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囲め囲め、さらに囲め

 新規の評価、ブックマークありがとうございます。

 お読みくださっている方々に感謝します。



 ギフト・ソルジャーたちに囲まれてリンチされそうになったところで、リベルタとツヴォルフが救助にきてくれた。

 元々の役目をほっぽってこんなところまでくるのはどうかとも思うけど、正直すごく助かった。



「ロナ、こっち。隠し通路へ急ごう」


「坊主のギフトで幻影を見せちゃいるが、そう長くは誤魔化せねぇ。さっさと逃げるぞ」


「あ、あなたは……ツヴォルフ、さん?」


「おう、えーと、No.77だったか? ははっ、思ったより元気そうじゃねぇか。結局お嬢ちゃんもロナの側についたわけか」



 ナナがツヴォルフを見て目を丸くしているのに対して、飄々と言葉を返している。

 そういえばこの二人も一応面識あったんだっけ。脱走前に私のことを話してたとかなんとか。



「あの、ロナ、さんって……?」


「ん? あー、コイツの名前だよ。……てかさっきまで共闘してたんだろ? なのに名前まだ教えてなかったのかよ」


「ロナさんって、お姉さんのことだったんだ……」



 ……そういえば、ナナに私の名前を伝えてなかったわね。

 ステータスを確認すればすぐ分かるだろうって思うけど、見てなかったのね。


 つーか、無駄話してないで逃げるならさっさと逃げましょう。

 No.1にこちらを認識されたらそれだけで逃げるのが難しくなっちまうわ。



 狭い隠し通路を進み、とにかくギフト・ソルジャーたちから逃げて距離をとる。

 隠し通路の出入り口はちょっとやそっとじゃバレないように細工されてるから、追跡される可能性は低いはず。



「なぁ、アクエリアスが今晩起こる戦争の情報を知ったのは、なんでだと思う?」


「シャドウよ。アイツが私をアクエリアスに売るかわりに、スコーピオスの飼ってる異獣をNo.1に討伐させる契約で話を進めていたらしいわ」


「……アクエリアスに情報が洩れてる時点で万が一の可能性として予想はしてたが、マジだったのかよ」


「シャドウ、が……。所長は、知ってるのかな……」


「本人が言うにはアイツの独断らしいわ。所長は裏切ってないから安心しなさい」



 もしも所長の指示で裏切っていたとしたら人間不信がさらに悪化するところだったわ。リベルタもトラウマ植え付けられそう。

 あの人のよさそうな所長が実は腹黒でしたとか、考えただけでも恐ろしい。


 そのシャドウだけど、いつの間にか姿が消えてた。今はどこへ行ってるのやら。

 なに食わぬ顔で所長のところへ帰ってたりしてないでしょうね。次に姿を見せたらぶん殴ってやるわ。




「で、奴らから逃げるのはいいけど、どこに向かってるの?」


「摂取済みの住民たちが収容されてる施設だ。運動場として使われてた場所だよ」


「住民たちはまだ解放されてないの?」


「今ごろアリエスの奴らがなんとか……お、そろそろ出口だぞ」



 薄暗い通路を駆け足で進み続けていると、出口が見えた。

 隠し通路の出入り口は、どこも外からは壁や床に擬態させてある隠し扉だ。

 その存在すら知らないアクエリアスやスコーピオスの連中が見つけられるはずはない。



 だから、このまま出ても安全だなんて思い込んでた。





「! 出てきたぞ、No.1に連絡をとれ!」


「っ!?」




 出口の先に、ギフト・ソルジャーの服を着た連中が待ち伏せしていた。

 な、なんで? こいつら、どうやって私たちが出てくる場所を、……っ!


 シャドウか! アイツがギフト・ソルジャーたちに隠し通路の出入り口を伝えやがったのか!

 くそ! あんにゃろうやっぱぶん殴るだけじゃ気が済まないわ! いつかぶっ殺す!



「やべぇ、ここは一旦戻って他の出口に……!」


「無駄よ! 多分、シャドウにチクられて出入口は全部奴らにバレてるわ! それに、もうNo.1がこっちにくる!」


「ならさっさと収容施設に急ぐぞ! ああもう、シャドウの野郎ぜってぇ許さねぇぞチクショウが!」


「『幻惑操作』」



 リベルタが私たちの姿を周りから認識しづらくしている間に、とにかく収容施設に向かって走る!

 途中で私たちと同じ姿をした幻影を、別の方向へ向かっているように見せかけたりして撹乱もしておいた。



 なのに




「逃げても無駄だ」


「っ……!!」



 収容施設に通じる通路の先に、No.1が待ち構えていた。

 ……こっちにくることを読まれてたか……!


