なんか増えた
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だから投稿時間んんん……(;´Д`)
『ゴォァァァァアアッ!!』
最終試験の時のように、ゴリラが腕を振り回しながら突っ込んできた。
あの時は気が付いたら目の前まで迫っていて、なにもできず逃げることしか考えられなかった。
今は違う。動きが見える。
どう対処するべきか、考える余裕がある。
バカみたいにブンブン振り回している腕を避けて、ゴリラの腹に向かって蹴りを入れる!
「うらぁぁあっ!!」
『ゴフッ……! ガ、ァァアアッ!!』
……多少グラついたみたいだけど、あまり効いてないわね。
なんというか、分厚いゴムタイヤでも蹴ったような感触だった。並の攻撃じゃビクともしなさそう。
対して、向こうの攻撃は一発でももらったらヤバそう。体格差を考えれば当たり前なんだけど。
『腕の人』の謎パワーが宿ってるとはいえ、それにも限界がある。
No.4くらいなら楽にボコれたけど、異獣相手じゃさすがに不利ね。
ステータス欄にある『膂力』の項目を比べてみると、このゴリラは約400、私は370くらい。
……あれ、あんまり変わらない? でも明らかにこのゴリラのほうがタフで力強く見えるんだけど。
『グォァァアッ!!』
! 上に向かって飛び上がった……?
手をこっちに向かって振り回してるけど、なにを……。
「ぅあっ!?」
いった!? め、目になにか入った!?
こ、このゴリラ、砂かなにかをまぶして目潰ししてきた!
ま、まずい、視界が利かない。
ゴリラが近付いてきてるのが地面の震動で分かる。
両手を前に構えて、防御を……!
『ガガァッ!!』
「かっ、は……!」
辛うじてガードできたけど、それでも凄まじい衝撃が襲いかかってきた。
並の人間なら、これだけでバラバラになってもおかしくないくらいのとんでもない一撃。
そのまま吹っ飛ばされて、地面をゴロゴロと転がっていく。
「ケホ、ゲホッ……! こ、の、クソゴリラっ……!」
悪態を吐きながら目を擦り、目の中に入った砂を落とす。
多少目の中がチカチカしてるけど、少しは視力が戻ってきた。
……甘く見ていた。
腕の人の力があるとはいえ、相手は何十人もの人間を数分で皆殺しにできる怪物だ。
そう簡単に、勝たせてもらえるわけがない。
……どうしようか。
そもそも、たったの30しか膂力に差がないはずなのに、どうしてここまで力に差があるのか。
……今一度、あのゴリラのステータスを詳しく調べてみよう。
ドルバグンコ
ランク3
状態:膂力強化(×1.5)
【スペック】
H(ヘルス) :402/410
M(マジカ) :264/297
S(スタミナ) :177/255
PHY(膂力) :402(×1.5)
SPE(特殊能力):100
FIT(適合率) :27%
【ギフト】
膂力強化Lv5
『アナライズ』を発動して、ゴリラのステータスを確認。
元の私の軽く十倍~数十倍もの数値が並んでいる。こんなのに襲われたら、そりゃ戦うのも逃げるのも無理よね。
気になる項目としては、膂力の横にある(×1.5)の項目と、ギフトと状態欄に表示されている『膂力強化』という文字。
どうやら、この『膂力強化Lv5』とかいうギフトを発動させているから、私よりも圧倒的に強い力を発揮できているみたい。
くっそ、ズルいぞチクショウ! こちとらギフトのなりそこないしか授かってないんだぞ! 交換しろ!
……落ち着け、ないものねだりしてもなにも解決しない。
さっきの攻撃で骨とか内臓とか痛めてるかもしれないし、自分のステータスも見ておこう。
NO.67-J
ランク■
状態:軽傷(腹部打撲)
【スペック】
H(ヘルス) :287/312
M(マジカ) :317/317
S(スタミナ) :301/315
PHY(膂力) :371
SPE(特殊能力):371
FIT(適合率) :■■%
【ギフト】
摂食吸収Lv1 逶エ謗・謫堺スLv■
……は? なんだコレ。
あ、名前更新されてる。いやそこはどうでもいい。
全体的に能力値が上がってるのは想定内。むしろ上がってないとおかしい。
状態表示を見ると、打撲傷程度の傷しか負っていないようだ。よかった。
……問題は、いくつかおかしな項目があることだ。
なんか黒塗りされてるけど、うまく測定できないってことなのかしら。
あと、なりそこないの状態だったギフトがちゃんとした表示に変わっている。
『摂食吸収』って書いてあるけど、これってどういう能力なのかしら?
