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事情聴取

 新規の評価、ブックマーク、誤字報告ありがとうございます。

 お読みくださっている方々に感謝します。


 病院で目覚めてリベルタに心配そうな顔で詰め寄られた挙句ツヴォルフに説教くらって内心ウンザリしてるところに、さらになんだか屈強そうな男どもが部屋に入ってきた件について。

 『昨晩の騒ぎの原因か?』だって。そうですがなにか。



「今起きたばっかりなんだけど、なんなのよアンタたちは」


「いい御身分だなぁクソガキが!」


「こちとら深夜に叩き起こされて以来寝てないんだぞ!」



 筋肉ダルマたちが眠そうな目をしながらこちらを咎める。

 あっそ、御苦労さん。



「朝まで寝てるのをいい御身分とか言われてもねぇ……で、なんの用なの?」


「貴様、口の利き方に気を付けろ! 自分の立場が分かっているのか!」


「よせ。今日は喧嘩を売りに来たわけでも逮捕しに来たわけでもない、ただの事情聴取だ。下手に刺激するのは控えろ」



 タメ口で応対する私にまた筋肉ダルマたちが怒りだしたけど、それをリーダーっぽい銀髪中年が諫めた。

 一番ゴツいのにコイツはまともそうね。ギャップがすごい。



「自己紹介が遅れたな。我々はアリエス軍第五部隊『ゴリアテ』というものだ。このコミュニティに配備されている軍隊の一つと思ってもらえればいい。俺はゴリアテの隊長を務めている『ヴァーカス』だ。よろしくな」


「アッハイ、よろしく」


「『外』から来たばかりだという話だから、ピンとこないのも無理はないかもしれないがな」

 

「私たちの事情は御存じってわけね。とりあえず、昨日私がなにをしていたのかを話せばいいのかしら?」


「ああ。こちらの質問に答えてくれればそれでいい。……黙秘権はあるから話したくないことは話さなくてもいいが、虚偽の申告は自分の立場を悪くするだけだから控えたほうがいい」


「はいはい、じゃあちゃっちゃと済ませてもらえるかしら。こっちは朝御飯まだだからお腹減ってるのよ」



 私の不遜な態度が気に入らないのか、後ろの筋肉ダルマどもが睨みつけてくるけど無視。

 こちとら寝起きで説教くらったうえに、いきなり事情聴取とか言われて不機嫌なんですよ。

 隊長はさほど気にしてなさそうだけど。私が言うのもなんだけど忍耐力あるわね。




「さて、まず参考人の名前を確認しようか」


「ロナ」


「では、参考人ロナ。お前は昨日の午前十時ごろ、労働斡旋所にてマダツ・シュウダ氏と接触したか?」


「向こうから言い寄ってきたのよ。私のお尻を触りながら『言い値で身体を買おう』ってね」


「それに対し、どう答えた?」


「お触りの代償として顔を殴ってやったのよ。あんなセクハラクソデブに買われるなんて冗談じゃないから」


「……くくっ、そうか」



 およ? てっきりあのブタ野郎を殴ったことを咎められるかと思ったら、なんかこの隊長ちょっと笑ってない?

 むしろ横で聞いてるツヴォルフが『余計なこと言うな』って表情で睨んできてて、そっちのほうが怖いんだけど。



「で、そのブタデブに手下をけしかけられて、麻酔かなんかで眠らされてからなんか闘技場っぽい場所でデカい亀みたいな異獣と戦わされたのよ。ご丁寧にギフトを封じる首輪まで着けられてね」


「上流階級の連中の娯楽、いわゆる『異獣刑』というやつか。……シュウダ家が気に入らない人間を攫い、闘技場で異獣に喰わせているという話は本当なのか……」


「待て、亀型異獣と戦わされたと言っていたが、お前が倒したというのか!?」


「そうよ。言っとくけど『罪が許されて外へ出るにはこの亀を倒すしかない』って言ってきたのは向こうのほうだからね。亀が死んだことに関して責任を求めるならあっちに言ってちょうだい」



 『嘘だ』とか『こんな小娘に』とか筋肉ダルマたちがざわついている。

 どう見ても私の話を疑ってるようにしか見えないけど、まあ普通そういう反応になるわよね。



「……本当にお前が倒したのか? あの大亀は、緊急時にギフトで使役して戦車代わりに運用するほど強力な異獣だったはずだが」


「嘘だ! 膂力が2000を超えているうえに強力なギフト、さらにあの質量と頑強な甲羅は並の攻撃ではビクともしないはずだ。お前ごときのステータスで太刀打ちできる相手ではない!」


「ましてやギフトを封じられた状態で、どう戦うというのだ」


「経年劣化なのか途中でギフトを封じる首輪が壊れてギフトを使えるようになったから、それらを駆使して倒したってわけよ」



 筋肉ダルマどもが私の話を否定したがってるけど、嘘は言ってない。

 実際、あの文字化けギフトのおかげであの大亀をぶちのめして生き残れたわけだし。



「ふむ、黒塗りされていたり文字化けしたような妙な項目があるが、これらが関係しているのか?」


「かもね。実際のところ私にもよく分かってないけど、それのおかげだと思うわ」


「この謎のギフトの効果は把握しているのか?」


「詳しく教える必要があるの?」


「信用されたいのならな。昨晩の騒ぎについての噂で街は持ちきりだ。上層部の耳にも入っていて、シュウダ家やその他の観客にも事情を聴いて回っている。情報をまとめた結果、お前が今回の騒ぎのキーパーソンだということは調べがついている」