 リベルタのギフトで姿を認識しづらくしているとはいえ、集中して観察すれば一応見えなくはない。

 ここまで警戒されてちゃ、逃げるのは無理そうだ。 



「なら、アンタをぶっ倒して押し通るわ」


「そこの二人は戦闘向きのギフトではないうえに脆弱な膂力しか備えていない。大した戦力にはならんぞ。そして―――」


「……マジかい」



 No.1が空に手を翳すと、周りにギフト・ソルジャーたちの姿が青白い光とともに現れた。

 あっという間に振り出しの状況に戻ってしまった。



 ……駄目だこりゃ。

 仮に逃げられたとしてもイタチごっこになる気しかしねー。

 もうやだ。しつこすぎるわこいつら。




「はぁ、仕方ないわね……」


「え、お、お姉さん?」


「ロナ……?」


「? ……ようやく観念したか」



 思わず溜息を吐いて愚痴ったのに対して、周りが困惑したような声を漏らしている。

 こちらがやっと大人しく捕まる覚悟を決めたんだと解釈したようだ。


 違う違う。そうじゃない。



「バカ言ってんじゃないわよ」



「なに? ……なっ がはっ!?」


「……え?」



 突如、No.1の身体が後方へ吹っ飛んでいった。

 それを見たギフト・ソルジャーたちが、間の抜けた顔と声を晒している。


 なにをしたのかというと、なんてことはない。ただ殴り飛ばしただけだ。

 ただし、奴の防御もギフトも間に合わない超高速で、だけどね。



 文字化けギフトを使い、残ったスタミナを膂力の強化に回した。

 さらに『膂力強化』と『速度強化』を同時に発動し、それらを文字化けギフトで強化。


 文字化けギフトによる強化と他のギフトによる強化は重複する。

 その結果、私のステータスはほんの一時だけ絶大な数値へと強化されるというわけだ。

 こんな具合にね。





 ロナ


 ランク■


 状態:膂力強化(逶エ謗・謫堺ス)(×2.0)・速度強化(逶エ謗・謫堺ス) 空腹


 【スペック】

 H(ヘルス)  :477/597

 M(マジカ)  :43/651

 S(スタミナ) :38/566


 PHY(膂力)  :2503(×2.0)

 SPE(特殊能力):869

 FIT(適合率) :■■%


 【ギフト】

 摂食吸収Lv2 逶エ謗・謫堺スLv■ 膂力強化Lv4 火炎放射Lv3 磁力付与Lv2 索敵Lv2 速度強化Lv1 衝撃波Lv1 螺旋弾Lv1






 はい、頭おかしいですね。てか、ギフト持ちを何人か殺ったからか、能力値が微妙に上がってるわね。

 マジカをケチって膂力強化の倍率を抑えてるけど、それでも倍加された結果5000を超える膂力に、さらに速度強化のギフト。

 ここまで速くなれば、No.1でも反応できずに無抵抗で殴り飛ばされるしかなかった、というわけだ。



「はい、どどどどどどーん」


「ぐぁっ!?」「がはぁっ!」「げぼぇっ!」



 で、呆然として突っ立ってるギフト・ソルジャーたちもまとめてぶちのめす。

 全員殴り飛ばし、一人残らず壁にめり込ませて壁画になってもらいました。


 あっという間に殲滅完了。ちーん。

 うわ、マジカとスタミナの残りが三ケタ切ってるじゃん。あと数秒遅かったらヤバかったわね。



「ま、本気になればこんなもんね」


「いやお前、そんなに強くなれるなら最初っからやっとけよ! こんなトコまで逃げてきたオレらがバカみてぇじゃねぇか!」


「だって、これ使うとスタミナもマジカもすっごい減っちゃうのよ? もうほとんどすっからかんでお腹ペコペコよ」


「でも、これでアクエリアスの追手は大丈夫。お疲れ、ロナ」


「お、お疲れさま、お姉さん」



 リベルタが労いの言葉をかけてくれた後に、対抗するようにナナが言うのが微笑ましいわ。

 さてさて、さすがにもうこれ以上戦うのはキツいわ。後はアリエスの連中に任せますか。




「いたぞぉぉおおお!! 侵入者どもだぁぁぁあっ!!」


「囲め! 一人も逃がすな!!」



 ……フラフラの状態でそんなことを考えていたら、辺りからそんな怒号が聞こえてきた。

 スコーピオスの連中が、私たちの周りに集まり始めている。


 隔壁が開かれたのかな? もうなんの問題もなくスコーピオスたちも移動できるようになってしまったようだ。

 ……もう囲まれて絶体絶命の状態になる展開はお腹いっぱいなんですけど。



「お前たちは完全に包囲されている!」


「抵抗は無駄だ!」



 何百人、下手したら千人近い数の兵隊たちが私たちの周りを囲んでいる。

 逃げ場はない。力ずくで突破しようにも多勢に無勢だ。



「ど、どうしよう……」


「また、僕のギフトで逃げる?」


「こんだけ囲まれてちゃ、それも難しいわね……」



 もうほぼ詰みの状態だ。

 しかも囲んでる連中の中にギフト持ちが三十人近くもいる。

 アリエスの連中がいても、真正面からだと厳しい戦いになるでしょうね。



「いや、逃げる必要はねぇよ。どうやら間に合ったみてぇだ」


「え?」



 諦めかけて変な笑いがこみ上げてきそうになったところで、ツヴォルフが煙草を吸いながら暢気にそう言った。

 その直後。




『スコーピオス全軍に告ぐッ!! 貴様らの蛮行は、本日この時をもって終わるッ!!』




 そんなバカでかい声がどこからともなく響いた。

 ……拡声器でも使ってるのかしら。うるさっ。




「な、なに? 今の声……」


「あ、あれっ……!」



 リベルタが驚いた様子で、遠くを指差した。

 そこには、見覚えのある人々が何百人も集まっていた。


 あれは、パイシーズの住民?

 しかも、全員ステータスが表示されてる。全員ギフトに目覚めてるみたいだ。



「……アリエスの連中は上手くやってくれたみたいね」


「ああ、ゲームセット。オレらの勝ちだ」



 スコーピオスが何十人ものギフト持ちを従えてるなら、こっちは何百人ものギフト持ちで対抗する。

 それが今回の戦争のカギだったってわけだ。


 ギフト持ちの人海戦術によるゴリ押し。さて、スコーピオスがどこまで保つか見ものね。ざまぁ。



 お読みいただきありがとうございます。

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