……もう一つ変な文字化けギフトがあるけど、これもなりそこないかな。なんか不気味なんですけど。
互いのステータスを見比べてみると、ギフトが使える分向こうが有利。
こっちのギフトはレベルが低いうえに効果がイマイチ分からない。
思った以上に、まずい状況かもしれないわね。
『ゴガァッ!!』
ヤバい、また突進してきた。
身体を動かそうとするたびにさっきの打撲傷が地味に痛みを訴えてきて、動きが鈍る。
「くっ!」
突進が命中する寸前に後ろへ飛び、衝突のダメージを軽減する。
でも、それでもかなりの衝撃が襲いかかってきた。
「くはっ……!」
『ゴォルルルル……!!』
「か……ぁっ……!」
衝撃のせいでふらついている私の首を掴み、握り潰そうとしてきた。
息ができない。このままじゃ窒息、いやその前に首の骨が折れる……!
このままじゃ、死ぬ。
せっかく助かったのに、結局死ぬ……?
さっきジヴィナが言っていたように、ここの連中に従っていれば、死なずに済んだかもしれないのに。
……ああ、今になって、私は後悔して――――
して、ない。
後悔なんか、してたまるか……!!
「あああぁあ゛あ゛あ゛っ!!!」
『グロォッ!!?』
首を掴んでいるゴリラの手に爪を立てて、死に物狂いで引っ搔いてやった。
爪が剝げそうになって、血が滲んできても何度も何度も引っ搔き、引き裂く!
「ぐギィィいいいいい……!!」
『ギギギャァアアッ!?』
諦めてたまるか、死んでたまるか!
お前たちなんかの、思い通りになんかなってやるもんか!!
『グギィッ!』
痛みに耐えかねたのか、ゴリラが手を緩めた。
その隙に首から手を離して、そして
その手に、思いっきり噛み付いてやった。
「ふぐぅぅううううっっ!!!」
『ギャァァアアアァアアッ!!!』
ギリギリと、手の肉に歯が突き刺さりめり込んでいく。
硬いけど、腕の人の肉に比べたら全然噛みやすい。
『ゴギャァアッ!!』
「ぐふぅっ!!?」
焦った様子で、もう片方の手で私のお腹を殴ってきた。
その拍子に、ブチリ とゴリラの肉が私の口の中で千切れる音がした。
『ゴガ、ギイイィイイイッ……!!』
「いてて……! ……クチャ、クチャ、……まっず」
噛み千切ったゴリラの肉をモグモグと咀嚼してみるけど、まずい。
味と食感は腕の人と大差ないけど、旨味が薄い、とでも言うんだろうか。
あの腕はなんというか、旨味が強いのか栄養が豊富なのか、一口食べるごとに力が漲ってくるような感覚を覚えたのに、このゴリラの肉はそれがひどく薄い。
そのせいでただただ血生臭くて獣臭くてもうまずいまずい。
でも、肉は肉だ。吐き捨てるのももったいないし、我慢して飲み込んだ。
まあ、腹の足しにはなったかな。……ん?
急に自分のステータスが勝手に開かれた。
え、どうしたの?
NO.67-J
ランク■
状態:軽傷(腹部打撲 頸部内出血)
【スペック】
H(ヘルス) :234/312
M(マジカ) :317/317
S(スタミナ) :303/315
PHY(膂力) :381
SPE(特殊能力):375
FIT(適合率) :■■%
【ギフト】
摂食吸収Lv1 逶エ謗・謫堺スLv■ 膂力強化Lv1
……あら?
なんか、増えてない?
お読みいただきありがとうございます。




