絶対に許さんぞ、じわじわと(ry
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今回始めはツヴォルフ視点です。
「ツヴォルフ元一等員、大人しくしていれば危害は加えない。抵抗せず縄につくがいい」
「はっ。で、いい子で連行されて銃殺されろってか? えげつねぇなぁオイ」
「お前の犯した罪は重い。実験データの横流しに無許可で他コミュニティへの亡命。さらにNo67-Jの脱走を補助。処刑するには充分な罪状だと思うがな」
「あーそーですかーあの施設じゃ実験と称して何十何百もの人間をモルモットにして殺してるのは許されてるのにオレは泥棒して逃げただけで処刑ですかー。……テメェらの罪の基準ってやつはどうなってんだろうな。反吐が出るぜ」
「無駄口を叩くな。今ここで死ぬか、施設で処刑されるか、選べ」
なんだそのデッドオアダイな選択肢は。絶望しかねぇ。
……参ったねぇ。まさかこんなタイミングで追手がくるとはな。
それも、よりによってNo.1がくるとは。
他のギフト・ソルジャーなら『速度強化』を上手く使えば、まだ逃げられる望みがあった。
だがこいつは素の身体能力が高いうえに、『空間転移』のギフトを取得している。逃げようとしてもすぐ追いつかれるだけだ。
……詰んだかなこりゃ。
ま、それでも少しは悪あがきをしてみますか。
「逃げようとする素振りを見せれば、即首から上を転移して殺す」
「あーはいはい、観念しますよ。カリカリすんなよなーもう」
「賢明だな。……ところで、No.67-Jはどこへ行った。このコミュニティにいるんじゃないのか?」
「アイツなら『外』でお散歩中だ。この騒ぎに気付いたのなら、そろそろ帰ってくるころじゃねぇのかね」
『未来視』を発動し、機を窺え。
……焦るな。しくじれば、首と胴体が泣き別れになっちまう。
「そんなにアイツが気になるか? No.1ともあろうもんが、ガキ一人に御執心ってか」
「No.67-Jには未知の因子がある。急に目覚めた奴の力の謎を解き明かせば、研究は大いに進歩することだろう」
「あいつを追う理由は、ホントにそれだけか?」
「……他になにがあるというんだ」
口を開くタイミングを間違えるな。
2、3秒間をおいて、声を出せ。
「………お前、実はアイツの胸に顔を押し付けられて以来、ホの字なんじゃねぇのか?」
「……っ!?」
No.1がいつもの仏頂面を崩し、目を見開きながらこちらを睨みつけてきたところで―――
ドゴォンッ と一際大きな轟音と衝撃波が、オレとNo.1の身体を襲った。
「ぐぅっ……!?」
「……っ!!」
遠くに侵入者の仲間と思しき、ガラの悪い男たちが見える。どうやらあいつらが放った炸裂弾がこちらに着弾したようだ。
No.1は持ち前のステータスの高さで踏ん張ったが、ひ弱なオレは爆風に耐えきれずぶっ飛ばされた。
だが好都合。このままNo.1から距離をとってトンズラさせてもらうとしよう。
No.1はというと、オレのジョーク混じりに言った挑発に目を丸くしているところに、不意打ち気味に爆撃を受けてひどく狼狽しているようだ。
監視カメラ越しにロナがNo.1を締め上げてるところを見てたからこそ言えたジョークだが、効果はてきめん。
普段冷静なNo.1があんなに狼狽えるとはな。……まさかマジでロナに惚れてねぇだろうなアイツ。
いてて、なんとかNo.1からは逃げられそうだが、至近距離で爆風を受けたせいで全身が痛ぇ。
だが、泣き言言ってる場合じゃねぇ。さっさとガキどもを誘導して、所長たちのところへでも避難させてもらうとすっか――――
……とか思いながら走ってたら、また勝手に未来が『視え』やがった。
……マジかよ、クソッタレが……!
~~~~~ロナ視点~~~~~
黒煙の上がっているコミュニティへ戻ると、ひどい有様だった。
破壊された扉から中へ入ると、ギフトと思われる能力を乱発しながら街を破壊している集団が目に入った。
家が、店が、人が、焼かれて、壊され、倒されていく。
「……ひ、ひどい……!」
隣でNo.77が悲痛な呟きを漏らしている。
私も、歯軋りとともに口の中が血の味でいっぱいになっていく。
「んん~? なんだこのメスども、まだどっかに隠れてやがったのかぁ?」
「おおお、こりゃ上玉じゃねぇか! ちと若ぇが、充分使えそうじゃねぇかヒヒヒャハハハッ!!」
見慣れない、ガラの悪い男たちが下衆な声を漏らしながら近寄ってきた。
ズボンの前を下品に膨らませて、涎を垂らしている様からは嫌悪感しか覚えない。
こいつらが、この惨状を、つくりあげたのか。
「オラ、こいや! まずはそのちっせぇ口ででも奉仕してもらおうか!」
「うっ……! お、お姉さ―――――」
No.77がなにか言いかけた時点で、既に身体が動いていた。
『膂力強化・速度特化』を発動し、さらに文字化けギフトで効果を倍増。
通常の数倍ものスピードで下劣な男の顔を弾き飛ばした。
男の首から上だけが、遥か彼方へと飛んでいく。
「……は?」
「許さない」
もう一人のクズも、首を掴んで地面に叩きつけてやった。
「うごぁぁあっ!!?」
「くたばれ、この、ゴミクズどもがぁあああああっ!!!」
「オギャヴァァッ!!!」
変な断末魔の悲鳴を上げて、クズの頭が三倍くらいに広がって撒き散らされた。
……汚い。やってることも死に様も、汚物そのものだ。
「……う、うわぁ……」
呆気にとられたような声を漏らすNo.77。
いきなりこんなグロテスクなもの見せられたらそりゃドン引きするわよね。
むしろ悲鳴を上げたりしないだけ肝が据わってるほうかも。まあ最終試験の時に目の前で人がバラバラになっていくところを見ていたし、今更泣き叫んだりはしないか。
「ちょっと掃除して、いやむしろ散らかしてくるから、アンタはこのNo.4を連れてどこか物陰にでも隠れてなさい」
「……え? で、でも……」
「いいからさっさと動きなさい! アンタたちを庇いながらこいつらをどうにかできるほど器用じゃないのよ私は!」
「は、はいぃ!」
急に身を隠すように言われてオロオロするNo.77を一喝し、早急に避難させる。
……これで、私の戦いに巻き込んでしまうようなことにはならないだろう。
正直、一人で複数のギフト持ちを相手するのはきついけど、下手に仲間なんかつくって死なせてしまうよりはずっとマシだ。
さてさて、狩りの時間だ。
一匹たりとも逃がさんぞ、覚悟しろクソども。
……どっちが悪役か分からないわね。こんな物騒な思考してると、なんか悪の親玉にでもなった気分だわ。
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