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連携

 お読みくださっている方々に感謝します。



「おぐぁっ!!」


「がはっ!?」



 手足を大雑把に振るっただけで、きりもみしながら雑魚どもが吹っ飛んでいく。

 今ので十人くらいぶっ飛ばしたかな?



「な、なにをしている! ギフト持ちとはいえ、相手は小娘一人だぞ! 早く取り押さえろ!」


「し、しかし……!」


「取り押さえる? アンタたちが、私を? 舐めてんじゃないわ、ゴミども」


「なっ、グヴォッ!!」



 偉そうに指示を出している小隊長らしきデブの頭を掴み、地面に叩きつけた。

 デブの頭が潰れ、地面に赤いシミを広げていく。


 人殺しは初めてじゃないけど、それにしたって忌避感が薄い。

 むしろショックを受けていない自分に対して驚いてるわ。



 監督署から出てきた連中の数を数えつつ対処しているけど、まだたった20人程度。

 それも、ギフトを持っていない雑魚ばかりだ。

 ちっ、勿体つけてないでさっさと出てこいっての。



「どうしたの? まさかこれだけなの?」


「く……!」


「や、やむを得ん! 『ギフト・コー』に応援要請を出っ……かっ……!」


「? ……!」



 雑魚の一人が応援を呼ぼうとしたところで、口から血を吐いて倒れた。

 その傍には、他の雑魚どもとは明らかに異質な雰囲気を纏っている何者かが立っていた。



「うるさいな、こんな夜更けに大騒ぎして。ネズミの駆除も静かにできないの?」



 文句を言いながら翳しているその右手は、血に塗れている。

 ……味方だろうと、気に入らなけりゃあっさり殺すってか。

 散々殺しまくってる私が文句言う筋合いないだろうけど。



「だからギフトも使えない愚民は嫌なんだ。ああ、無能無能」


「……で、騒ぎの原因はそちらのレディかな?」



 ぞろぞろと監督署から、背格好の全く異なる連中が十人ばかり出てきた。

 老若男女問わず、しかしどいつもただならぬ気配を纏わせながら。



「監督署担当の『ギフト・コー』十名、全員集結いたしました」


「見れば分かる。獲物も見れば分かる」


「随分と華奢な獲物だな」


「だが出るべきところは出ている……味見したい……」


「おい誰かこの変態を止めろ」


「……少しは骨があるといいが」




 姦しく口を開く奴らに『アナライズ』を使うと、青い画面が表示された。

 こいつら、全員ギフト持ちだ。……しかも一人変なこと言ってるし。


 監督署を警備しているギフト持ちが十人って話だったから、多分これで全員かな。

 とりあえず厄介な連中をおびき出すことには成功したみたいね。




 リーダーっぽい銀髪のキザ男が、顎に手を添えながらこちらをまじまじと見つつ、口を開いた。



「ふぅむ、見覚えのない顔だ。レディ、君は何者かな?」



 レディねぇ。そんな呼ばれかたしたの初めてだわ。

 こんなトゲトゲした視線向けられながら言われても嬉しくないけど。



「脱走者か? 接種が終わってギフトに目覚めてその力で脱走した……というにはちと不自然なギフト構成だな。多すぎるし、そもそもなんだそのステータスは?」


「ランクと適合率が、黒塗りされておる……」



 向こうもアナライズで私のステータスを視ているみたいね。

 くっそ、アナライズ・フィルターさえあれば隠蔽できるのに。ホントどこにいったんだろ。



「脱走者ではない、となると侵入者か? 見張りはなにをしていたんだか」


「どちらにせよ、することは同じだ。とっ捕まえて、洗いざらい吐いてもらうぞ」


「念のため聞いておくが、降伏するつもりはあるかね?」


「……」



 降伏勧告に対して、無言で流す。

 『お断りだ』とか返してもいいけど、今はそれどころじゃない。

 こいつらのステータスを把握しておかないと、後々の対処に響く。



「我々は膂力あるいは特殊能力の出力が1000を超えている。ステータスを見て君も高い水準にいることは確認したが、我らほどではない」


「そのうえどう考えても多勢に無勢だろう。ギフトを持っていない雑魚ども相手ならまだしも、我らを甘く見ないほうがいい」



 奴らの言う通り、この数相手じゃ分が悪い。

 私もパイシーズへ向かう道中でもちょくちょく異獣を食べて強くなっているけど、基礎能力は向こうが上だ。

 ちなみに今の私はこんな感じ。







 ロナ


 ランク■


 状態:正常


 【スペック】

 H(ヘルス)  :569/569

 M(マジカ)  :631/631

 S(スタミナ) :535/541


 PHY(膂力)  :831

 SPE(特殊能力):847

 FIT(適合率) :■■%


 【ギフト】

 摂食吸収Lv2 逶エ謗・謫堺スLv■ 膂力強化Lv4 火炎放射Lv3 磁力付与Lv2 索敵Lv2 速度強化Lv1 衝撃波Lv1 螺旋弾Lv1









 で、参考までに奴らのステータスがこんな具合。





 ガイエイン


 ランク4


 状態:正常


 【スペック】

 H(ヘルス)  :814/814

 M(マジカ)  :410/410

 S(スタミナ) :564/597


 PHY(膂力)  :1137

 SPE(特殊能力):487

