人を傷つけるヤツなんか嫌いだ! ぶん殴ってやる!
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「くたば ゴブァっ!!?」
大振りで殴りかかってきた奴の頭を砕いた。
残り八人。
「エント! くそ、お前ぇっ!!」
仲間を殺されたことに激高しながら、こちらに光弾を飛ばしてくる。
一応、仲間意識はあるみたいね。ギフト持ちじゃない奴が死んでもなんとも思わないくせに。
さっき殺したエントとかいう奴の身体を盾にして弾を防ぎつつ、急接近。
「なっ!?」
「死になさい」
仲間の亡骸をこんな形で利用されて動揺しているようだ。
盾にしていた亡骸を、光弾を飛ばしていたリビランとかいうヤツに投げつけ体勢を崩し、そのまま心臓をぶち抜いて仕留めた。
「ば、か……な……」
「……ギフト持ちは、残り七人ね」
「うっ……!」
「こ、こいつ、能力値は800そこそこなのに、なんでここまで……!?」
残った連中にも動揺の色が見える。
下手に動けば次に殺されるのは自分かもしれない、という恐れが私に挑むのを躊躇わせているのか、なかなか襲ってこないわね。
好都合。戦闘が長引けばその分こちらの目的が達成しやすくなるわ。
「んー、瞬間的に膂力強化のギフトを使ってるみたいだけど、強化の倍率が不自然なくらいに高いね。さっきも四倍なんて表示がされてたよ」
奴らのリーダーっぽい銀髪キザ男が、こちらを見つつそう告げた。
ちっ、戦っている間にこっちのステータスを覗いてやがったな。
「よ、四倍……!? 800を超える膂力の、四倍だって!?」
「そう、つまり3000は軽く超えてる。どう甘く見積もっても、一人や二人で対処するのは難しいってことだね。いやぁ、怖い怖い」
肩を竦めながらそういうキザ男には、余裕の色が見える。
……これくらいならどうとでもできるって言いたげね。
「ミリル、ガイエインとブルースの耐久強化を。ルガールは必要に応じてマジカとスタミナを吸収・譲渡して」
「あ、味見は……?」
「……生け捕りにできたらしてもいいけど、望みは薄いと思うよ」
「うぅ……残念……」
「そっちの隊長はとにかく遠距離から彼女に向かって銃撃の指示を。ここまで能力値が高いと銃弾でも大したダメージは与えられないだろうけど、動きを阻害することくらいはできるはずさ」
「……了解」
……まずいわね。さっきまでこっちにきていた流れが、向こうにもっていかれつつあるわ。
今まで私が有利に戦えていたのは、様子見だからか奴らが少人数で連携していたからだ。
ここからは、奴ら全員が本気で私に襲いかかってくる。
「機関銃、斉射!」
「ちっ……っ!?」
「逃がさねぇぞ!」
「大人しくしろ!」
ギフトをもたない、しかし武装した軍隊がこっちに向かって弾丸を放ってきたのを避けようとしたところで、こちらに急接近してくる影が二体。
近接戦闘特化のギフト持ち二人が、逃げ続けてる私に張り付いてきやがった。
おいおい、こんなに接近してたら私だけじゃなくてアンタらにも弾丸が当たるでしょ。
バカねこいつら。これなら迂闊にこっちへ向かって撃てなく――――
っていだだだだだ!?
ま、マジかこいつら!? 味方がいようが容赦なく撃ってきてるんですけど!
フレンドリーファイアもおかまいなしか! やっぱこいつらロクでもねぇ!
「いてて! いってーなオイ! 俺らばっかに当ててねぇでしっかりこのガキを狙えやぁ!」
「……耐久強化したとはいえ、当たると地味に痛いな」
って、こいつらなんか当たった弾を弾いてない?
