第46話 追放者
この診療所を手伝い始めて3日目になる。最初はすぐに出ていこうと思っていたが、ここの責任者の医師スコットさんや一緒に手伝っているミシェルなどと仲良くなるうちに、出ていくタイミングを逃してしまった。
ただ、なぜかミシェルの弟のエルには嫌われているように感じるが‥‥‥‥
「ああ、ありがとう。ゴジョー君も少し休んだ方がいいんじゃないか?」
「大丈夫ですよ! 意外に体力はある方なので」
スコットさんが心配して話しかけてくれる。とてもやさしい先生だ。
「ちょっと前までこの辺りに来る巨人は増えていたらしいが、最近はめっきり減っているそうだ‥‥‥このまま平穏であればいいんだが」
スコットさんやミシェルだけではなく怪我をした患者さんともだいぶ打ち解けてきた。ここで手伝いをしながら回復魔法で少しずつ怪我人や病人を治していく。
そんな中、一緒に来ていたミシェルに声を掛けられた。
「ゴジョーさん、助けてもらったお礼が何もできていませんから、私にできることがあったらなんでも言ってくださいね!」
「いいよ! 気にしないで‥‥‥そのかわり俺のことあんまり人に言わないでね!」
「ハイ! 分かりました。何か事情があるんですよね‥‥‥」
俺とミシェルが仲良さそうに話しているのを、遠くから弟のエルが見ていた。その時は特に気にしていなかったが‥‥‥‥
◇◇◇◇◇◇◇◇
なぜミシェルはあんな怪しげな男と親しげにするのかエルには理解できなかった。
あのゴジョーという人が危険な存在だったら、ミシェルを助けられるのは自分しかいない! エルは最近そのことばかり考えるようになっていた。
「あの‥‥‥‥」
エルはジョシュアに声をかけた。その決断が正しいと信じて‥‥‥‥
◇◇◇◇◇◇◇◇
俺が避難者と色々な話をしていると、後ろから数人の軍人に取り囲まれた。
「ちょっとこっちに来てくれないか‥‥‥」
「どうかしたのか?」
彼らに連れられて人気のない所に移動するとジョシュアが待っていた。
「お前が巨人と一緒に行動しているという話を聞いた。本当なのか?」
ああ、あの姉弟しゃべちゃったか‥‥‥まあしょうがないか。
「確かにそうだが、別に巨人の仲間なわけじゃないよ」
「なんにしろ、あやしい人間をここに置くわけにはいかない。追い出す形になるが悪く思うなよ」
「別にかまわない、当然の処置だ。俺も出ていくつもりだったから気にするな」
入り口まで送られ、俺はミラー・パークを後にした。ここの住人もあの姉弟も安心して暮らせるようにするにはタイタンを倒すしかない。
空を飛んで一路ニューヨークを目指した。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「ジョシュア‥‥‥追い出すだけで良かったか? 巨人と一緒に戻ってくるかもしれんぞ!」
「異常な世界になってから不思議な力に目覚める人間がいると聞いたことがある。あの男も敵とは限らないからな‥‥‥」
悪い人間には見えなかったが、放っておくわけにもいかない‥‥‥。
ミラー・パークの中に戻ると診療所の責任者スコットに呼び止めれた。
「ジョシュア‥‥‥ちょっといいか? 問題があるんだ」
「問題? どうしたんだ」
「実は、今治療している患者なんだが‥‥‥治りが早くて全員快方に向かってるんだ‥‥‥」
「いいことじゃないか!? なにが問題なんだ?」
「早すぎるんだ! 絶対に治らない外傷を負った者も完治寸前まできている。明らかに異常なんだ!!」
どういうことだ? なぜ、そんなことに‥‥‥‥!?
「ジョシュア!!」
1人の軍人が慌てて走ってきた。
「南から巨人が複数やってきてる! ここを狙ってるかもしれない!!」
「何!? 最近は巨人の数が減ってたんじゃないのか?」
南だとゴジョーが去っていった方向とは別だな‥‥‥くそっ!! どうなってんだ! 次から次に‥‥‥‥
「すぐに防衛体制を取れ! 戦える者はすぐに入口に集まってくれ!!」
ミラー・パークの中は慌ただしくなってきた。中にいる住人たちも不安の色を隠せない。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「どうしたんだろう‥‥‥‥巨人が来たのかな?」
「ミシェル! 巨人がこっちに来てるみたいだ。他の人たちと一緒に建物の中に入ろう!!」
エルがミッシェルの手を取り連れていこうとすると‥‥‥‥
「そうだ! あの人にゴジョーさんに頼めば助けてくれるんじゃないかな!? エル、ゴジョーさんどこにいるか見かけなかった?」
「それは‥‥‥」
「どうしたの‥‥‥?」
その日、巨人が扉を破り中の人間を蹂躙するのに、それほど時間はかからなかった。