 FIT(適合率) :38%


 【ギフト】

 打撃Lv6 膂力強化Lv5






 リピラン


 ランク5


 状態:正常


 【スペック】

 H(ヘルス)  :952/952

 M(マジカ)  :632/632

 S(スタミナ) :312/312


 PHY(膂力)  :412

 SPE(特殊能力):1211

 FIT(適合率) :43%


 【ギフト】

 光弾Lv6 炎弾Lv4 雷撃Lv4








 脳筋だったりギフト寄りだったり十人十色だけど、確かにどいつも4ケタ超えてる。

 特にリーダーっぽい銀髪キザ男がヤバい。








 ガルス


 ランク6


 状態:正常


 【スペック】

 H(ヘルス)  :1198/1198

 M(マジカ)  :992/992

 S(スタミナ) :896/896


 PHY(膂力)  :1467

 SPE(特殊能力):1401

 FIT(適合率) :57%


 【ギフト】

 設置維持Lv7 特殊能力強化Lv6 身体変形Lv5 射出Lv5








 バランスがいい、というか膂力も特殊能力も頭一つ抜けて強い。

 タイマンでもかなり厄介そうなのに、仲間引き連れてる状態で正面からじゃ勝ち目は……なくはないけど面倒だ。




「……私を捕らえたいのなら、力ずくでするといいわ」


「随分と威勢のいいレディだ。そういうの嫌いじゃない、というかむしろとてもいいね君」


「グダグダぬかしてないで、さっさとかかってきなさいキザ男」


「はははっ……では、お望み通りに!」



 そう叫びつつ腕を振り降ろすと、周りにいる奴らが一斉に攻撃を仕掛けてきた。



「あっさり死んでくれるなよぉ、お嬢さん!」


「せいぜい足掻け!」



 ギフト特化の連中が光弾や炎弾で牽制しつつ、脳筋ステータスの奴らがフレンドリーファイアしないように絶妙な距離を保ちながら突進してくる。

 素の能力が高いうえに、連携まで上手い。やっぱ厄介だわこいつら。




 『膂力強化・速度特化』と『速度強化』を重ね掛け、さらに文字化けギフトで強化。

 超高速で後方へ飛び退き、そこにあった石材を突進してきた奴らにぶん投げた。



「!? 消えっ……」


「危ないっ!!」



 私を見失い、無防備に石材の直撃を受けるところだった奴を、隣で一緒に突進してきていた奴が石材を打ち落として防いだ。

 フォローも完璧ってか。ホント、敵にしとくのが惜しいくらい連携が上手いわね。



「こいつ、いつの間に……!」


「気を付けろ、かなり戦い慣れてやがる」



 警戒を強めた様子で、しかし微塵も臆さずこちらを睨みつけている。

 これまでどこかこちらを舐めていた様子だったけど、今のわずかな攻防だけでそれが消えた。

 ここからは油断も隙もなく、本気でかかってくるだろう。



 狙い通りね。




「ん……?」




 右腕を高く上げて、強く握りしめた。

 それを、全員怪訝そうに見つめている。



「ふぅぅ……!」



 『膂力強化・部分特化』で右腕を強化。文字化けギフトによるブーストも加えて、さらに破壊力を増しておく。



「! 警戒!」


「な、なにをする気だ……!?」





「どぉりゃぁあっ!!」




 膂力強化した右腕で、地面を殴りつけた。

 辺りに衝撃が走り、砕けた地面から粉塵が撒き散らされる。




「くっ……! 煙幕か!」


「奇襲に備えろ! 土煙に乗じて仕掛けてくるぞ!」



 多少面食らったようだけど、落ち着いて対処しようとしているわね。

 全員迎撃に備えて、隙のない構えをとっている。



 『速度強化』で移動速度を強化し――――――




「動いたぞ!」


「……?」




 後方へ全力疾走!

 脇目もふらず、ただひたすら走る!




「……逃げた……?」


「お、追えぇぇぇええっ!!」


「こ、コケにしやがってぇぇぇえっ!!」



 いきなり私が逃げ出したことに、しばしポカンと間抜け面を晒していたけどすぐに我に返って追跡の指示を出している。

 怒りながら叫ぶ姿を見ていると、変な笑いがこみ上げてくるわね。


 ふはははは! 馬鹿め! 多勢に無勢って自分たちでも言ってたでしょ!

 誰がこんな大人数のギフト持ち相手に戦うもんですか! 逃げよ逃げ!



 私の目的はあくまで『監督署から警備を引き離すこと』だ。

 つかず離れず、奴らを私に釘付けにしながら誘導しないとね。あーしんどいわー。



「あはははは、やっぱり面白いねぇあのレディ」


「……味見したい……」



 ……追いかけてくる奴らの一部キモい発言に、全力で逃げ出したい衝動を抑えながら誘導し続ける私偉い。

 早いところ監督署をおさえてほしいもんだわ。頼んだわよ筋肉ダルマたち。


 『ギフト・コー』

 スコーピオスが所有する、熟練のギフト持ちたちの部隊。規模は十人。

 戦闘能力に長けており、互いの短所を補い長所を活かす連携は脅威的。

 重火器で武装した部隊三百人相手に無傷で完勝した実績があるほどで、この世界でも有数の戦力といえる。

 人格面で問題のある隊員も何人か混じっているが、リーダーの『ガルス』は有能かつ穏やかで人格者。


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