ステータスを確認すると、『耐久強化』って状態表示が確認できた。
どうやら身体の頑丈さを強化してるみたいだけど、こっちが当たるたびに青痣や小さい傷ができてるのに対して、こいつらはほとんど傷ついてないみたいだ。ずるいわー。
「そらそら! さっきまでの威勢はどうしたぁっ!」
「潔く諦めろ!」
「鬱陶しいわね……!」
こいつらに対応していると、銃弾を上手く避けらえない
かといって銃弾を避けようとすると、こいつらの攻撃がモロに刺さる。そっちのほうがまずい。
なら、さっきみたいにこいつらを盾にして銃弾を防いでやるわ!
「っ! 退け!!」
「おう!」
って、退いた?
いったい、なにを……?
奴らが後ろに大きく飛び退いたかと思ったところで――――
「がっ……ぁ…!?」
腹部に、衝撃と激痛が走った。
見ると、コインほどの風穴が、私の腹に開いていた。
「さて、致命傷だねレディ」
まるで銃のように変形した右手をこちらに向けながら、キザ男が口を開いた。
こいつが、私の腹になにかを飛ばしてきたのか……!?
「二人の近接戦に加えて機関銃の斉射を受けた状態でこれを発射されたら、さすがに対処できなかったみたいだね」
「う、ぐぅぅ……!!」
まずい、このダメージはまずい。
開いた穴からどんどん血が出ていってる。早く塞がないと、失血死しちまう。
早く、塞がないと、でも、どうやって……!?
「もう楽になりなよ。これ以上、苦しまずに眠るといい」
そう言いながら、銃に変形させた右手から私に向かって何発も銃弾が放たれた。
腹に受けた傷のせいで、まともに動けない、避けられない!
「ガハぁ!! ぐ、あ、あぁぁあっ!!」
咄嗟に膂力強化を文字化けギフトでブーストさせて、身体の強度を上げたけれど、それでもなお着弾するたびに凄まじい衝撃が身体を貫いていく。
さっきまで受けていた機関銃の弾が豆鉄砲のように感じる。威力がケタ違いだ。
貫通こそしていないけれど、弾が身体にめり込むたびに骨が砕けて肉が潰れていく。
……これは、ちょっと甘く見過ぎていたわね。
ダメージに耐えきれず、私は無様に地面に転がりながら倒れてしまった。
ああ、くそ、またか、まだ、私には力が足りないっていうのかよ……!!
「……対象の無力化を完了。すぐに確保してくれ」
「了解。……凄まじい強さでしたな、この少女は」
「おい隊長、このクソガキ生け捕りにするのかよ!? 仲間をもう何人も殺られてんだぞ!!」
「無駄に殺すこともないだろう。いいから拘束しなよ」
「納得いかねぇ! こんなクソガキ、今すぐ殺してやる!!」
「おい、ガイエイン!」
ガイエインとか呼ばれてるヤツが、私の頭に向かって拳を振り降ろそうとしている。
その目には、仲間を殺された憎しみが燃え上がっているように見えた。
「死ねぇぇぇぇぇぇえええっ!!」
「や、めてぇぇぇぇぇええええっっ!!!」
「なっ……ぐふぅあっ!!?」
振り降ろした拳があと数センチで私の頭を砕く、というところで、誰かの絶叫が響いた。
その直後、ガイエインとか呼ばれていた男が数十メートルばかりぶっ飛ばされたのが見えた。
……え、なにが起きたの?
「なんで、なんで、いつも、いつも、あなたたちは、誰かを傷つけてばかりで……なんで、いつも、みんな、お姉さんをイジメようとするの……!!」
声がするほうを向くと、桃色の髪の小さな人影か、私の傍に立っているのが見えた。
目に涙を浮かべながら、でも怒り混じりの強い眼差しで、ギフト持ちたちを睨みながら立ち向かっている。
「アン、タ……」
「お姉さん、すぐに治すから、ちょっと我慢してて」
半月ほど前にパイシーズに置き去りにしてしまっていた少女、No.77がそこにはいた。
あのクソ施設の最終試験の時のように、私の傷を治しながら、励ましてくれている。
……あー、また借りができちゃったなー……やだやだ。
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