化したような魔物が多かった。
魔物と格闘していて気付いたのは【固有スキル】神眼の有用性だ! 数秒後の未来を見ることができるが接近戦においては無敵に近い能力だと思う。
相手がどう動くのか全て分かるため、攻撃を避けることもカウンターを打ち込むことも容易にできてしまう。今まで魔法ばかり使っていたから、こんなに使える能力だと気づかなかった。
もっとも時間を止めてしまえば、接近戦ではさらに強力なんだが‥‥‥‥
武道家の職業ボード10枚は全てカンストした! 職業ランクは――
武道家 Lv99
武術 RankS → SSS 称号“拳王”
獲得“スキル” 俊敏(Ⅰ)×11
“SSS”まで上がり、3つ目の“称号”が付いた。“拳王”か‥‥‥だが、正直武器がないと打撃が魔物に対して有効とは、まだまだ言い難かった。
次になる職業は“モンク”と決めてはいたので亜空間から職業ボードを取り出しタッチした。
職業スキルを確認すると‥‥‥
気功武術 RankF
気功武術か‥‥‥なんとなく期待できそうだな‥‥‥。“朱雀”の入団試験は3日後だ。それまでにモンクのレベルを上げられるだけ上げておこう!
地面を蹴って空に飛びあがり、高速で飛行しながら獣の魔物を探した!
◇◇◇◇◇◇◇◇
中国・大連、入団試験当日――
金州区にある役所の施設に大勢の人が集まっている。
「けっこう人気なんだな‥‥‥」
異能の集団“朱雀”に入ることができれば準公務員(というか実際には中国軍の一部なんだが)とみなされ、かなり安定した生活が約束される。こんな滅茶苦茶な世界で政府が“安定”を保障してくれるなら、確かに魅力的かもしれないな‥‥‥‥。
能力さえ認められれば外国籍でも入団は許可されるらしく、ちらほら外国人が見受けられる。
「番号を配布する! 番号でグループ分けをしてから、それぞれ決められた部屋に入って試験を受けることになる」
俺がもらった番号はB-186だった。
「AとBは向こうの建物! CとDはこちらでやる。それぞれ分かれてくれ!」
番号で4つのグループに大別され、部屋に通された。やたらだだっぴろい大広間で何かの装置がいくつかある。
今回も事前に中国語は勉強してきた。スキルの“演算加速”と“念話”によって会話することに不自由はないだろう。
「まずは“鑑定”を受けてもらう、これで異能の職業がなければ、そのまま帰ってもらう! 分かったら一列に並べ!!」
番号順に並べられ、1人ずつ“鑑定”されていった。
「僧侶 Lv28」
「戦士 Lv40」
見ていると“鑑定”のレベルが低いのか職業とレベルしか分からないようだった。そんな中――
「魔法戦士! Lv21」
おおーっと会場からどよめきが起きる。いわゆる上級職が出たからだろう。周りから称賛と羨望の眼差しが送られる。
上級職は珍しいのはもちろんだが、複数の職業を経ないとなれないものが多く複数の職業スキルを持つことになる。
そうなれば必然的にステータスの数値も高くなるため“朱雀”では積極的にチームに採用される。この入団試験を受けに来ているものなら、ほぼ全員知っているようだった。
「次! Bー186番、前に出ろ!!」
俺の番のようだ‥‥‥
部屋の中央に進んで、椅子に座っている鑑定士の前に立った。七十代くらいの白髪の男性だ。年齢に関係なく能力は発現するんだな‥‥‥
「君は‥‥‥モンクだな。レベルは3だ」
おおーっと、ここでもどよめきが起こった。
「レベルが低いとはいえ上級職か‥‥‥うらやましいな!」
「モンクか、魔法戦士ほどではないけど人気の職業だからな‥‥‥」
周りから色々な声が聞こえてくる‥‥。実は、この入団試験までに“モンク”の職業ボードは1枚カンストしていた。
モンク Lv99
気功武術F → C
獲得“魔法” 強化魔法(Ⅰ)×3
気功武術の職業ランクは“C”にまで上がっている。意外だったのは強化魔法を獲得したことだ。気功武術に必要ってことか‥‥‥? イマイチ分からないな。
今は2枚目の“モンク”になっているところだ。それにしても魔法戦士って人気なんだなー、今度なってみよう。
「次は腕力を測る! この計測器を思いっきり殴ってみろ!! B-1から順番だ」
一列に並んで1人ずつ殴っていった。どうするかな‥‥‥俺が本気で殴ると機械が壊れる可能性があるしな。かと言って弱すぎれば不合格になる。
仕方ないので俺の前で殴っている人の力加減を“模倣”することにした。俺の番が回ってきたので、前の人より少しだけ強い力で殴ってみる。
「ふんっ!」
ビ――ッ! という音と共に俺の番は終了した。
◇◇◇◇◇◇◇◇
計測器から少し離れた場所で結果を見ていた研究員が呆れたように話している。
「これ見てくださいよ。どう思います?」
「あのモンクの男か、確か日本人だったな‥‥‥」
2人の研究員が表示されたデータを見ながら意見を交換していた。
「思っていたより“弱い”な。レベルが低いとはいえ上級職のモンクなので期待したんだが‥‥‥」
「前の参加者がこのグループの中で一番弱かったので、その次ですね」
腕力が弱すぎれば、いくら上級職とはいえども“朱雀”には入れない! そんなことを話していると研究員の後ろにいた長身の女性が呟いた。
「面白そうな奴だな‥‥‥」




