第38話 不死の王
そのアンデッドは地の底で多くの屍の上に立ち強力な魔力を地面に、このダンジョン全体に流し込んでいるようだった。
見た目は白骨化した魔術師のようで、手には立派な杖を持ち首や指には年代物の宝石を身に着けている。
「あんたがここの親玉か?」
その魔物はじっとこちらを窺っているようだった。鑑定を行使する――
不死の王
大魔導士 Lv3121
■ ■ ■
■ ■ ■
あっ‥‥‥やばい奴だ! 俺のレベルよりはるか上、鑑定でもステータスなどを見ることができなかった。
「俺の力、通用するのかな!? まあ試してみるかー‥‥‥」
「炎竜!!」
巨大な炎の竜が魔物に向かって襲い掛かる!! いつもならコレで焼き尽くせるはずだが……そう思った瞬間――
魔物の手前で炎が弾かれた。まるで球体状のバリアがあるかのように炎は相手に当たらない。これは‥‥‥
「結界防御!!?」
俺が持ってる固有スキルだ。こいつも持ってるのか? そう考えていると魔物は低く響くような声で呪文のように唱える。
『腐敗の息吹』
青紫の煙がすごい勢いでこちらに向かってきた。だが俺にも“結界防御”と“全状態異常耐性”があるのでまったく効かない。
相手は表情がないので何を考えているか分からないが、向こうも驚いてるんじゃないかな‥‥‥?
それにしても魔物の言葉が理解できるなんて、あいつ日本語話すのか? 言葉というか考えが伝わってくるというか‥‥‥‥
んっ!? これって“念話”の効果か!? この時初めて念話が知性のある魔物などと、コミュニケーションを取ることができることを知った。
「雷炎!!」
『黒雷!!』
「破砕弾!!!」
『地獄の業火!!!』
互いの魔法の応酬で激突する! だが俺の魔法の方が押される!! やはり魔法では向こうの方が上のようだ。
時間を止めて攻撃しようかとも思ったが、時間を止めると魔法も重力操作も使えなくなってしまう。俺の体から少しでも離れると“物質”も“力”も全て止まってしまうからだ。
最悪、時間を止めて素手でボコボコにすることもできるが、俺の拳には“魔素”が含まれていないからな‥‥確か魔素を含まない武器で攻撃しても化物には効果が薄いって聞いたことがある。
あの高レベルの相手を倒せるか正直、微妙だ。
そんな中、状況が変わり始めた‥‥‥‥
『地獄の業火!!』
「地獄の業火!!」
『黒雷!!』
「黒雷!!」
相手の魔法と同じ魔法が使えるようになっていた。威力も上がり力負けしなくなってきた‥‥‥これは“模倣”のスキルの影響か!?
魔法戦が互角になってきた向こうも苛立ってきたようだった。
『貴様はなんだ!! なぜ我の魔法を使える!?』
「なんだ、おしゃべりしてくれる気になったのか」
俺は“不死の王”の近くに降り立ち、相手の姿を観察しながら話を続けた。
「あんたが作るアンデッドのせいで上がえらい目に遭ってるんだ。できればやめてもらいたいんだが‥‥‥」
『それはできぬ‥‥‥ここで行うことは我が使命だからだ!!』
「それは誰かに命令されたことなのか?」
『‥‥‥‥‥‥』
魔物は何も答えず、両手を天に掲げた‥‥‥。
『終わりだ!!』
不死の王の周りにドス黒いオーラが噴出し、上空に巨大なエネルギー体が出来上がる。それは俺のレベルでは“模倣”することができない超上級魔法――
『不浄なる死者の国!!』