「どうせ自分たちにとって都合のいいことしか言ってないでしょうに」


「察しがいいな。現場にいた金持ち連中は、異獣同士の戦いを観戦しているところに、急にお前が会場に現れ爆弾かなにかを使って異獣を殺害していったと言っていたよ」


「はっ、あの場にいた連中、私が亀に殺されそうになるのを嗤いながら見ていたわよ。で、自分たちの立場が悪くなったら保身に走って私を悪者扱いってか。反吐が出るわ」


「……そうだな」



 呆れて肩を竦めながら言う私を、隊長がなんとも言えない表情でこちらを見ている。

 申し訳なさそうな、引き攣ったような、変な笑い顔だ。



「お前の言い分を通すには、まずあの亀を倒せるだけの実力あるいは方法があるということを示さなければならない。でなければ、たとえお前の言い分が真実であったとしても、それを上層部へ認めさせることは難しいだろう」


「上層部が納得しても、どうせあのクソ観客どもの権力やらコネやらで揉み消されそうだけどね」


「だが、少なくともお前の無実を証明する材料にはなるはずだ。金持ち連中への制裁まではおぼつかないが、お前の立場を守ることぐらいはできると保証しよう」



 要するに『無実だと認めてもらいたいなら、どうやってあのデカ亀を倒したか教えろ』ってことね。

 つっても、自分でも訳分かんないうちに倒してちゃってたし、そのまま説明しても証拠としては弱いわね。

 ……仕方ない、少しだけ文字化けギフトの力を見せて納得させますか。




「分かったわ。じゃあ、私のステータスを見続けていて」


「うん? ……っ!」




 膂力強化を発動し、さらにそれを文字化けギフトでブースト。

 あの大亀を倒せるだけのステータスをこの場で再現する。







 ロナ


 ランク■


 状態:空腹 膂力強化(逶エ謗・謫堺)(×4.0)


 【スペック】

 H(ヘルス)  :511/511

 M(マジカ)  :505/545

 S(スタミナ) :111/495


 PHY(膂力)  :750(×4.0)

 SPE(特殊能力):766

 FIT(適合率) :■■%


 【ギフト】

 摂食吸収Lv2 逶エ謗・謫堺スLv■ 膂力強化Lv3 火炎放射Lv2 磁力付与Lv2 索敵Lv1 速度強化Lv1 衝撃波Lv1








「あの大亀の膂力が2000ちょっとだっけ? 今の私は750の四倍。つまり、3000よ」


「な、んという非常識な数値だ……! これほどまでに強力な膂力を誇る者は、数えるほどしか知らん……!」


「燃費が悪いからあんまり長続きしないけど、あの亀を倒すにはこれで充分でしょ?」


「……この目でステータスを確認していなければ信じられなかっただろうが、確かに確認した。お前の言い分は充分信用に値すると、報告しておこう」


「ま、まさかこんな小娘が、ここまでの力を……」



 強化された私のステータスを見た隊長と筋肉ダルマたちが狼狽しながら目を見開いている。

 ふふん、どうだすごいだろー。……あんまり見せびらかすと、面倒事のもとだから嫌なんだけどね。



「聴取はひとまずこれで完了だ。進展があれば、追って連絡する。貴重な時間を済まなかったな」


「ホントよ。ほら、こっちはこれから朝御飯食べるんだから、さっさと帰りなさい」


「こ、このガキ……!」


「……なに? なんか文句ある?」


「うっ……」


「よせボルド。お前じゃ相手にならん」


「くっ……!」



 塩対応する私を睨み殺す勢いで見てくるヤツがいたけど、それ以上の迫力で睨み返してやったらすごすご引き下がっていった。

 ヘタレが。その無駄にデカい筋肉は飾りか。

 てかステータス見てみたら、隊長以外は私よりも膂力が低いじゃん。たったの500前後とか、紛うことなき飾りですねコレは。

 ちなみに隊長さんは1000もあった。つよい。


 そういえば、ステータスで思い出したけどアナライズ・フィルターがない。

 拉致された時にパクられたかな。クソッタレが。




「ふぅ、いきなり部屋にワラワラと入ってこられた時はどうなるかと思ったが、思ったよりまともな連中だったな」


「というか、脳筋ばっかの連中をあの隊長さんが上手くまとめてるんじゃないかしら。あの人だけは私がどれだけ失礼な態度とっても涼しい顔で応対してたし」


「失礼な態度とってる自覚があるなら、ちょっとは自重しろよ……」


「嫌よ。あっちだって寝起きで不機嫌なところにズカズカ入ってきてたじゃないの。お互い様よ」


「ま、あの言い分が本当なら当面の間は大丈夫そうでなによりだがな」



 あの隊長がものすごい腹黒で、裏で私たちを売ろうと画策しているかもしれない可能性もゼロじゃないけど、多分大丈夫だろう。

 表情の変化やリアクションが、なんというか金持ち連中のやってることに腹を据えかねてるって感じだったし。

 それに……。




「にしても、よかったのか? 例の文字化けギフトの秘密を教えちまって」


「教えなきゃ余計に面倒事が増えるだけだったでしょうが。ま、大丈夫でしょ」


「能天気だな……」


「……ロナ、あの人になにか隠し事してる?」


「さぁね」




 文字化けギフトの力はギフトの強化だけじゃないってことは、教えてないしね。

 仮に裏切られて襲いかかってきたとしても、今の私なら数秒で皆殺しにできる。

 ……なんだかえらく物騒な思考をしてるけど、自分の身を守るためだからね仕方ないね。



「さて、じゃあ朝御飯でも作りましょうか。アンタたちも食べる?」


「食う。ここのメシよかお前の作るもんのほうが美味そうだしな」


「僕も、ロナのご飯がいい」


「じゃあちょっと待ってなさい」



 朝御飯を食べたら、あらためて仕事を探さないとなー。

 でもまたあのクソデブブタセクハラ野郎みたいなのに絡まれたりしないかしら。不安だわー。

 お読みいただきありがとうございます。

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